- 2021/12/09 掲載
ECB、16日にAPPの一時的・限定的な拡大を検討=関係筋
[フランクフルト 9日 ロイター] - 複数の関係筋によると、欧州中央銀行(ECB)は今月16日の理事会で、従来の資産購入プログラム(APP)を一時的・限定的に拡大することを検討する。
ただ、3月のパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)終了後、4月以降の買い入れ規模は、現行のAPPとPEPPの合計額を大幅に下回る見通し。
直接事情を知る関係筋6人の話で明らかになった。APPを拡大する一方、規模と期間については制限を設け、将来政策を調整できる柔軟性を残す方向で、合意がまとまりつつあるという。
関係筋によると、APP拡大の詳細はまだ固まっていないが、2つの選択肢が考えられる。
第1の選択肢では、年末までの買い入れ枠を承認するが、全額を使い切る義務はないと表明する。
第2の選択肢では、買い入れ額を短期間引き上げ、今後も買い入れを継続すると表明するが、買い入れ規模は後日協議し、経済が予想通りに推移すれば、減額する公算が大きいとする。
いずれのケースでも、4月以降の債券買い入れ規模は、現行のAPPとPEPPの合計額を大幅に下回る見通し。
ECBの報道官はコメントを控えている。関係筋によると、決定は下されておらず、活発な議論が続いている。
<柔軟性を確保>
可能性のある選択肢によると、ECBのコミット期間は2022年を越えることはない見込みだ。インフレ率がECBの目標を下回らない可能性を懸念する理事会のタカ派にとって、コミット期間は重要な問題だ。
ただ、利上げ観測を払拭するため、少なくとも22年末まで買い入れを続けると明示すべきとの声もある。ECBは現在、債券買い入れを実施している間は利上げしない方針を示している。
ただでさえ活発な理事会の議論は、インフレに関する見解の相違でさらに白熱している。チーフエコノミストのレーン専務理事らハト派メンバーは、インフレ圧力が来年には急速に弱まり、その後数年は目標を下回る状態が続くと予想。一方、タカ派はインフレが目標を上回る水準にとどまるリスクがあるとみる。
タカ派は、現在月200億ユーロというAPPの買い入れ規模を拡充すべきでないと主張している。だが、水面下では、手荒な措置はリスクが高く、市場が混乱した場合のバッファーとして規模拡大は必要と認めている。
それでもタカ派は通常より高い柔軟性と選択性を要求。ECB理事会がこれまで1回おきにPEPPの買い入れ規模を決定していたように、買い入れ規模を定期的に再確認すべきとしている。
関係筋によると、期限を設けず買い入れ規模を拡大したり、一部理事が主張するような全く新しい制度を創設する可能性は非常に低い。
理事会内には、先行きが不透明なことから、重要決定の先送り論も出ているが、関係筋は、PEPPの終了は避けられず、APPに関しても、技術的な詳細の詰めは残して、土台的な決定は必要と述べた。
詰めるべき詳細の一つが柔軟性とみられる。APPはより厳格な規則が適用されているが、理事会内には、PEPPが持つ柔軟性の少なくとも一部を踏襲すべきという声がある。ただ、APPに制約のリスクが生じているわけではないので、急いで決定する必要はない。
もう一つ、結論を急ぐ必要がないのは、ガイダンスの見直しだ。現行は、債券買い入れ終了後すぐに利上げするとしている。
関係筋によると、ECBはPEPPが来年3月末以降も、市場が混乱した場合に未使用の枠を活用して導入する用意があるというシグナルを発する可能性がある。またPEPPの資金の再投資を柔軟に実施する可能性もある。満期を迎えた債券の償還金を市場に戻すが、ストレス下に置かれそうな市場を主眼に柔軟に活用する可能性があるという。
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