東急建設株式会社（本社:東京都渋谷区、社長:寺田 光宏）は、VOC（揮発性有機化合物）汚染地下水に対する特殊薬剤を用いた「バイオスティミュレーション」（※1）技術を開発、実汚染サイト試料を用いた実証実験で従来技術と比較したところ、地下水中に阻害物質がある場合、20～40%の浄化期間の短縮となりました。今後は、実工事への展開を進めていく予定です。

※1「バイオスティミュレーション」/（bio stimulation:stimulation）汚染地域に元々生息している土着微生物を"活性化"して、汚染物質の分解を促進させようという手法

　VOC地下水汚染対策として、土着微生物の分解能力を活用する「バイオスティミュレーション」法は低コストであり、環境への負荷が少ない等のメリットから原位置浄化（※2）として広く適用されています。

　一方で、従来の薬剤（水素供与体、以下、既存薬剤）を用いる「バイオスティミュレーション」法では、対象とするサイトの状況次第（pH、硫酸イオン濃度等）で、分解微生物の生育環境の醸成に時間がかかり、浄化期間が長期化する場合があります。

※2「原位置浄化」/汚染された土壌や地下水を、その場（原位置）で浄化すること。掘削除去工事と比較し、安価で環境への影響が少なく、工場を操業しながら浄化対策できるメリットがある。

　今回開発した技術は、塩素系のVOCを対象とした「バイオスティミュレーション」の課題（浄化期間、適用性等）に対し、サイト毎に変わる環境因子の調節に着目しました。そして、既存の薬剤に加えて微生物生育環境を早期に醸成させる補助薬剤を添加することで、浄化短縮を実現しました。

　室内試験においては、既存薬剤に補助薬剤（pH調整剤、補助栄養剤、硫酸イオン除去剤）を環境条件に応じて加え、サイト毎に異なる土壌地下水環境を嫌気性微生物（※3）の生育に適した条件に速やかに変化させ、分解を促進させることが確認されました。

※3「嫌気性微生物」/有機物の分解に関わる微生物の中で酸素を必要としない微生物

　汚染サイトでの性能試験においても、補助薬剤を添加した特殊薬剤の使用では、既存薬剤に比べ分解が促進され、環境省の「低コスト・低負荷型土壌汚染調査対策技術検討調査（2017年度）」では、特殊薬剤の分解を促進させる機能が評価されました。

　なお、同調査では土壌を対象とした場合となりますが、特殊薬剤を用いた浄化におけるCO2排出量が、一般的な浄化工法である掘削除去工事と比較し、約88%削減可能と試算されました。

　また、その後の実証試験では、汚染物質であるPCE（※4）濃度を1～10mg/L程度（地下水環境基準:0.01mg/L以下）の試料に対し、既存薬剤と比較し、PCE含む分解生成物の分解効果が20～40%程度あることを確認しました。その他の分解生成物に関しましても、特殊薬剤を用いた分解がより促進されることが確認されました。

※4「PCE」/ドライクリーニングや金属洗浄で一般的に用いられる化学溶剤「テトラクロロエチレン」（PCE:別名「パークロロエチレン」）「おそらく発がん性がある」と報告

　当社では、今後実工事への適用を図り、より効率的な土壌地下水汚染対策技術として、土壌地下水汚染の原位置浄化が求められる各建設事業において、合理的で環境に配慮した施工方法を提供いたします。