• 2022/01/06 掲載

アングル:オミクロン株が米労働力供給妨げ、大量退職で鮮明に

ロイター

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[ワシントン 4日 ロイター] - 米国では労働者の退職が記録的水準に達し、生産のほか販売、運輸などのサービス業に直接従事する現場の仕事の雇用は鈍化している。これは新型コロナウイルスの新たな感染の波が労働力の供給を妨げている証しかもしれず、米連邦準備理事会(FRB)が雇用水準は現実的な上限に迫っているとの結論を下す段階がより間近になってきた可能性がある。

勤怠管理サービスを提供するホームベースとUKGの雇用データに基づくと、昨年12月を通じて雇用はじりじりと減少した。主に新変異株オミクロン株の拡大によって感染者数が過去最多を更新していく流れと一致する形だ。

ホームベースが集計した中小企業の雇用は2021年終盤に約15%減り、落ち込み幅は20年の約10%を上回った。またUKGがまとめたさまざまな業種の勤務シフト伸び率は12月がマイナス1.7%で、20年同月のマイナス0.3%、19年同月のマイナス0.8%よりも低調だった。UKGのバイスプレジデント、デーブ・ギルバートソン氏は「このデータからは、12月半ばにシフト勤務の強い下振れが始まったことが分かる」と述べた。

同時に11月の政府統計は、仕事を辞めた労働者が過去最多に達したことを示している。特に退職者が目立つのは低収入、そして感染リスクが相対的に高く、リモート勤務がしにくいとみられる分野だ。

エコノミストの見立てでは、求人件数がなお過去最高水準付近にとどまり、新たな感染の波がやってきているのに消費需要は衰えない点からすると、企業にかかる賃上げ圧力はさらに高まる恐れがあり、FRBは目標とする「最大雇用」の達成が間近だと宣言することをより強く迫られそうだ。

最大雇用の達成は、FRBが利上げを開始するための前提条件の1つ。昨年12月14-15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策担当者はその達成が近いとの考えを示唆していた。

ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は、ウェブサイト「ミディアム」に公表した論文で、先月のFOMCの時点で22年は2回の利上げを想定したことを明かした。どれだけ多くの労働者が早期に仕事に復帰する意思があるかどうか分からないというのが理由だったという。

カシュカリ氏はこれまで、一層の雇用拡大を促すために利上げ開始を遅めにするべきだと最も積極的に提唱していたが、政策金利見通しを急激に軌道修正した形になった。これについて論文では「賃金が今、幅広い所得層で急上昇しつつあり。労働市場は新型コロナウイルスのショックからまだ完全に回復していないものの、以前の全ての労働者が復帰するまでにどれぐらい時間がかかるかは不透明で、少なくとも当面は、労働需要が供給を上回るようだ」と説明した。

<賃上げ促す環境>

オミクロン株主体の感染が米経済とFRBの政策に及ぼす影響はまだ流動的な面が残っている。一部のアナリストは22年の経済成長見通しを引き下げたとはいえ、足元の感染者数が以前の感染拡大局面を超えていることを踏まえれば、下方修正の度合いはそれほど大きいとは言えない。

今のところ、オミクロン株の毒性は比較的弱いもようで、死者と入院者は感染規模ほど増えておらず、例えば12月の航空旅行データを見ると消費者があわてて自主隔離に動いている気配もない。

11月末の段階では、失業者1人当たりの求人は1.5件超だった。ここからも労働者がより良い仕事を求めて、あるいは感染の危険を避けるために退職していく労働市場に、賃上げが続く環境が整っていることが読み取れる。

インディード・ハイアリング・ラブの経済調査ディレクター、ニック・バンカー氏は「大量退職は労働者の交渉力が強まり、それが力強い賃金上昇に跳ね返っていく公算が大きいことを意味する。昨年は賃金の伸びが非常に堅調だった。22年もまた同じ状況になるかもしれない」と話した。

(Howard Schneider記者)

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