- 2022/01/21 掲載
アングル:ドル相場に変調、金利差から成長格差に注目点シフトか
ブランディワイン・グローバルのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「これまではだれもがドル高に賭けるポジションを組んでいた」と言う。しかし、主要6通貨に対するドル相場を示すドル指数は先週、一時的に1.2%も下げた後、週末時点で0.6%安となって取引を終えた。
ドル指数の下落は、パウエルFRB議長が金融引き締めの環境が整ったと表明し、米インフレ率が約40年ぶりの高水準を付けた後に起こったことだ。
ドル弱気派は足元の相場波乱について、米経済の好材料の多くが既に相場に織り込まれた証拠だとみている。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータで、昨年末に国際投機筋によるドルの買い越しが約200億ドルと、約2年ぶりの高水準に達していたからだ。
過去数カ月間のドル相場を支えてきたのは、米国が他の先進国よりも速いペースで金融政策を正常化するとの観測だった。投資家は現在、他の国々の経済にも信頼感を深め、成長が上振れする国はないかと目を凝らすようになった。
ゴールドマン・サックスは最近、今後2年間はユーロ圏の成長率が米国を上回るとの見通しを示した。マッキンタイア氏は「為替市場は移行期にある。金融政策の差よりも、成長率の差が重視されるようになった」と語った。
同氏は「一本調子で進むわけではない。とは言え、2022年末はドルが今より安くなっているだろう」と予想する。過去数カ月間、徐々にドルへの姿勢を中立に転換してきた同氏は最近、もっと金利の高い通貨を買うためにドルを売り始めた。豪ドルとスウェーデン・クローナを買い持ちにしているという。
2年物の米国債利回りが年初から23ベーシスポイント(bp)上昇したにもかかわらず、投資家はドル買いに殺到してはいない。モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのリサ・シャレット最高投資責任者は、これは昨年の傾向と正反対だと指摘する。
「ドルの頭打ちという局面の変化を告げている可能性がある。米国と諸外国との間で、成長率と実質金利の差が縮まったことを反映し始めているのかもしれない」とシャレット氏は語った。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのシニアエコノミスト、ブライアン・ローズ氏は、米国から世界各国の株式市場へと資金がシフトし始めると、ドルはさらに売り圧力にさらされかねないと言う。昨年は米国株への力強い資金流入がドルを支えたからだ。
今年はインド、英国、香港などの株式市場が好調なスタートを切った一方、米S&P500種総合指数は年初から4.0%下落している。
アムンディ・パイオニアの通貨ストラテジー・ディレクター、パレシュ・ウパドヤヤ氏は、仮に新型コロナウイルス感染症による死者が少なくなり、景気への懸念が薄れるなら、「安全通貨」としてのドルの魅力は失われるかもしれないと述べた。
<安易なドル売りに警鐘も>
ただ、ウパドヤヤ氏は、ドル売りの輪に飛び込もうとする投資家に警告も発している。市場はFRBの「タカ派度」を織り込み切れていない可能性があるからだ。
同氏は「FRBが積極的に利上げする可能性も排除できない」とし、3月に一気に50bpの利上げを行うとの見方も一部にあるとした。
HSBCのアナリストチームは先週、FRBが利上げを積極化すれば、低金利通貨を売って高金利のドルを買うキャリートレードが活発化する可能性もあると指摘した。
実際、先週のドル安局面を好機ととらえてドルを買う投資家もいたとされる。
米国とドイツの10年物国債利回りには現在も185bpの開きがあり、2カ月前と同様にドルに有利な状況だ。
HSBCは「今年はドルにとって厳しい幕開けとなった。しかし、われわれは、金融政策の差を無視する今の流行は長続きしないと考えている」とした。
(Saqib Iqbal Ahmed記者)
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