• 2022/01/27 掲載

情報BOX:FRBが資産縮小の基本方針公表、不透明な「下限」

ロイター

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[26日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は26日の連邦公開市場委員会(FOMC)終了後、バランスシート縮小に関する新たな基本方針を公表。持続的な物価高を抑えるため、以前に想定したよりも早期かつ急速に圧縮を進める考えを示した。

FRBは、主として満期が到来した保有債券の償還資金の再投資を制限するという受動的なアプローチを採用するとしながらも、もっと積極的な縮小手段も否定していない。パウエル議長は会見で「われわれが思っていたのと状況が違うと判明すれば、効果がない手段にこだわり続けることはない」と語った。

パウエル氏は、失業率が新型コロナウイルスのパンデミック前の水準近くまで低下し、物価上昇率が高止まりしている点を踏まえ、米経済に従来と同じ規模の支援はもはや必要ないと明言した。

ただバランスシートがどこまで縮小するかは不透明だ。FRBとしては、9兆ドル近くに膨れ上がったバランスシートを実際どの程度圧縮できるのかを探りつつ、市場や実体経済に目配りをしながら行き過ぎないように対応する必要が出てくる。

◎「相当な規模」の縮小

2017年末から19年秋にかけてFRBが保有債券を減らした前回のバランスシート縮小局面では、資産規模を15%程度落としたところで問題に直面した。銀行がFRBの口座に保有する準備預金が低くなりすぎて、19年9月に短期金利の高騰をもたらしたからだ。

パウエル氏は、FRBが保有債券を「相当な規模」減らしたいとの考えを示すとともに、今後2回のFOMCで議論してから縮小のタイミングとペースを最終決定すると説明した。

◎新たな手段が有用か

FRBが昨年導入した新たな政策手段の「スタンディング・レポ・ファシリティー(SRF)」は、現金を必要とする銀行にとってバックストップ機能を果たし、短期金利が再び跳ね上がるのを防止する上で役立つかもしれない。金融機関は、準備預金が少なくなった場合、SRFを通じて資金調達ができる。

もっともこうした仕組みが有効になるのは、銀行が一時的にFRBから資金を借り入れても批判を浴びないとの感触を得られる場面に限られる、というのが市場関係者の見方だ。バンク・ポリシー・インスティテュートのチーフエコノミストで元FRBエコノミストのビル・ネルソン氏は、SRFは窓口貸出制度と同じだと指摘する。窓口貸出制度は昔から存在する緊急貸出の枠組みだが、多くの銀行は危機的状況に陥ったと受け止められるのを嫌って利用に消極的な態度を取っている。

ネルソン氏によると、SRFがあるおかげで、一部の金融機関が「いざとなればFRBが現金化してくれる」という理由から、米国債の保有により大きな安心感を得るのは間違いない。ただしそれはFRBが、SRFを使うのは「通常のビジネス取引」の1つだという点をはっきりさせることが条件だという。

◎余剰資金

過去1年にわたり、金融機関は手元にある多過ぎる資金を持てあましてきた。その最たる例が、FRBの「リバース・レポ・ファシリティー(RRF)」の高い人気ぶりだ。翌日までFRBの口座に現金を置けるこのRRFの利用額は過去3カ月平均で1兆5000億ドルを記録している。

パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)のエコノミストで元ニューヨーク連銀アナリストのティファニー・ウィルディング氏によると、FRBがバランスシートを少なくとも1兆5000億ドル圧縮しても、資金需給はひっ迫しない状況がうかがえる。同氏は「金融システムには銀行がほしがる以上に資金が出回っている」と話す。一方で、FRBが保有債券を圧縮する過程でRRFの利用が一本調子で減っていかない可能性もあり、当局は慎重な姿勢が求められると警告した。

◎債券売却は必要になるか

FRBは26日、「一義的」には保有債券の満期償還資金の再投資額を調整することでバランスシートを圧縮する計画だと表明。パウエル氏は「われわれはこのプロセスを秩序的かつ予測可能性がある形にしていきたい」と述べた。それでも同氏は、FRBが積極的に保有債券を売却する可能性を否定はせず、必要なら手法を軌道修正するとしている。

またFRBは、より長期的な観点では主に米国債を保有するのが望ましいとの考えも示した。現在の保有額は米国債が約5兆7000億ドル、住宅ローン担保債(MBS)が2兆7000億ドルだ。

◎行き過ぎを知る方法

パンデミック前のFRBのバランスシート規模は、今回どこまで圧縮できるかを判断する上での適切な手掛かりにはならないかもしれない。ニューヨーク連銀幹部のロリー・ローガン氏は、今月のマクロ・ミュージングズのインタビューで、1つの要因として「銀行の準備需要が時間とともに幅広く変化していく」ことを挙げた。

ローガン氏は、準備高が下振れし過ぎたかどうか見定めるために、FRBは短期金融市場の動向に目を向けると発言。同氏や他のニューヨーク連銀幹部は最近ブログで、フェデラルファンド(FF)実効金利とFRBが準備預金残高に適用する金利(IORB)の関係が重要だとの認識を示している。

この2つの金利は、2013年から14年のように準備高が潤沢な場合はかい離する。逆に17年から19年までのような準備高が目減りしている局面では、互いに接近する性質がある。

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