- 2022/02/09 掲載
金融危機清算へ転換点=公的資金完済は不透明―新生銀
新生銀行が、名実ともにSBIホールディングス傘下で再出発することになった。同行は経営破綻した日本長期信用銀行を前身とし、バブル崩壊後の金融危機で公的資金を注入されながら返済が完了していない唯一の銀行だ。バブル清算へ一つの転換点を迎えた形だが、インターネット金融という異業種との相乗効果は見通せず、積年の課題を解決できるのか、視界は晴れない。
「どのくらい実現性をもって考えているのか。ぬるい考え方なんじゃないか」。8日に開かれた新生銀の臨時株主総会で、株主からは公的資金返済について経営陣の姿勢をただす厳しい声が上がった。工藤英之社長は「決して返せないと思っているわけではない」と釈明。新社長の川島克哉氏も「収益力を高め、企業価値を上げることが重要」と答えるのが精いっぱいだった。
長銀は日本の高度経済成長を支えたかつての名門だ。それだけに1998年の破綻は、前年の山一証券や北海道拓殖銀行の破綻などと並び、「平成金融危機」の象徴となった。長銀は米系投資会社に譲渡され、新生銀として出直しを図った。東証1部への再上場は果たしたが、株価は低迷を続け、公的資金返済への道筋は付けられていない。
長銀に優先株式として注入された公的資金が、2008年までに普通株に転換されたことが解決を困難にした。株式買い取りで返済しようにも国だけを特別扱いできず、株価を直近の3倍強に当たる1株約7500円まで引き上げる必要がある。
北尾吉孝SBI社長は、SBIと国の保有分以外の株式を買い進めて新生銀を非上場化し、国の持ち分を買い取ることも視野に入れる。しかし、もくろみ通り進められるかは予断を許さない。
子会社の整理回収機構と合わせて同行株の2割超を保有する預金保険機構の三井秀範理事長は取材に応じ、「企業価値向上に資するビジネスモデルを構築し、公的資金の返済につなげてほしい」と答えた。長引く超低金利に加え、異業種を交えた競争激化など厳しさを増す事業環境で、いかに収益力を高めていくか。金融危機決着への道は狭く、険しい。
【時事通信社】
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