• 2022/02/25 掲載

情報BOX:対ロシア制裁、ソブリン債への影響どこまで深刻か

ロイター

photo
  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
[ロンドン 24日 ロイター] - 西側諸国はウクライナ問題を巡りロシア政府への圧力を強めるため、ロシアの国債や政府機関債などソブリン債に対する新たな制限措置を導入し始めた。

ロシアのプーチン大統領が21日にウクライナ東部の親ロシア派支配地域2カ所の独立を承認したことを受けて、欧米諸国は対ロ制裁の第1弾を発動。24日にはロシア軍がウクライナへの侵攻を開始し、今後制裁はさらに強化される見通しだ。

ロシア国債へのアクセスは既に制約が強まっている。

米国は2014年のロシアによるクリミア半島併合後、以後発行されるドル建てロシア国債の取引や主要指数への組み入れを制限。さらにバイデン米大統領は21年4月、ロシアが16年の米大統領選に介入したとの理由で、投資家が新規ルーブル建てロシア国債を購入することを禁じた。

これまでに追加されたロシアのソブリン債への制限措置と市場への影響をまとめた。

<ソブリン債への新たな制限>

米政府は3月1日以降、ロシアの中央銀行、政府系ファンド(SWF)、財務省が発行したルーブル建ておよび非ルーブル建て債について、米企業が流通市場に参加することを禁止すると発表した。

欧州連合(EU)は、ロシア政府によるEUの資本・金融市場やサービスへのアクセスに狙いを定め、EUの投資家によるロシア国債の取引を禁じる新たな制裁措置に合意。カナダ政府は国民がロシアのソブリン債の購入に関与することを禁止すると発表した。

英国は23日、ロシアのソブリン債のロンドン市場での発行を禁止すると発表した。

欧米の当局者によると、こうした措置には法律の追加整備が必要で、影響は決済にも及ぶという。ただ、英国が発行済みソブリン債の取引を停止するかどうかは明らかになっていない。

こうした協調的な措置は、ロシアが新たに外国で資金調達する力をそぎ、抜け道を塞ぐことを目的としている。これまでは米国の制限措置があっても、ロシアは欧州市場での起債が可能だった。

JPモルガンのアナリストの計算によると、ロシアは2020年以来、ユーロ建て債を合計35億ユーロ(約4550億円)分発行している。

<投資家への影響>

アナリストは、既存のハードカレンシー(国際通貨)建て債を保有する投資家への影響は限られると見ている。

ただ、ルーブル建てロシア国債(OFZ)は、米国の新たな制裁によって2つの異なるクラスが生まれると見込んでいる。

米国がルーブル建てソブリン債への制限措置を導入したことを受けて、ロシア財務省はOFZについて2月22日からは新シリーズのみを発行し、それ以前に登録された銘柄の追加発行を停止すると発表。「特定のカテゴリーの外国投資家によって流通している国債が強制的に売られるリスクを低減するため」と理由を説明した。

JPモルガンによると、6月中旬以降に発行されたOFZは既発債に対して10─25ベーシスポイント(bp)のプレミアムが乗っていたが、その後プレミアムは縮小した。これは最も広く使われている新興国債指標に追加されたのが大きな要因だという。

JPモルガンのニコライ・アレクサンドル・チデシク氏は「新発のOFZは指数組み入れが認められないため、今回はプレミアムがもっと長引くかもしれない」と述べた。ただ、「ロシアの銀行が外国人と自由に取引できる限り、2種類の利回りの差は(20─30bp以内の)比較的狭い水準にとどまるだろう」と予想した。

<市場への影響>

最新のデータによると、ロシアのドル建ておよびユーロ建て債券の発行残高は400億ドル(約4兆6000億円)弱で、その半分余りを外国人投資家が保有している。JPモルガンの新興市場国顧客調査によると、外国人投資家によるこうした債券のポジションは軽く、過去20年間で最もアンダーウエートになっているようだ。

一方、INGによると、外国人投資家はOFZ発行残高の18%に当たる2兆8000億ルーブル(344億ドル)分を保有している。

米国の新たな制裁がOFZの強制的な売りにつながることはないとみられている。しかし資本フローを見ると、昨年末以降ウクライナ情勢が緊迫の度合いを強めるにつれて、投資家がOFZを手放したことが分かる。

INGの市場グローバルヘッド、クリス・ターナー氏は「ロシアは現在、5カ月連続でOFZから外国人の投資資金が流出している」と述べた。「昨年10月から今年1月にかけての流出額は計54億ドルで、2月に入ってからは約11億ドルが流出した」という。

JPモルガンの現地通貨建てソブリン債指数におけるロシアの比重は現在6.8%。しかし米国の制限措置によって新発債の新たな組み入れがなくなる一方、既発債券が満期を迎えるため、ロシアの比重は3年余りで5%以下に下がるとみられる。

JPモルガンは23日、米国の新しい制限が同社の新興国市場指数に与える可能性のある影響を調査していることを明らかにした。

(Karin Strohecker記者)

評価する

いいね!でぜひ著者を応援してください

  • 0

会員になると、いいね!でマイページに保存できます。

共有する

  • 0

  • 0

  • 0

  • 0

  • 0

  • 0

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます