- 2022/06/09 掲載
アングル:仮想通貨に雪解けの兆しか、上場ファンドがそろり買い
クリプトコンペアのデータを見ると、上場仮想通貨ファンド全体の資金フローは5月、週平均で6650万ドルの買い越しとなり、4960万ドルの売り越しだった4月から反転した。
IDXデジタル・アセッツのベン・マクミラン最高投資責任者は「ほとんどは機関投資家だが、ある程度は個人投資家もいる。痛みに耐える期間は過ぎ去り、相場は天井よりも底値に近いとの認識が広がっている」と説明。
「この水準で仮想通貨を買えるのなら、長期的な利益を得るために目先は多少のボラティリティに耐える価値があるかもしれない。多くの機関投資家は仮想通貨について、長期的に成長の潜在性を秘めたものと見なし始めている」と語った。
ただ、ためらいがちな現在の資金流入が今後も続くか、そして市場全体に広がるかは、まだ分からない。今年は世界的な金融引き締めとインフレ高進によって仮想通貨が暴落。さんざん痛い目に遭った多くの投資家は、投資再開に二の足を踏むだろう。
ビットコインは昨年11月の高値から約半分に、年初からは3分の2程度に下がり、ここ1カ月は3万ドル前後で低迷している。
一部の投資家は、流動性と安全性をうたう上場取引型金融商品(ETP)を通じて仮想通貨に戻りつつある。
クラケン・インテリジェンスによると、複数のビットコイン先物上場投資信託(ETF)は過去1週間で運用資産が増加した。「プロシェアーズ・ビットコイン・ストラテジーETF」の運用資産は6%、「グローバル・X・ブロックチェーン&ビットコイン・ストラテジーETF」および「バンエック・ビットコイン・ストラテジーETF」は各々3%余り増えた。
4月はプロシェアーズの同ETFから1億2700万ドル余りの資金が流出していた。
アーケーンのアナリスト、ベトル・ルンデ氏は「今後に期待が持てる兆候だ」と語る。
ただ、投資家のえり好みと慎重姿勢を反映するように、資金が流入しているのはビットコインのファンドに限られている。イーサその他の仮想通貨に的を絞ったファンドからは今も資金流出が続いているのが現状だ。
<リターンはまだマイナス>
一部ファンドに反転の兆しが見えるとはいえ、大半のファンドは年初からのリターンが悲惨な状態になっていることを忘れてはならない。
モーニングスターの調査では、米デジタル資産ファンドは年初からのリターンが平均マイナス46%、5月はマイナス22%。クリプトコンペアが調査している上場デジタル資産商品はすべて、5月のリターンがマイナスだった。
機関投資家向けにデジタル資産の管理を助言するポリサインのジャック・マクドナルド最高経営責任者(CEO)は「ビットコインは最近の市場全体の動きに歩調を合わせてレンジ内で推移している。投資家は底値を見極めようとしているが、それがどこなのか確信が持てない」と述べた。
マクロ経済と規制リスクを巡る霧が晴れるまで、仮想通貨ファンドへの資金流入は低迷するというのが多くの市場関係者の見立てだ。
IDXのマクミラン氏は「われわれは確信を持った買いが市場に戻ってくるのを待っている。マクロ経済面でまだ問題が山積している」と語った。
(Medha Singh記者 Lisa Pauline Mattackal記者)
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