- 2022/06/17 掲載
長期金利が低下、株に買い戻し 日銀政策維持で安心感も
新発10年国債利回り(長期金利)は朝方、2016年1月4日以来の高水準となる0.265%を付けた。日銀が示す変動幅上限を超える水準だ。日銀の決定を受け、午後には一転、一時0.220%まで低下した。
国債先物も上げ幅を拡大。中心限月9月限は前営業日比34銭高の147円55銭近辺で推移している。
大和総研エコノミストの久後翔太郎氏は「日銀は、連続指し値オペで0.25%を維持するという方針を明確に打ち出した」といい、アナウンスメント効果と今後の買い入れによって0.25%の上限を維持できると日銀は踏んでいるとも解釈できる、と話す。
株式市場でも、買い戻す動きがみられた。日経平均は2万6000円を割り込んでいたが、日銀の決定内容が伝わると、日経先物は同水準を回復した。
後場に入ると、現物市場でも戻り歩調となった。「利上げがあると読んでいた投資家の買い戻しが入ったようだ」(国内証券)との声が聞かれた。
りそなアセットマネジメント、運用戦略部チーフ・ストラテジストの黒瀬浩一氏は「スイス中銀が利上げに動いたことで、日銀も量的緩和は続けられないのではないかとの観測が浮上していた。それがなかったこと自体はポジティブ」という。
<ドル/円は乱高下>
一方、為替市場ではドル/円が乱高下した。日銀の発表直後は急上昇し134.64円まで買われた。
「海外投資家の間では、日銀はイールドカーブ・コントロールの変動許容範囲を広げるか、放棄する以外に選択肢がほとんどないとの見方が強まっていた」(外銀)といい、円を買い仕掛けていた海外勢が損失確定の売り戻しを迫られた、という。
ただ、こうした動きが一巡すると逆にドル売りが優勢となり、132.40円まで値を下げるなど、荒い値動きとなった。
日銀は声明文で「金融・為替市場の動向やその日本経済・物価への影響を十分注視する必要がある」との表現を新たに加え、為替に異例の言及をした。
ニッセイ基礎研究所上席エコノミストの上野剛志氏は「円安進行を止めるためには利上げしか手段がないことから、口先介入の意味合いが強い」と指摘する。
<修正の思惑根強く>
先行きに関しては、日銀はイールドカーブ・コントロールの修正に動かざるを得ない、との見方も出ている。
野村総研エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、10年国債利回りの変動レンジの上限を死守することはもはや難しくなってきており、枠組みは末期症状の様相を呈している、とみる。そして「今後数カ月のうちに長期国債利回りのコントロールを柔軟化する可能性がより大きいと考えられる」という。
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