- 2022/06/26 掲載
アングル:米ウォール街、昨年の採用ブームに沈静化の兆し
シティグループ、JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴなどは、昨年から今年初めにかけて熾烈な採用競争に直面し、人材確保のために給与引き上げを余儀なくされた。ボーナスは15年ぶりの高水準に跳ね上がった。
しかし、採用コンサルタントや経営者、最近のデータからは採用への熱が薄れてきていることがうかがえる。
コンサルティング会社ジョンソン・アソシエーツのマネジングディレクター、アラン・ジョンソン氏は「2021年末は雇用も給与も空前の需要で過熱していたが、通常に戻りつつある。年末までに冷え込むかもしれない。現在は移行期だ」との見方を示した。
米労働省労働統計局のデータによると、証券、商品契約、投資、ファンド、信託のカテゴリーで採用ペースが急激に鈍化した。4月は雇用が4600人に増加したのに対し、5月は1200人増にとどまった。21年は平均3400人増だった。
人材紹介会社GQRグローバル・マーケッツのシニア・バイス・プレジデント、アルベルト・ミラバル氏は、一部の顧客は人材探しを一時停止していると明らかにした。世界市場が低迷する中、規模が大きくなったチームをさらに拡大する前に「状況を見極める」意向という。
コーン・フェリーで資産運用会社の採用を支援するグロリア・ミリオーネ氏によると、過去数年はESG(環境・社会・ガバナンス)投資やインパクト投資部門で特に採用が活発だった。しかし昨年後半の「採用ブーム」は、3月末から4月にかけて「より穏やかなペース」になり始めたと語った。
人材コンサルティング会社シェフィールド・ハワースのマネジングディレクター、ジュリアン・ベル氏は「最も大きな落ち込みは株式資本市場の分野だ」と指摘する。
ロシアのウクライナ侵攻によるインフレの悪化や金利上昇を受けて、ウォール街では一部の企業がリセッション(景気後退)リスクについて神経質になっている。
ただ、投資銀行では雇用が減速し、給与への期待も低くなっているが、差し迫ったレイオフは懸念されていない。
プライベートエクイティ、ヘッジファンド、投資ファンドなどを顧客に持つオデッセイ・サーチ・パートナーズのマネジングパートナー、アンソニー・カイズナー氏は「顧客は現在の取引量に対して人手が足りていないと考えている」と述べた。一部の顧客はまだ人材確保に大きな意欲を持っているという。
(Sinéad Carew and Saeed Azhar記者)
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