- 2022/06/27 掲載
アングル:米株上期は半世紀ぶり大幅安、下期も身構える投資家
今年上半期は、どのような基準で見ても投資家にとって苦しい時期となった。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによると、S&P500種指数は年初来で約18%下落しており1970年以降で最悪の上半期となる勢いだ。
投資家の心理は、高インフレの継続と米連邦準備理事会(FRB)の引き締めによる景気後退突入の間で揺れ動いており、市場のボラティリティーが近く解消されると考える市場関係者は少ない。
ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのOCIOグローバルヘッド、ティモシー・ブラウデ氏は「今年上半期に見られた不安定さやボラティリティが収まるとは思っていない」と述べた。
<反転には痛みが必要か>
過去のデータを踏まえた今後の見通しは強弱まちまちだ。
LPLフィナンシャルの1932年以降の下落局面に関するデータによると、S&P500が年央時点で15%以上下落した年は、下半期に毎年株価が上昇し、平均リターンは24%近くに達した。
JPモルガン・チェースのグローバルマーケットストラテジスト、マルコ・コラノビッチ氏は、米株式市場が今週7%上昇する可能性があると予想。今年前半の大幅下落を受け、期末を控えた投資家がポートフォリオのリバランスを進めるためという。
BoFAグローバルリサーチが注目している一部の逆張り指標も、買いシグナルが点滅しているという。
ナティクシス・インベストメント・マネジャーズ・ソリューションズのリード・ポートフォリオ・ストラテジスト、ジャック・ジャナシウィッチ氏は、下半期は上半期より良くなる可能性が高いとみている。特に、グーグルの親会社アルファベットのような、株価が大幅に値下がりしたバランスシートの強い大手ハイテク企業の株式に強気な見方を強めている。
同氏は「経済に関する多くの悪材料は織り込み済みだ。リスクは上方向だと考えている」と述べた。
しかし、株価の反発を待ち望んでいる投資家は、胃が痛くなるような思いをすることになるかもしれない。
ソシエテ・ジェネラルで北米クオンツ戦略の責任者を務めるソロモン・タデッセ氏は、過去150年の弱気相場を研究し、株価はそれまでの強気相場の「行き過ぎ」を修正した後に、底打ちする傾向があることを示した。過去の事例を踏まえると、S&P500はさらに22%下落して3020に達する見通しという。
同氏は、今年の株価下落を「新型コロナウイルス流行後の(強気相場の)行き過ぎに対する必要不可欠な修正」とみている。
株価反発に対する疑念は個人投資家の間にも広がっている。米個人投資家協会が6月22日までの週に行った調査では、59.3%の回答者が、米株式市場は今後6カ月間、弱気モードになると考えていることが分かった。
オールスプリング・グローバル・インベストメンツのシニア投資ストラテジスト、ブライアン・ジェイコブセン氏は、最近の債券利回りの低下で市場全体のボラティリティーが抑制され、新興国株式や短期ハイイールド債などの投資妙味が高まる可能性があるとみているが、現時点では米株式市場に慎重な姿勢を崩していない。「セクターの観点からは、安全だと言えるものはない」という。
ゴールドマンのブラウデ氏は、インフレ懸念と商品価格の高騰により、今年下半期は上半期と同様に不安定になる可能性が高いとみている。「株式・債券市場にはダウンサイドリスクがある。このような環境では、現金が王様だ」と述べた。
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