- 2022/11/11 掲載
日銀と海外投資家の攻防、国債市場で続く公算=シティG金利責任者
[東京 11日 ロイター] - 米シティグループの金利部門の共同責任者は、ロイターとのインタビューで、日銀の金融政策の修正は基本的に2024年まで見込まないものの、米国のインフレが明確にピークアウトしない限り、日本の国債(JGB)市場では海外投資家と日銀の攻防が繰り返されるとの見方を示した。
インタビューは、市場部門金利商品本部のグローバル共同責任者、ディアドラ・ダン氏(ニューヨーク在勤)が来日した10日に実施した。主なやり取りは以下の通り。
──日銀の金融政策の先行きをどうみるか。
「金融政策については、日銀の黒田東彦総裁が任期を終える来年4月までは現行の(大規模緩和)政策が維持されるというのが当社の見方だ。そしてその時には、イールドカーブ・コントロール(YCC)政策の導入につながった2016年(9月)の『総括的検証』のような、何らかのレビューがあるだろうとみている」
「そうしたレビューを実施した後は、YCCの行く末についての不確実性が増すだろう。レビューを通じて、銀行の収益や年金・生命保険会社の運用に与える影響、国債市場の流動性枯渇やボラティリティー上昇、対ドルでの円の下落といったYCCの副作用を勘案した結果、それらが次の日銀総裁から(政策の現状維持とは)別の結論を導き出す原動力となる可能性がある」
──日銀の「次の一手」は何か。
「金利の操作対象年限を10年から5年にシフトさせる、またマイナス金利を解除する、の2つを想定している。そのタイミングについてはまだ確たる予想が定まっていない。23年中ということは考えづらく、その翌年(24年)であれば可能性があるとみている」
「オフショア(海外)投資家の間には、それよりも早い時期に日銀が(YCC修正に)動く可能性があるのではないかと見込む向きがあり、それがわれわれが市場で目にしたようなドル円や日本国債の動き(急激な円安や国債売り)につながった」
──JGB市場では6月と9月の日銀政策決定会合前に海外勢と日銀が攻防を繰り広げた。
「JGB市場は、日本の投資家だけでなく世界の債券投資家にとっても重要だ。オフショア投資家は、日銀の政策が公式なコミュニケーションで表明されているよりも早く修正される可能性があるとの見方から、今後もオポチュニスティック(市場価格の急変動などを捉えて短期的な収益機会を狙う戦略)にJGB市場の取引に参加するだろう」
「日銀の政策変更は必ずしも(事前に決められた)決定会合の日程に縛られるものではないが、その時に行われる可能性が高いことから、同会合の開催予定日の前にそうした動きが強まりやすい」
──YCCが修正されるまで攻防が繰り返されるのか。
「日銀がYCCを維持するためにやむを得ず実施している市場介入の規模の大きさから、海外投資家が日銀の現行政策の持続可能性に疑問を持っているのは事実だ。ただ実際に日銀が動くかどうかは、日本だけの事情で決まるものではない」
「例えば米国でインフレが鈍化して、米国債市場が大幅上昇(金利は低下)したとする。そうすれば日米金利差が縮小するため、YCCの持続性は今よりも高まると言える。JGB市場で海外勢の動きが活発化するか否かは、このように複合的な要因が重なりあって決まるものだ」
「日銀は黒田総裁の任期が終わるまでYCCを維持することができる、というのが当社エコノミストによるハウスビューだ。ただ市場参加者の1人として私の個人的見解を言えば、日銀はYCCへのコミットメントを維持するためにあらゆる手を尽くすだろうが、そうできなくなる可能性は(確率が非常に小さい)テールリスクとして存在する」
「英国市場で前月起きたこと(トラス前政権の経済対策発表を受けた金融市場の混乱)は固有の出来事だったと思うが、周囲のさまざまなリスクに対する注意を怠るべきではなく、また時として事態は急速に動いてしまうものだとの警鐘を、広く世界に向けて鳴らす結果となった」
(インタビュアー:植竹知子 編集:伊賀大記)
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