- 2006/06/05 掲載
NEC、新開発のマルチキャスト通信方式でハイビジョン並みのインターネット放送サービスを実現
NECはこのたび、ハイビジョン並みの高品質なインターネット放送サービスを、低コストで、高い信頼性のもとに実現可能なマルチキャスト通信方式を開発したと発表した。
この開発は、従来困難だったマルチキャスト通信における高い信頼性のもとでデータ配信を実現するものである。このたび開発した通信制御方式により、大容量コンテンツの配信に耐え得るマルチキャスト通信が可能となり、インターネット上でハイビジョン並み(約20Mbps)の高品質な放送サービスが実現できるようになる。
このたびの開発における主な特長は以下の通りである。
(1)配信される映像パケットを識別し、各転送装置で二重に転送されたパケットを効果的に廃棄する技術を開発した。この技術により、配信パスの障害などに端を発するループパスが引き起こす映像パケットの無限コピーを防ぎながら、配信パスの冗長経路を構成することが可能となり、パケット欠損に伴う映像再生への影響を最小化できる。
(2)配信ツリーの各地点に配置された測定装置で受信した同一パケットのトラフィック情報を照合することにより、マルチキャスト通信の配信品質を測定する技術を開発した。この技術により、既設のマルチキャストネットワークに変更を加えず、測定装置を追加導入するだけで、配信ツリー全体に対する配信品質を効果的に測定できる。
(3)配信パス上の品質(パケット廃棄率/ジッターなど)劣化を検出した場合、映像再生への影響を排除しながら所定の品質を満たす新しい配信パスへ切り替える方式を開発した。品質劣化の検出時に、品質が劣化した配信パスと新しい配信パスとの間で通信を引き継ぐ、パケットレベルの同期処理を行うことで、無瞬断で配信パスを切り替えることができる。
近年、ブロードバンドの急速な普及に伴い、インターネットを用いた映像配信サービスの利用者が急激に増えている。現在の映像配信で主流のビデオ・オン・デマンド(Video on Demand)型サービスは、1対1通信であるユニキャスト通信を用いており、視聴者数が増加するとサーバやネットワークへの負荷および管理コストが爆発的に高くなる。そのため、低コストで多くの視聴者に映像配信を行う放送型サービスでは、1対多通信となるマルチキャスト通信の適用が検討されている。
マルチキャスト通信では、配信経路中のパケット欠損が多数の受信者に影響を与えるため、配信パスの冗長化が必要となる。しかし、従来のマルチキャスト通信では、配信パスの冗長化によりコピーされたパケットと、配信パスの障害で発生したループによりコピーされた不要なパケットを区別できなかったため、配信パスの冗長化は困難だった。そのため、マルチキャスト通信を用いた放送サービスでは、ネットワークの品質劣化や障害が映像再生に致命的な影響を与えるという課題があった。
このたびの開発は、このような課題を克服して高品位なマルチキャスト通信を実現するもので、次世代ネットワーク(NGN)を活用した様々な高品位サービスを実現するための基盤技術である。
NECでは、本成果が視聴者数の制限を解消した大規模かつ実用的な放送・通信融合サービスの実現に大きく寄与すると考え、今後も研究開発を強化していくという。
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