- 2006/08/16 掲載
パソコンの空き時間で癌撲滅運動?米でユニークなボランティア活動がスタート
【IT基盤】PCユーザーなら誰でも参加できる世界規模の慈善活動
世界中のPCをかき集めて、スーパーコンピューターを超える
ワールド・コミュニティー・グリッドは、個人および企業のコンピューターの空き時間の演算能力を活用して、世界が抱える最も困難な社会的問題の解決を支援する世界規模の人道的活動。これまでにも、エイズ新薬開発のための研究、人間のたんぱく質の構造研究などに活用されてきた実績がある。現在、世界中では6億5,000万台以上のPCが使われているといわれるが、このすべてのPCがネットを介してこの人道活動に参加できる。具体的には、ワールド・コミュニティー・グリッドのHPにアクセスし無償のソフトウェアをダウンロードして登録さえすれば、誰でもコンピューターのアイドリング時や空き時間のリソースを寄付することができる。現在35万台以上のPCが空き時間を利用してボランティアに参加しているという。
グリッド・コンピューティングは、数千、数百万台規模で個人のコンピューターの処理能力を結集し、途方もない演算能力を備えた巨大な「仮想」システムを構築することができる。全世界に散らばったPCの処理能力を「かき集める」ことによって、世界最大のスーパーコンピューターをはるかに凌駕する処理能力を提供することができるというもの。
ワールドコミュニティグリッドのホームページ 登録ののちソフトをダウンロードすれば誰でも参加できる。 |
この「がん撲滅支援」プロジェクトは、「ワールド・コミュニティー・グリッド」が提供する、グリッド技術による仮想的なスーパーコンピューターを基盤に巨大な演算能力を活用する3番目のプロジェクトとなる。「がん撲滅支援」プロジェクトは、がんの基本メカニズムの解明を支援し、がん患者の治療法や療法計画を改善するための研究者支援につながることを目的としている。IBMは、少なくとも3カ月間、ワールド・コミュニティー・グリッド上で「がん撲滅支援」プロジェクトを推進することを表明した。このプロジェクトにより、研究者は膨大な数のがん組織マイクロアレイの分析を同時に行えるようになり、複数の実験をこれまでより短時間で実施することが可能となるという。
130年要する分析を1日で実行
ニュージャージーがん研究所の免疫組織化学共有資源プログラムのディレクター、デビッド・J・フォラン博士は「この『がん撲滅支援』プロジェクトのおかげで、ワールド・コミュニティー・グリッドが、従来のコンピューターでは完了までに約130年は要すると思われる数の標本分析を、1日で実行可能としてくれている。ワールド・コミュニティー・グリッドがなければ、普通のコンピューターでは、がん組織を小さな単位でしか分析処理できなかった。」とその成果を語る。ワールド・コミュニティー・グリッドのスピードと先進技術をいかすことで、研究者は測定可能なパラメーターの微妙な変化を検知・追跡することが可能となり、ガン治療における手作業の検査や従来の分析手法だけではつかめない予後の手掛かりを容易に発見できるという。すでに研究者は、組織マイクロアレイの自動的な画像化、分析、アーカイブ保存、共有を目的とする、Webベースのロボット型プロトタイプまで開発している。この「がん撲滅支援」プロジェクトはまず、乳がんのTMA分析から着手し、その後頭部と首部のがん分析へと対象を拡大していく予定だとしている。
関連コンテンツ
PR
PR
PR