• 2007/08/30 掲載

「セカンドライフ」に参入する企業が気をつけるべき点

デジタルハリウッド大学院三淵啓自教授にインタビュー

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3D仮想世界のセカンドライフ。個人はもちろん、企業からも熱いまなざしが注がれている。第3回では、参入した企業の現状、企業が「セカンドライフ」の中で活動する際に気をつける点などをデジタルハリウッド大学院に、「セカンドライフ研究室」を設立し室長に就任した三淵啓自教授に、話を聞いた。


「セカンドライフ」参入自体で宣伝効果を狙う企業が多いのが残念


デジタルハリウッド大学院三淵教授

デジタルハリウッド大学院
三淵啓自教授

――セカンドライフ内への企業参入が次々と報道されていますが、現状はいかがですか。

三淵■
 残念ながら、確固とした戦略をもって参入している企業が少ないですね。代理店や参入支援企業に依頼することを悪いとは言いませんが、企業として中で何がしたいかを明確にする必要があります。

 現時点での企業参入は、思いつきのアイデアだったり、「日本で初めて」、「業界で初めて」として注目を浴びたいなどの動機が見え隠れしています。参入自体が宣伝効果を狙ったものになってしまっています。

――それら、企業はセカンドライフの中でどのように見られていますか。

三淵■
 現在、セカンドライフ内を見渡したときに、個人の参入者の70%以上がアーリーアダプターなんですね。彼らは自分でコンテンツを作成できる高い能力を持っているので、企業が作る物に感動しない。 極端な話、企業が500万円かけて作ったものと、クリエイターたちが無料で作成しているものとさほど変わらない。そうすると、ブログに辛口コメントが書かれてしまいます。そのことが、結果として企業にとってはマイナスになるのではないかと懸念しています。

 今、参入することにより、現実社会に流れるパブリシティとしての効果がありますが、セカンドライフ内にいるデジタルリテラシーが高い人にどう印象付けられたのか、省みる必要がある。中途半端な参入は逆効果かもしれません。

―― 一般消費者が増えてくると状況は変わりますか。

三淵■
 コンテンツを作らず、見るだけを楽しむ一般消費者が登録者の80%を越した時点には、セカンドライフ内で企業がコンテンツを提供するのは有効になります。登録者数の伸びを考慮して、おそらく今年の年末頃ではないかと予想しています。今のセカンドライフ内での企業活動は、リアルの真似、Webの焼付けにとどまっているのが残念ですね。ここ、一年以内に状況は動くとは思います。

企業側は、一緒に作り上げるという発想への転換が必要
デジタルハリウッド大学

三淵教授のアバター 名前はIn Yan


――では、現在、参入している企業がすべきこととは何ですか。

三淵■
 今の時点では、アーリーアダプターの人に向けてどのようにコミュニケーションをとっていくかを考えることが大切ですね。  セカンドライフ内で、実際に、企業ブースに行っても閑散としていることが多いんです。常に人で賑わっている企業は、コミュニティを作ったり常にスタッフがセカンドライフ内に常駐しているなどの取り組みをおこなっています。その中でブランド構築を行っています。

 例えば、SNSのmixiや動画投稿サイトYouTubeなどはコミュニティによって価値が出ました。すなわち、参加型のコンテンツですね。これからセカンドライフに参入する企業もその視点が必要になります。企業が作ったものを見せるだけではなく、中のクリエイターの意見も踏まえて一緒に作り上げるという発想への転換が必要です。

――従来の企業のWebサイトにもコミュニティがありましたが。

三淵■
 今まで、Webでも企業の新製品情報について消費者が書き込む投稿フォームなどがありました。実はこれらに書き込むってかなりハードルが高いんですよ。文章を論理立てて書けて、時間も必要です。あるいは、よほど強い意見を持っているか、ですね。セカンドライフ内で新製品発表のイベントをやったとする。すると、隣の人と「あれってどう思う?」、「なんかいいね」、「私は、いまいちだな」と会話が交わされる。この直感的意見が大事なんですよね。

 これからは、企業がどのようなコミュニティを持つか、そして、そのコミュニティの規模はどれくらいか、企業に対し個人が愛着を持って意見を言ってくれるか、などが企業価値と結びついていくと思っています。

 今までのマスに対する広告ではなく、細分化されたグループへの訴求が大事になる時代が来ています。こういうことを踏まえると各個人の声も大きくなり、それを聞きながら構築していく企業が成長していくと思っています。

 リンデンラボ社がセカンドライフを作った功績の一つは、著作権で囲い込まずに、クリエイター達とともに作り上げてきたことがあると思います。企業も、小さなコミュニティに支持される商品を作ることで、広がりを見せていく時代になったといえるでしょう。また、セカンドライフ内のコミュニティで評判になったものが、リアル社会にも投影されることなどが起こってくると思います。

次回は、セカンドライフの大いなる可能性についてお話いただきます。

(取材・構成:ソフトバンク ビジネス+IT編集部 坂井)

●三淵啓自(みつぶち・けいじ)
1961年生まれ。スタンフォード大学コンピューター数学科にて修士号取得後、米国オムロン社サンタクララ研究所にて人口知能や画像認識の研究に携わる。その後、米国ベンチャー会社設立を経て(株)日本 ウェブコンセプツ、米国法人3U.com 社を設立。2004年からデジタルハリウッド大学大学院の大学院専任教授に就任。2005年7月デジタルハリウッド大学院「メディアサイエンス研究所」NCG研究室長に就任し文部科学省の調整費プロジェクトに従事、2006年10月、セカンドライフ研究室を設立。室長に就任。 主な著書:『セカンドライフの歩き方 バーチャルガイドブック』(ASCII出版)

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