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- 2025/05/29 掲載
AIアラインメントとは何か? 茂木健一郎氏に聞く「賢くても収入高くない」人がいる理由
茂木健一郎氏インタビュー前編
1962(昭和37)年、東京生れ。脳科学者/理学博士。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。東京大学理学部、法学部卒業後、同大大学院物理学専攻課程を修了。理化学研究所、英ケンブリッジ大学を経て現職。クオリア(意識のなかで立ち上がる、数量化できない微妙な質感)をキーワードとして、脳と心の関係を探求し続けている。主な著書に『脳と仮想』(小林秀雄賞受賞)、『今、ここからすべての場所へ』(桑原武夫賞受賞)、『ひらめき脳』、『「脳」整理法』、『生きがい』など。
AIとの「アラインメント」とは何か
アラインメントという言葉自体、まだあまりなじみのない方も多いかもしれません。「調和させる」「並べる」といった意味合いのある言葉で、AI分野ではAIが人間の価値観や倫理観に沿って行動するように調整する技術や研究分野と説明されます。実はこのアラインメントの概念をとてもシンプルに理解する方法があります。
たとえば、孫正義さんが語っているように、今後のAIの世界にAGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)やASI(Artificial Superintelligence:超知能)が登場したとしましょう。
ただ、それが登場したからといって、即座に「どうやってお金を儲けるのか」という問いには答えが出ません。そもそも、人間の世界でも、知性と経済的な成果が必ずしも一致していないという現実があります。
私の周りにも、IQが非常に高くて賢い人がたくさんいますが、そういう人たちがみな裕福かというと、決してそうではありません。一方で、いわゆる学力や知的なスコアが高くなくても、ビジネスで大成功している方も大勢いらっしゃいます。
この事実が示しているのは、知性とビジネス、生活との間に「アラインメント(接続)」が必要だということです。
成功する人には知性と目的の“接続(アラインメント)”がある
ビジネスで成功している人は、自分の知性とビジネスの目標をうまくアラインメントさせることができているのだと思います。逆に、いくら賢くても、うまくその知性を活かしきれていない人も多い。それは、知性と行動、目標との間でアラインメントができていないということです。ですから、AIがどれほど優れた知能を持っていたとしても、どのように使うのか、どうビジネスに活かすのか、社会課題の解決にどう貢献するのか──そうした「活用法」の設計こそが、アラインメントの核心なのです。
AGIやASIが登場しても、「何に使うのか」「どう新しい価値を生み出すのか」という視点がなければ、せっかくの優れた能力も活かされません。ですからAIにとってのアラインメントは、いわば実践そのものであり、本番なのです。
つまり、アラインメントの重要性についてしっかり考えておかないと、AIの良さを最大限に引き出すことはできないということです。それだけ、AIの活用においてアラインメントというのは本質的なテーマなのです。 【次ページ】日本がAI時代に戦うための「強み」とは
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