- 2008/07/02 掲載
製品の高難度化、ライフサイクル短命化に対応するため、全工程のスピードアップとコストダウンを追求
NECソフト ソリューションフォーラム2008連動~株式会社TKR事例~
リードタイム短縮と生産計画の変化に対応
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宇佐美氏 当時、本社は汎用機、国内拠点と海外拠点はオフコンを使い、各工場の生産体系や工場の規模に合わせた個別最適化を追求した生産管理システムを構築していました。しかし、中国をはじめとする新興国企業との競争が熾烈になる中、従来のシステムでは競争優位を維持できないと判断し、システムの統一に踏み切りました。同時に、これまでの製番管理方式では、急な生産計画の変更に対応できなくなってきたため、MRP(Material Requirements Planning)を中心とするシステムに切り替えることを決断したのです。
しかし、時間も人的リソースも限られていましたから、最初はパッケージの導入を検討しました。ところが、工場によって生産形態が大きく異なるため、大幅なカスタマイズが必要になることがわかったのです。また、仮にカスタマイズを行っても、システムの拡張性が保証されないことも明らかになりました。そこで、NEC製の高速MRPエンジンの提供を受け、すべて自前で開発することにしたのです。その結果、各工場で資材の所有量計算がシミュレーションできるようになり、メーカーからの突然の生産計画変更の要求に対しても、現場で迅速に対応できるようになりました。
――ほぼ同時期にWeb-EDIのシステムも導入されていますね。
宇佐美氏 1998~1999年は、多くの取引先からリードタイムの短縮、得意先保証範囲の削減などの要求が集中した時期です。こうした要求に対応するため、弊社ではプロジェクトチームを作り、リードタイムの短縮に取り組みました。一口にリードタイムといっても、製造にかかるリードタイム、流通や検査にかかるリードタイムなど、さまざまなリードタイムがあります。プロジェクトチームは、これらを分解し、その中の「情報伝達リードタイム」を短縮することを目的に、Web-EDIの導入を決定しました。
ただし、前述の生産管理システム刷新の時期とも重なっていましたので、短期に稼働可能であること、カスタマイズしなくても使えること、教育等のサポートも受けられることといった条件に合致したシステムが必要でした。これらの厳しい条件をクリアするシステムは、NECソフトの「EBWeb」しかなかったのです。導入決定が1999年の10月で、2000年5月にカットオーバーという非常に短期間での導入でしたが、発注リードタイムの大幅な短縮化に成功し、経費削減にも大きな成果が得られました。
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への対応が急務に
――その後、製造業を取り巻く環境はどのように変化したのでしょうか。
宇佐美氏 大きく3つの変化が起きました。第一は、アジア新興国企業の生産技術力向上が脅威になると言われた状況が過去のものとなり、これらの海外企業といかに協業していくかという段階に入ってきたということです。
第二は、海外・国内を問わず、設計・生産技術が高難度化していることです。より小さく、薄く、軽くという流れの中で、従来よりも高い技術力が求められるようになりました。 第三は製品のライフサイクルが極端に短くなったということです。このため、見積もり、開発・設計、生産、最終的な製品の終息処理と、すべての段階においてスピードアップが要求されるようになりました。
これらの変化に対応するには、従来のSCMだけでは不十分です。SCMにより物流を含めた調達のスピードアップは図れますが、さらにモノ作りそのもののスピードアップが要求されるようになってきたのです。 同時にコスト競争力のさらなる強化も要求されるようになりました。「同じ部品でもどこで買えばより安いのか」「どの部品とどの部品が代替可能か」といったことを瞬時に判断できるシステムが必要になってきたのです。
ところが、従来のPDMシステムは分散型であったため、こうした要求に対応できません。部品やドキュメントのデータベースはあったのですが、それぞれの工場が自分のところに関連する情報だけを持っていたため、全社で共通して利用することが困難だったのです。このため、部品表、図面やCADデータなどのドキュメント、コスト情報、在庫情報、環境関連情報、製品の不良情報といったナレッジ情報などを1つのデータベースに統合し、すべての工場から素早く検索できるようなシステムが不可欠になったのです。
見積もり段階からのシミュレーション機能を強化
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宇佐美氏 システムそのものは、2008年11月にカットオーバーを予定しています。前述の部品表を中心とする統合データベースの構築も順調に進んでいます。また、統合データベースが完成することを前提に、そのデータベースを活用して見積段階からシミュレーションを行うシステムが、いくつかの工場で先行稼働しています。
このシステムでは、ObbligatoⅡからの情報だけでなく、得意先からいただいた情報なども取り込み、受注によって毎月どれくらいの営業利益が出るかをシミュレーションします。シミュレーションの目的は、できるだけ早い段階で精度の高いコスト情報と売価との関連を把握することです。どこまでならコストを下げられるのかをシミュレーションし、見積書を作成・提出します。仮に満足できる見積もりが作成できなかった場合は、ObbligatoⅡを使って代替部品を検索したり、工場ごとの購買単価を比較してより低価格な部品を探したりすることで、改めてシミュレーションを行うことも可能です。カットオーバー後は、すべての工場でこのシステムが稼働することになっています。
――最後に中堅中小企業にとってのIT戦略の重要性についてどのようにお考えですか。
宇佐美 氏 中堅中小企業の多くはCIOを置くほどの余裕はないと思います。しかし、中堅中小企業であるほど人材も資金も限られていますから、少ないリソースを適切に配分して効果的な投資を行っていく必要があります。つまり、中堅中小企業ほど、CIO的な存在を必要としているのです。
また、効果的なIT投資を行うには、経営戦略の中にIT戦略をしっかり位置づける必要があります。そのためには、情報担当の責任者が経営戦略に関わるだけの力量を持つ必要がありますが、現実には担当者が独学でそれだけのスキルを身につけるのは困難でしょう。当社の場合は、NECソフトのITコーディネータベースのコンサルティングサービスを積極的に活用して、そこを補いました。
繰り返しになりますが、経営戦略とIT戦略は合致していなければなりません。そのために、IT戦略の立案に際して外部の専門家の力を積極的に活用することは、中堅中小企業が生き残っていくうえで不可欠なことではないかと思います。
――ありがとうございました。
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