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  • 2008/06/25

【近藤正高氏インタビュー】新時代を迎える私鉄はどう変わるのか (2/2)


私鉄史上のもっとも大きな変化が起きている

――そういう発見がこの本を書く動機になっていると。あと、本書を書くにあたって心がけたことはありますか?

近藤氏■
極力、従来いわれてきたようなイメージからは外れた私鉄各社の見方を提示したつもりです。たとえば、従来「山の手」の阪急、「下町」の阪神というように対照的にとらえられてきた阪急と阪神の類似性を探ったりとかしています。沿線に実際に住んでいる人たちにとってみれば、かなり乱暴な言い切りというのもあるかもしれませんが(笑)。

――いま、私鉄の影響力という話が出ましたけど、それでも私鉄の勢いは従来とくらべると衰えつつあると、この本の終章で書かれていますね。

【コラム】【近藤正高氏インタビュー】新時代を迎える私鉄はどう変わるのか
近藤正高氏
近藤氏■
たしかに肝心の鉄道事業の収入が減ったために、グループ企業を支えられずに近年大規模なリストラを行なったところもあります。名鉄などは、旧国鉄のようにローカル線を廃止するところにまで踏み切っていますし。

 一方では、先にあげた京阪の中之島線や阪神のなんば線のように新線を建設しているところもあるわけですけれども、それにしたって私鉄会社が完全に自前で建設しているのではなくて、沿線自治体と出資しあってつくった第3セクターによる建設ですからね。華々しく開業したつくばエクスプレスにしても、首都圏新都市鉄道というやはり第3セクターの会社が建設・運営しています。それだけ、鉄道会社単体では都市に新線を建設することが困難になっているということでしょうね。

――そう考えると、自前で東京~名古屋間にリニア新幹線を建設しようとしているJR東海っていうのは例外中の例外かもしれませんね。

近藤氏■
JR東海はたしかに旧国鉄から分割民営化された会社で、一般的な私鉄には入らないわけですけど、これだけ重要な幹線を現在の計画どおり、国の力にたよらずに自前で建設するとなると、日本の私鉄史の上でも大きなエポックになるんじゃないでしょうか。

 まあ、可能なかぎり短い所要時間で二大都市圏を結ぶことが最大の目標みたいだから、リニアの沿線に新しい文化が生まれることはあまり期待できそうにないですけど。

――沿線文化といえば、先日副都心線の開業とともに東武東上線と西武池袋線とのあいだで直通運転がはじまり、一停車駅にすぎなくなった池袋の空洞化がとりざたされていますが。

近藤氏■
でも、開業の日(2008年6月14日)に渋谷発の初電に乗ったんですけど、結構みなさん池袋で降りてましたね。そう考えてみると、東武東上線や西武池袋線の沿線に住む人たちは、電車一本で行けるようになった分、新宿や渋谷に行く機会もたしかに増えるんでしょうが、逆に、新宿・渋谷方面から池袋へ流れる人が増えるということも十分ありえますよね。さらに2012年度には東急東横線の乗り入れも予定されているわけですから、池袋のデパートなどにとっては、横浜方面からのお客さんも見こめるという点で、大きなチャンスだということもできそうですけど。

 だから、池袋はそんなに簡単に地盤沈下はしないんじゃないですかねえ。むしろ僕が気になるのは西武新宿線の空洞化だったりします。

――……というと?

近藤氏■
これまで、たとえば、所沢方面から新宿や渋谷へ出るとなると、西武池袋線で池袋まで出て山手線か埼京線に乗るか、西武新宿線で高田馬場まで出て山手線に乗るか、ふたつのルートがあったわけですが、池袋線から直通で新宿・渋谷まで出られるとなると、単純に考えれば、新宿線が使われることは少なくなるわけですよね。これは新宿線にとっては結構痛いんじゃないかなぁ。

 ただでさえ、新宿線は、新宿駅でJRやほかの私鉄と接続していない上に、池袋線のように複々線化も進んでいないので、電車の本数もなかなか増やせない状態にあるんです。

 それでも、西武全体でいえば池袋線の収入が増えるなら、新宿線の利用者が減ってもさほどということはないのかもしれませんが。もともと新宿線は、池袋線に加えてJR中央線とのあいだに挟まれているわけで、そのなかで沿線住民を中心に利用される一種のローカル線として、独自色を出していくというのもありかも……という気もします。

――西武の池袋線と新宿線、同じ会社の路線でありながらそんなふうにカラーの違いが出てくるとしたらおもしろそうですね。

近藤氏■
まあ、新宿線でもひところ、新宿~上石神井間に急行専用の地下線をつくって複々線化しようという計画もあったんですけど、いつのまにか立ち消えになってしまったようですね。ただ、最近になってまた、東京メトロ東西線に新宿線を乗り入れるという構想も出てきたようなので、それもふくめて今後に注目といったところでしょうか。

●近藤正高(こんどう・まさたか)
1976年、愛知県生まれ。ライター。
高校を卒業するまで名鉄沿線にて育つ。
1995年より『Quick Japan』で編集アシスタントを務め、その後フリーに。
『ユリイカ』『日経ビジネスオンライン』などに原稿を執筆する一方で、単行本の編集協力も多数。
『私鉄探検』が初の著書となる。
関心のあるテーマはテレビ史、広告、建築、戦後政治、新幹線、オリンピックや万博といったビッグイベントなど多岐におよぶ。
2003年からは、ブログ「Culture Vulture」を開設、現在も更新中。

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