- 2026/10/15 06:10 掲載
ガートナー推奨「AIサービス選定6カ条」、オープンハウス「11万時間」削減の秘訣も(2/2)
部門主導の選定なら…ガートナー推奨「分業モデル」とは
では、ユーザー部門の主導によるサービス選定はどう進めれば良いのか。ガートナーの調査によれば現状、全体の4分の3が「社内のセキュリティ規定を満たしている」などを条件に、サービス選定を現場に一任している。ただ、このやり方は利用サービスの増加を招きやすく、それは運用コストやサポートの手間などに跳ね返る。対応策として知られるのが、“受益者負担”の考えに基づく、コストや運用の手間をユーザー側で負担するやり方だ。ただ、「これは現場への運用の“丸投げ”に近く、こちらも知見不足などで事故が起こりやすいことが難点です」(林氏)。
これを踏まえてガートナーが推奨しているのが「分業モデル」だ。これは、ユーザーが選定したサービスを、IT部門が審査して導入を承認するもの。事故リスクの低減のために、サービスを評価するプロセスを付加した具合である。
分業モデルでは一般に、事故防止とAI活用の推進の両立に向けた組織整備が行われるという。具体的には、AI戦略の推進に向けた経営トップが参加する「AIガバナンス推進委員会」を組織し、その下にAIに関する法務や人事、セキュリティ、IT/DXなどを担う「AI COE」を配置。AI COEは現場のAIリーダーなどを支援する役割を担う。
ただ、これほど手を尽くしても周りを納得させる成果を得るまでの道のりは平たんではない。従量課金制への移行に伴うコスト増、AIのビジネス価値の不明確さ、現時点でのリスク制御のしにくさなど、課題はいくつも存在する。
その中での成果創出のアプローチとして林氏が示したのが「着実に攻める」ことだ。その具体的な中身はボトムアップによる生産性向上と、トップダウンによる経営インパクトの創出の2つに大別される。
【事例】オープンハウスとウォルマートに学ぶ成功法
全社利用のために林氏が必要性を訴えるのが、AI/AIエージェントで浮いた時間に相当する人材を、思い切って他の重要業務に異動させることだ。従業員は時間が生まれると、今の仕事をそれだけ頑張りがちだが、それでは劇的な成果は期待しにくいと林氏は訴える。この手法で成功を収めているのが総合不動産業のオープンハウスグループである。
同社では物件情報の収集や物件チラシの更新、物件資料の作成をサービスで自動化し、全社で11万7000時間の効率化を実現。その時間分の従業員のほとんどを路上でのチラシ配布など、顧客接点の強化を推し進めることで、営業案件と売上の増加につなげている。
一方の部門主導の利用における成功ポイントとして林氏が挙げるのが、経営インパクトが大きく、かつ、生成AIが解決手段として有効な経営課題に絞ってサービス活用を進めることだ。
成功企業がウォルマートだ。同社は商品企画業務にAIを取り入れ、SNSやインフルエンサーの動向の分析などを基に製品デザインの候補を即座に生成する仕組みを整備し、商品企画リードタイムを従来の約半年から6~8週間にまで短縮することに成功した。結果、タイムリーな市場投入で売上を拡大させるとともに、廃棄率も大きく低減させている。
「無論、経営インパクトを創出するAI活用のアイデアは、そうやすやすとは得られません。ただ、AIはアイデア創出の壁打ちの相手でもあります。ROIC(投下資本利益率)を“利益率”と“資本効率”に分解し、さらに在庫・回収・粗利・歩留まりといった現場レベルのKPIまで枝分かれさせて可視化したROICツリーを参考にすると良いでしょう(図3)。AIとアイデアを交わしつつ、現場との議論によりビジネス理解を深めことで、真に価値ある変革案が得られる可能性は着実に高まります。諦めることなく粘り続ける。AI活用においても、その大切さに変わりはありません」(林氏)
IT戦略・IT投資・DXのおすすめコンテンツ
IT戦略・IT投資・DXの関連コンテンツ
PR
PR
PR