- 2026/09/27 07:10 掲載
メタの「100gのVRグラス」は勝てる?アップル・グーグルらで見えた“次のPC”の条件(2/2)
MetaとXREALが同じ答え?「重い処理はポケットへ」
中でも興味深いのが、メタとは別にXREALも似た設計思想へたどり着いていることだ。同社が2026年秋に投入予定の「XREAL AURA」は、Android XRとGeminiを搭載する空間コンピューティンググラス。70度の光学シースルーディスプレイを採用し、現実世界を直接見ながらデジタル情報を重ねる。注目したいのは、その中身である。XREAL AURAも高性能なSnapdragon Reality Eliteをグラス本体へ押し込まず、外部のコンピューティングパックに搭載する。一方、グラス側にはXREAL X1S空間コプロセッサーを置く。XREALは、グラスと外部パックの連携によってAndroid XRやGemini、空間マルチタスクを実現すると説明している。
メタとXREALがほぼ同じ時期に似た解へ向かったのは興味深い。XR機器には、高性能なチップほど発熱し、大容量バッテリーほど重くなりやすいという物理的な制約がある。これまでの発想は「頭に載せたまま軽くする」だったが、両社は「重いものは頭に載せない」という別の答えを選んだ。
もっとも、目指す体験は同じではない。Meta VR Glassesはmicro-OLEDとカメラによるパススルーを使い、映画やスポーツ、ゲームなど高い没入感まで取りにいく。一方、XREAL AURAは光学シースルーで、現実世界を直接見ながら情報を重ねる。前者は「VRを眼鏡へ近づける」方向、後者は「眼鏡を空間コンピューターへ近づける」方向とも言える。
それでも2社が示した方向は重要だ。次のPCを巡る競争では、最速のチップを誰が積むかだけでなく、演算能力やバッテリーを身体のどこに置くのかまで設計競争になり始めているのである。
勝負は「軽さ」ではない、各社が奪う“視界”
では、Meta VR Glassesが約100gならメタが有利なのか。話はそこまで単純ではない。各社が最終的に奪い合っているものを考えると、重量や解像度以上に大きな競争が見えてくる。ユーザーが世界を見る「視界」そのものだ。スマートフォンでは、人は画面を見て、アプリを開き、必要になった段階でAIを呼び出す。しかしグラス型デバイスなら、AIは利用者と同じものを見て、同じ音を聞き、その場で情報を提示できる。グーグルはAndroid XRをヘッドセットだけでなくグラスへ広げ、Geminiをその中心に据えている。
メタも同じ方向を見ている。Connect 2026ではAIエージェント「Muse」をAIグラスへ展開し、Meta VR GlassesにもMeta AIを組み込んだ。メタはパーソナルAIとハードウェアを組み合わせ、次世代コンピューティングの主導権を狙う。従来のスマートフォン市場では、FacebookやInstagram、WhatsAppという巨大サービスを持ちながら、端末やOSの入口はアップルやグーグルが握ってきた。グラスが次の主要端末になれば、メタ自身が「人とAIが出会う入口」を持つ余地が生まれる。
勝敗を分ける条件は少なくとも3つある。第1に、何時間でも身に着けられること。第2に、AIが単に質問へ答えるだけでなく、見ている状況を理解して実際の行動につなげられること。そして第3に、アプリや開発者を巻き込むエコシステムを構築できることだ。
IDCはXRヘッドセットとグラスの世界出荷台数について、2026年に26.3%増、2027年には40.5%増になると予測している。大型ヘッドセット、ARグラス、AIグラスのどれか1つだけが残るとは限らない。ただ、競争の物差しが「どれほど高性能か」から「どれほど自然に人間の生活へ入り込めるか」へ移り始めている。
Meta VR Glassesの約100gという数字が意味するのも、単なる軽量化ではない。スマートフォンの次を巡る戦いで、巨大テック企業がついに「ポケットの画面」から「人間の視界」へ踏み込んできた。その号砲と見るべきかもしれない。
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