- 2026/10/08 06:10 掲載
野村不動産1万人の工数62%減、PKSHA・MicrosoftなどAI社員4社の違い(2/2)
【4社決算】巨大MicrosoftにPKSHAが挑める理由
まず、4社の最新決算を並べてみる。マイクロソフトの2026年6月期の売上高は3,318億ドル(約52兆4,300億円)で、前期比18%増えた。サービスナウの2026年4~6月期の売上高は39億8,700万ドル(約6,300億円)で24%増。マネーフォワードの2026年11月期中間期(2025年12月~2026年5月)の売上高は289億9,000万円で24.8%増、PKSHAの2026年9月期第3四半期累計(2025年10月~2026年6月)の売上収益は283億4,000万円で84.1%増だった。※円換算は2026年10月2日の1ドル=158.016円で計算。決算期はそろわないが、規模の差は桁違いだ。それでも見るべきは、各社がAIを売上に変える回路である。サービスナウは4~6月期にAI関連の年間契約額が10億ドル(約1,580億円)を超え、エージェント型AIの導入は9カ月で9倍になったとしている。マイクロソフトのクラウド売上は同期間に593億ドル(約9兆3,700億円)と27%伸びた。一方のPKSHAは、AIと専門人材を組み合わせる「AI Powered Worker」を新たな事業の柱に加えた。
では、AI時代に企業が持つべき本当の資産は何か。生成AIの基盤となるモデルは、自社で開発しなくても外部から調達できる場面が増えている。そうなると差が付くのは、AIが働く「仕事の文脈」をどれだけ握っているかではないか。マイクロソフトはメール、文書、会議、Teams。サービスナウはチケットや申請、ITや人事のワークフロー。マネーフォワードは会計、給与、経費、請求のデータ。そしてPKSHAは、社内の問い合わせや依頼、従業員とのやり取りである。
野村不動産HDの事例は、この見方を考えるヒントになる。依頼管理のAIは、Teamsというマイクロソフトの基盤の上で、PKSHAが日本企業の依頼や催促の流れを担う形で動いている。海外大手の基盤と国内ベンダーの業務特化は、必ずしも奪い合うだけの関係ではない。競争の軸は「誰がモデルを持つか」から、「誰が仕事の文脈と実行の経路を握るか」へ移りつつあるのではないか。
最初に消えるホワイトカラー業務は?「意外な答え」
ここで、冒頭の62%に戻りたい。野村不動産HDでAIが減らしたのは、経営判断や企画の時間ではなかった。名簿との照合、未対応者の抽出、催促、完了の確認という、仕事と仕事の間に挟まる作業である。同じ傾向は、PKSHAの別の事例にも表れている。東急不動産SCマネジメントでは、音声AI「PKSHA Voice Agent」の導入により、問い合わせの電話の約6割をAIの案内で顧客が自己解決するようになったという。4社の製品を見渡しても、AIが最初に入り込む先は似ている。サービスナウのFlowはパスワードの再設定やアクセス承認、マネーフォワードのAI Coworkは請求書発行や入金消込。いずれも手順が決まり、結果を確かめやすい作業だ。
だとすれば、AIが最初に奪うのは高度な判断ではなく、催促・確認・転記・照合といった「つなぎ」の仕事なのではないか。重要なのは、職種ではなくタスクの単位で見ることだ。たとえば総務の仕事を分解すると、定型処理、情報収集、確認、催促、判断、例外処理、承認、最終責任に分けられる。このうち定型処理から催促まではAIへ移りやすい一方、想定外の事態への対応や、誰が責任を負うかの判断は人に残りやすい。マネーフォワードがAI Coworkに、AIの下書きを人が承認する仕組みを組み込んでいるのも、その線引きを示している。
つまり、職種が突然消えるのではなく、職種を形づくる仕事が分解され、AIに向くタスクから抜け落ちていく。その結果、同じ総務担当者でも、名簿を追いかける時間が減り、例外への対応やルールづくりに時間を使うようになるだろう。
問うべきは「自分の職種はAIに消されるのか」ではなく、「自分の仕事に、催促・確認・転記・照合のようなAIへ渡せるタスクがどれだけ含まれているか」である。そして経営者やDX担当者にとって大切なのは、最も高性能なAIを選ぶことより、自社のどの業務をAIへ渡すかを先に決めることなのかもしれない。
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