- 2026/10/08 06:10 掲載
野村不動産1万人の工数62%減、PKSHA・MicrosoftなどAI社員4社の違い
「AI社員」が1万人を催促? 野村不動産の人待ち仕事
野村不動産ホールディングス(以下、野村不動産HD)は2026年9月30日、約1万人の従業員に向けた全社依頼の業務に、PKSHA Technology(以下、PKSHA)のAIサービス「PKSHA AI依頼管理」を導入したと発表した。PKSHAの発表によると、全社展開に先立つ6~7月の先行検証では、4つのテーマで約240人を対象に試したところ、依頼1回あたりの管理者の工数が平均約62%削減されたという。全社依頼とは、本社部門が従業員に出す手続きや作業のお願いを指す。従来は、Excelの名簿で対象者を管理し、Microsoft Teamsで1人ずつメンションを付けて連絡したうえで、未対応者を手作業で追いかけ、何度も催促する必要があった。8月には、約1,000人を対象としたWindows 11の更新依頼にもこの仕組みが使われたという。
AIが肩代わりしたのは、まさにこの「人待ち」の部分だ。未対応者を探し、催促し、結果を集める。同社グループDX戦略部の古澤智大氏は「追跡とリマインドが自動で回るようになり、状況がリアルタイムで見える」と話す。つまり、AIが文章を書いたという話ではない。AIが他人の仕事の進み具合を確かめ、終わっていない人を追いかけ、仕事を完了へ近づけたわけだ。
さらに、62%という数字以上に注目すべき点がある。社員が新しいAIの画面を開く必要がないことだ。PKSHAの導入事例によると、この仕組みは同社が日常的に使うTeamsの中で動く。同社は2月に社内問い合わせ向けの「PKSHA AIヘルプデスク」も導入しており、7カ月後には問い合わせ件数が2.2倍に増える一方、人が対応する問い合わせは半減したという。
社員の仕事はそのままに、その裏側にAIを入れた設計となる。とはいえ、Teamsという連絡の場があっても、誰に何を頼み、誰が終わっていないかを追う仕事は人の手に残っていた。そこに外部のAIが入り込む余地が生まれる。
PKSHA・Microsoftら「AI社員」4社は別物だった
ここ数カ月、人に代わって仕事を進めるAIの発表が相次いでいる。本稿ではこうしたAIを便宜上「AI社員」と呼ぶが、これは各社共通の製品名ではない。実際、4社のAIは同じ土俵に立っているわけではなく、「誰の、どの仕事を取りに来ているのか」で見ると持ち場がはっきり分かれる。米マイクロソフトは「デジタル同僚型」だ。同社は9月25日、Copilotを刷新し、利用者がいない間も働く自律型エージェント「Autopilot」を打ち出した。メールやTeams、文書を見渡し、同僚のように呼びかけて使う設計とされる。社員が毎日使う仕事環境そのものが足場である。
米サービスナウは「サービスデスク/ワークフロー型」。IT、人事、調達など部門をまたぐ申請や問い合わせの流れを握る。5月の発表では、業務ごとに役割を絞ったAI「AI Specialists」を主要部門へ広げるとした。10月1日に公表したFlowは、TeamsやSlackでの会話だけでIT依頼を処理するという。
マネーフォワードは「専門職型」だ。4月に発表したマネーフォワード AI Coworkは、請求書発行や支払依頼、入金消込、給与計算などをAIが自律的に進めるという。そしてPKSHAは「社内業務実行型」として、問い合わせや依頼、催促といった日本企業の社内業務に入り込む。
見落とされがちなのが、各社のAIがどの段階にあるかだ。マイクロソフトのAutopilotは、限られた企業向けのプレビューから始まった。サービスナウのFlowも限定プレビューで、一般提供は北米と欧州などで2026年10~12月期とされ、日本での時期は示されていない。マネーフォワードのAI Coworkも、4月の発表時点では7月からの提供予定とし、先行受付を始めた段階だった。
これに対し、PKSHAの依頼管理はすでに約1万人の日常業務で実運用に入った。もちろん、PKSHAのAI技術が世界の大手より優れているという意味ではない。それでも、大手が「仕事をするAI」を競って発表する中、日本企業の1万人規模の現場で動き始めた事実は重い。では、売上規模で桁違いの大手を前に、PKSHAのような企業はなぜ戦えるのか。そして「AI社員」が本当に奪い合っているものは何なのか。 【次ページ】【4社決算】巨大MicrosoftにPKSHAが挑める理由
AI・生成AIのおすすめコンテンツ
AI・生成AIの関連コンテンツ
PR
PR
PR