- 2009/10/26 掲載
【榎本秋氏インタビュー】戦国時代の組織作りに学ぶべき点
――昨今の「戦国ブーム」の原因は何だとお考えになりますか?
榎本氏■元々、NHKの大河ドラマや年末年始の戦国武将を主人公にしたドラマなどを見てもわかりますように、戦国時代への関心や需要は存在していました。なので、急に戦国ブームになったかというと、疑問に思ってしまいます。
引退した団塊の世代の読書時間が増え、以前よりもさらに戦国時代に関係するコンテンツに親しむようになったとか、従来から戦国時代が好きだった層の存在は変わらず大きいです。むしろ、今の戦国ブームは、「歴女」と呼ばれる歴史好きの女性層が、新しく参入してきたことで拡大したという言い方が正しいかもしれません。つまりは、歴女がブームを加速したという言い方がふさわしいのではないでしょうか。
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『10大戦国大名の実力 「家」から読み解くその真価』 |
榎本氏■戦国時代というと、カリスマ的な戦国大名がクローズアップされがちです。でも、彼らは突発的に現れたわけではなく、戦国大名の家という集団があり、そのカリスマ的な戦国大名の前後にも統率者(リーダー)がいたわけです。そういった「家」の総体を捉えてみることで、また新たに見えてくるものもあるのではないかと考えて本書を執筆いたしました。
また一方で、戦国時代に少し関心を持ち始めたような人でもわかりにくくはならないように心がけて書いたつもりです。入門書として読んでいただける人がいたら、とてもうれしいですね。
――「家」の盛衰から現代の組織が学べるのはどのような点でしょうか?
榎本氏■リーダーの資質やそのリーダーを支える経営陣、下部組織のあり方など、現代の企業にも通じる多くの問題点は戦国時代にも共通しています。戦国時代の大名家と現在の企業グループは、競争のかたちが変わっただけで本質は似ている部分も多々あると私は考えています。だから私は、戦国時代の「家」の成功と失敗を見ていくことによって、歴史に学ぶことができるのではないかと考えています。
たとえば、巨大化した組織は硬直化しやすいので警戒が必要なことや、複数のリーダーが組織を引っ張ると混乱が生じる点、カリスマが牽引する組織はきちんと後継者の育成を行わないとまずいことなどなど、どれも戦国時代でも現代でも共通しているところだと思います。
――今回の『10大戦国大名の実力』を執筆なさっていて、榎本さんが気になった「家」はありますか?
榎本氏■どの家も個性的で魅力があるのですけど、この本を書くために色々と調べているなかで、改めて気になったのは、北条家と佐竹家、そして伊達家です。
小田原征伐で歴史の表舞台から消えてはしまいましたが、北条家による関東支配の100年は大変興味深いものがあります。北条家の盛衰に関しては、築き上げた組織力もイノベーションをしていかないと、時代遅れになってしまう可能性もありえることがよくわかります。
逆にその関東の地で、しぶとく動乱の中を立ち回り、幕末まで家を保った佐竹家も北条家とは対照的な面が多くて、調べていて面白かったです。
そしてなにより、代々優秀な当主を輩出した伊達家の歴史は実にディープでした。伊達政宗というカリスマのバックボーンも含めて、「家」を分析するとさまざまなことがよくわかるものです。
――現在、ご関心を持っているテーマをお教えください。
榎本氏■有名な戦国大名を輩出した10の「家」を本書では論じました。それ以外にも、有名戦国大名の父親について掘り下げることには関心がありますね。あとは、名門の家柄の大名家がその後どうなっていったかなども興味あります。それらもまたどこかでお届けできればと思っています。
●榎本秋(えのもと・あき)
1977年、東京都生まれ。
Webプランニングやゲーム企画に携わった後、書店員などを経て、現在は著述業。
歴史からライトノベルまで幅広い領域にて執筆活動を展開している。
著書に『ライトノベル文学論』(NTT出版)、『戦国軍師入門』(幻冬舎新書)、『ライトノベルを書こう!』 (宝島SUGOI文庫)などがある。
榎本秋webサイト
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