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- 2010/03/18 掲載
“原価タダ”のバーチャルグッズビジネス興隆の理由を考える【○○はビジネスになるか(8)】
Facebookで流行のFarmVilleを手がけるZynga(ジンガ)
1年で2倍に成長した米国バーチャルグッズ市場
バーチャルグッズは、オンラインゲームやバーチャルワールドの中でやりとりされる仮想のアイテムだ。古くはオンラインゲームのアイテムにはじまり、アバターや仮想通貨、アクセサリーなど、原則、その世界の中でしか利用できない。純然たるデジタルコピーだから、一度作って(デザインして)しまえば、製造原価はゼロで無限に供給できる。変動費の少ないビジネスという意味では、ソフトウェアと同じで、それ自体は決して目新しい点とは言えない。しかし、ソーシャルゲーム関連の調査を手がける米Inside Network(インサイドネットワーク)によると、米国で2009年にバーチャルグッズに費やされた額は10億ドルで、前年の2倍に急増した。2010年にはさらに前年比6割増の16億ドルになると見込まれるという。1年で2倍という成長率は、この不況下で驚くべき数字だろう(不況による巣ごもりのせいかもしれないが)。現在、オンラインゲームの多くは、プレーそのものを無料としており、バーチャルグッズの販売で稼ぐものが主流となりつつある。
またバーチャルグッズ市場は実は、米国よりもアジアが本場だ。昨年10月にサンフランシスコで開かれたバーチャルグッズ関連の会議「Virtual Goods Summit」で、ネットビジネスコンサルタント「+8*(プラス・エイト・スター)」のベンジャミン・ジョフCEOが行った解説によると、アジアのバーチャルグッズ市場規模は、すでに2008年で50億ドルに達しており、2009年には70億ドル規模になる見込みという。これは米国の7倍にあたる。
この数字はPCと携帯電話を合わせた規模で、たとえば日本の「アメーバピグ」や「ニコッとタウン」、韓国の「メイプルストーリー」、また携帯上の「モバゲータウン」や「Gree」といったサービスが代表だ。地域別では、とくに中国の成長が著しく、その規模は50億ドルにのぼるという。
なぜ人々はお金を払ってまで、無限にコピーできるデジタルデータを購入しようとするのだろうか。バーギャルグッズはソフトウェアと違い、その世界の中だけでしか利用できず、単体では意味を持たないものだ。それをひもとくため、世界最大規模のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「Facebook(フェースブック)」上で人気のソーシャルゲーム「FarmVille」の例でみてみよう。
農場経営ゲーム「FarmVille」
ゲームの進行は、農作業をしてバーチャル通貨を貯め、同時に経験値を獲得してゆくのが基本。経験値が上がるほど、扱える作物の種類も増えてゆく。バーチャル通貨には「コイン」と「キャッシュ」の2種類があり、作物を売って手に入れるほかに、クレジットカードなどで直接買ったり、アフィリエイト広告などのアンケートやクイズに答えてもらうこともできる。
開発した米Zynga(ジンガ)は、サンフランシスコに本社を置くソーシャルゲームのデベロッパーで、設立は2007年。「ジンガのゲームは、プレーヤーに、自己表現と友人との深い社会的なつながりを形づくるためのプラットフォームを提供する」とうたっている。
同社は3月現在、フェースブック上で約40のゲームを運営しているが、そのなかでもFarmVilleは月間ユーザー数8000万人超とケタ外れの人気だ。フェースブック上でも2位に2倍近い差をつけて圧倒的なトップの座にある。では、なぜFarmVilleは、これほどの人気を獲得できたのだろう。
>>次ページ バーチャルグッズにお金を払う仕掛け
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