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  • 2011/05/26 掲載

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクのトップが語った3社3様のモバイル戦略

スマートフォン普及によるデータ増大にどう備えるか

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5月25日から27日にわたって、東京ビッグサイトで「ワイヤレスジャパン2011」が開催されている。初日となる25日は、総務省 総合通信基盤局長 桜井俊氏、NTTドコモ 代表取締役社長 山田隆持氏、KDDI 代表取締役社長 田中孝司氏、ソフトバンクモバイル 取締役副社長 松本 徹三氏らが各社のビジョンを発表した。モバイルを核とした「総合サービス企業」を目指すドコモ、3M戦略で「個人」から「世帯」へと焦点を変えるKDDI、中国以外のアジア地域でも投資を進めるソフトバンクと、3社3様の戦略が浮かび上がった。
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総務省
総合通信基盤局長
桜井俊氏
 冒頭登壇した総務省 総合通信基盤局長 桜井俊氏は、今や携帯番号が1億8000万を超え、090と080の番号が不足しつつある現状を報告。

 また、携帯電話の利用拡大に伴う通信トラフィックの増大が最大の問題だとの認識を示し、周波数問題の早期解決にはかり、2015年までに300MHz幅の帯域を確保していく方針を改めて確認した。

 現状、ソフトバンクなどが利用を希望している700MHzと900MHz帯は、早期に利用できるよう移行費用を携帯電話会社に負担してもらうかどうかの協議を続けていくという。

 また、震災の経験を踏まえて、災害に強いインフラとはどうあるべきか、インターネットを活用した情報収集・電圧はどうあるべきか、輻輳(ふくそう)や災害に強いネットワーク網の構築が急務だと語った。

モバイルを核とした「総合サービス企業」を目指すドコモ

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NTTドコモ
代表取締役社長
山田隆持氏
 次にNTTドコモ 代表取締役社長 山田隆持氏が「新たな成長に向けたドコモの取り組み」と題する講演に登壇。

 最初に今回の地震での取り組みを説明するとともに、大きく3つの新たな災害対策への取り組みを説明した。

 1つめは重要エリアにおける通信の確保。耐震性に優れたビルで、360度全方位カバーできる伝送装置によって、半径7キロを確保できる「大ゾーン基地局の設置」を表明。全国に100箇所設置し、有事の際に利用できるようにするという。また、都道府県庁、市町村役場などの通信を確保するため、全国約1900箇所で基地局の無停電化、バッテリーの24時間化を進めるとした。

 2つめが被災エリアへの迅速な対応。衛星携帯電話3000台の即時提供などを実施する。

 3つめが災害時におけるユーザーの利便性向上。東日本大震災のとき、音声の通信規制は8割を超えたが、「メールは結構つながった」という。当日の夜の20時までは30%ぐらいの規制をかけたが、それ以降は規制なしで済んだと説明。メールの通信手段としての有効性を訴えた。またメールを使いこなせない高齢者向けに音声ファイルをIP網で転送するサービスを2011年度中に提供していくと語った。

 次に、NTTドコモの今年の戦略として「変革とチャレンジ」をテーマに掲げると説明。

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ドコモの取り組みの全体像

 このうち、「チャレンジ」の筆頭に掲げたのがスマートフォン推進だ。2011年度夏モデルではスマートフォン9機種を一気に投入。販売目標を600万台に掲げており、2012年はスマートフォンが標準機を逆転するとした。また、端末の多様化に合わせて、6月1日には月々サポートセット割を開始、タブレット端末など2台目端末は料金を割り引くサービスを投入すると報告した。

 こうした端末の強化に伴い、スマートフォン向けサービスも拡充。従来からスマートフォン向けにも提供しているサービスに加え、2011年夏にはiチャネル、メロディコール、Gガイド番組表を、2011年冬にはiコンシェル、コンテンツの課金・認証、マイメニューやエリアメールといった従来向けサービスをスマートフォンに対応させる。そのほか、20011年中にdocomo Palette UI、docomo Connected Homeといったドコモならではの取り組みを充実させていくという。

 その他、スマートフォン関連サービスで特に注目として山田氏が挙げたのが「通訳電話サービス」。これは、日本語で話した内容ネットワーククラウド上で翻訳し、また相手の話した内容を日本語にしてくれるというサービス。携帯でやり取りされる音声を録音し、その音声を文字化、さらにそれを翻訳した上で、それをまた音声としてサービス提供する。「スマートフォンでは端末上で翻訳を行えるアプリもあるが、このサービスを使えば、通話している時にも翻訳できる」という。通常これらの処理は高負荷となるが、クラウド上のサーバを使うことで、端末に依存せず、スムーズに実行できるという。実際のデモではレストランの予約や急病の子供病院予約などを翻訳できる様子を紹介した。

 チャレンジの2つめに挙げたのが、増大するトラフィックへの対応だ。同社では3.9GのLTEサービスである「Xi(クロッシィ)」を投入しており、既に提供を開始しているUSB型通信カードに加え、6~8月にはモバイルWi-Fiルータを、2011年秋にはXi対応のタブレットを、2011年春にはXi対応のスマートフォンを順次投入するロードマップを説明。2011年に100万、2014年には1500万契約の加入者目標を掲げ、3年間で3000億円の設備投資を計画していると語った。

 また、2015年頃には同社が4Gと位置付けるピークスループット1Gbpsを実現するLTE-Advancedが登場。同サービスのポイントとして、現在進めるLTEサービスとの互換性の高さを強調した。すなわち、LTE-Advancedでは、LTE端末も同サービス内で動作し、スムーズなマイグレーションを実現できるということ。実証実験では屋外環境で下り600Mbps、上り200Mbpsの伝送速度を実現し、2015年までに開発を完了する見込みだという。

 チャレンジの3つめに挙げたのが、新成長分野への取り組みだ。これはサービスのパーソナル化、融合サービス、ソーシャルサポートサービスなどのことで、現状1,000億円程度の売り上げ規模を、2012年までに3,000億円に成長させると表明した。具体的には、「iコンシェルのスマートフォン対応」、日産リーフとともに実施した「ドコモ ドライブネット」、5月27日から開始する「ドコモケータイ送金」などを挙げた。

 特に金融・決済事業は大幅に強化する見込みで、ドコモケータイ送金ではドコモ自身が新たに「資金移動業者(資金決済法)」となって、送金事業へ本格参入する。これにより、ドコモの指定口座から20万円まで直接送金できるため、消費者同士の小口現金のやり取りの利便性が大幅に高くなると説明した。また、現状のおサイフケータイをFeliCaのみから、2012年にはTypeA/Bサービスを含めたNFC無線チップへと移行するとともに、さらに将来にはSIMにFeliCa、Type A/Bを搭載したSIMカード方式を実用化し、世界各国で用いられるプラットフォームを目指すとした。

 そのほか、環境・エコ事業について説明。全国9000局の基地局にて、花粉、気象、落雷、紫外線などを測定できる環境センサーネットワークを設置。これをライブ情報として配信していく。また、太陽電池や燃料電池といった再生可能エネルギー発電機と、ピーク電力を削減して終日バックアップ可能な蓄電池を備えた「グリーン基地局構想」を現在開発中であることを新たに発表した。これにより、「災害対策」と「環境対策」を兼ねていくという。

 また、利用者のプライバシー情報を除いた位置データと属性データから、ペタマイニング技術を使い、公共向けの新しい統計情報を作成する「モバイル空間統計」への取り組みの進捗を説明。地震によって発生した帰宅困難者を正確に把握して防災計画に役立てるとともに、市街地からの公共交通サービス需要の把握といったまちづくりに既に役立てていると説明した。

 最後に、グローバル展開の推進として、タタグループとともに展開しているインドTTSL/TTMLで、マーケットシェア11%、8914万契約に加入者数に到達していることを説明。今後はインドで3Gサービスの拡大やネットワーク拡充、付加価値サービスを提供することでさらなる成長を目指していくとした。

 最後に総括として山田氏は、NTTドコモは「モバイルを核とした総合サービス企業へ進化」していくと強調。2020年へのビジョンとして「Harmonize(国や地域、世代を超えた社会への貢献)」「Evolution(サービス・ネットワークの進化)」「Advance(サービス融合による産業の発展)」「Relate(つながりによる喜びの創出)」「Trust(安心・安全で心地よいくらしの支援)」のそれぞれの頭文字を取って、スマートイノベーションへの挑戦「HEART」を推進していくとして締めくくった。

【次ページ】3M戦略で「個人」から「世帯」へと焦点を変えるKDDI

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