IDC Japanは11日、国内クライアント仮想化市場の動向について、先進的なユーザー企業6社への調査を実施し、その導入事例を分析して結果を発表した。調査によると、導入に成功した企業は「導入に際する障壁が特になかった」としており、導入プロセスは以前より滞りなく進む傾向にあったという。

　本調査によれば、定量的/定性的な導入効果を試算している点も共通要因として挙げられるという。さらに国内を取り巻く経済環境など外的要因の影響で、Private DaaSやITベンダーのデータセンターの利用など「ITを利用する」サービス型の需要も増加傾向にあるとした。

　産業分野別にみると、導入率の高い「金融」「情報サービス」「自治体」「大学」「医療」での先進的事例が多く見られた。

　中でもセキュリティ対策を重視する銀行、生命保険、損害保険など金融での導入が進んでおり、同業種だけでなく他業種に対しても影響力の高い規範的事例となった。

　シンクライアントおよびプレゼンテーション仮想化は、主に一般企業のオフィスで使用され、それは企業の汎用業務、事務などで活用される、いわゆる定型業務向けが主流だった。

　一方、VDI（Virtual Desktop Infrastructure：デスクトップ仮想化）、DaaS（Desktop as a Service）、モバイル仮想化など仮想化技術の進化とそれに付随するネットワークの進化、およびスマートデバイスの出現によって、従来のオフィスで業務に加え、銀行の勘定系システム、小売の流通在庫系システムなどの基幹業務あるいは病院や工場など現場での活用など、その適用領域が拡大している。

　先進的なユーザー企業は生産性を向上させるために、積極的にITを経営に取り込んでいる。仮想化技術は多くの製品、サービス、ソリューションなどに取り込まれており、特にモバイルデバイスを業務に取り込むための技術として期待されている。こうした理由から、モバイル仮想化も今年から拡大基調に入ると、IDC Japanでは指摘している。

　IDC JapanのPC、携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの渋谷 寛氏は、クライアント仮想化技術について次のように述べている。

「クライアント仮想化技術は、クライアントシステムをサーバーやデータセンター等のインフラへ移行するパラダイムシフトである。多くの先進的な導入事例が示すように、もはや一部のユーザーにのみ適用可能な技術ではなく、汎用的技術になりつつある。」


　今回の発表はIDCが発行した「2012年 国内クライアント仮想化市場 ユーザー事例分析調査」（J12170105）にその詳細が報告されている。