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  • 2015/11/05 掲載

組織と個人のパフォーマンスの問題は「成績中位の人」に着目せよ

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人とパフォーマンスという問題を考えた時に、それを個人に還元して考えるべきなのか、環境に還元して考えるべきなのか、という議論がある。そもそもパフォーマンスとは、個人が有する特徴と環境の相互作用の結果であり、一概にどちらのせいとは言えないものであるが、集団とは「極めてパフォーマンスが高い人」「中位の人」「全然パフォーマンスがあがらない人」という3つのグループに分けて考えることで、組織と個人、双方がとるべき戦略が見えてくる。

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

予定通りに進まないプロジェクトを“前に”進めるための理論「プロジェクト工学」提唱者。HRビジネス向けSaaSのカスタマーサクセスに取り組むかたわら、オピニオン発信、ワークショップ、セミナー等の活動を精力的に行っている。大小あわせて100を超えるプロジェクトの経験を踏まえつつ、設計学、軍事学、認知科学、マネジメント理論などさまざまな学問領域を参照し、研鑽を積んでいる。自らに課しているミッションは「世界で一番わかりやすくて、実際に使えるプロジェクト推進フレームワーク」を構築すること。 1982年大阪府生まれ。2006年東京大学工学部システム創成学科卒。最新著書「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」が好評発売中。 プロフィール:https://peraichi.com/landing_pages/view/yoheigoto

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パフォーマンスがあがらない責任は、個人の側にある?

 どんな集団にも、パフォーマンスが高い人と、そうでない人がいる。

 その集団に属する全ての個人のパフォーマンスを向上させたいということは、その集団にとってもその個人にとっても、共通の願いであるはずだ。企業であれば、それが収益に直結することであり、個人の側からしても、もちろん報酬に関係する。それ以上に、自分が属するグループのなかで、何らかの役に立っているという実感は、生きる上で必要な自尊心、自己有用感を養うための栄養源とも言える感覚である。

 その人がどうしてパフォーマンスがあがるのか、またはそうでないのか、様々な分野で様々な議論、研究がなされてきた。

 ハイパフォーマーの要因を分析するにあたっては、その人の能力に着目するのが最もオーソドックスなアプローチであろう。その職場が知的労働に属する場合であれば、専門知識に加えて、論理的思考力の正確性や深さ、瞬発力、あるいは持久力が問われる。

 そして、これらの能力は彼らが先天的に持っているものなのか、後天的に育成可能なものなのかということは極めて重要なポイントだ。これが育成可能なものであれば、一定の意図のもとでマネジメントすることが可能な対象ということになる。

 しかしよく考えると、アニメーターやバイオリニストのような突出した先天的才能や、幼少期からの訓練が必須な技能が一般的なビジネスパーソンに求められるということはない。多くの人が一定のトレーニングによって公道で自動車を運転することができるようになるのと同じで、一般的なビジネスシーンでは、通常のコミュニケーションができればある程度のパフォーマンスをあげることができるようになるのである。

 むしろ日常的に使用される言葉で、相手に言われたことの真意をつかむことができ、約束を守ることができる、といった「人として相手を信頼して仕事を一緒に進めることができるための、最低限の振る舞い」である。

 コミュニケーション能力という言葉は、今日の採用活動における最強のキーワードとして長らく君臨している。その言葉に、音楽の才能のような特殊なものというニュアンスはこめられていないが、しかし現場の実感として、これは「持っている人は持っているし、持っていない人はどうしたって育成できない」という、ある種の暗黙の了解が存在する。

パフォーマンス向上の要因は組織の側にもある

 一方で、コミュニケーション能力至上主義に対抗する考え方として、動機付け(モチベーション)の問題がある。コミュニケーション能力だけでなく、どんなに才能や技能があったとしても、その人自身が高いパフォーマンスを発揮しようと思わなければ、いつまで待ってもそれが発現されることはない。金銭的な報酬だけでなく、自己実現欲求、非承認欲求、モチベーションの源泉は様々あるわけだが、そうしたものが発現される環境が整っていなければ、パフォーマンスなどあがるわけがない。

 すなわち、その人のパフォーマンスがあがるかどうかということを、「環境」を起点として考える、ということである。有名な経営学者の言葉に、「組織は戦略に従う」という言葉がある。実現すべき戦略目標があったとき、それを個々人が実行しやすくするための最適な組織構造があるはずである、という考え方である。

 組織の設計だけでなく、組織文化も大きな要因である。自由闊達で、細かいルールにこだわらない文化に馴染みやすい人もいれば、全てがきっちりとルール化されている方が動きやすいという人もいる。この相性が悪ければ、どうしたってパフォーマンスはあがらない。単純な話、上司と部下の人格的な相性が悪いというだけで、本来発揮できるはずのパフォーマンスが抑圧されてしまう、ということもよくある話だ。

 つまり、パフォーマンスとは個人の側から自主的に発現するものではなく、それを可能にする環境があって初めて発揮されるのである、ということだ。このような切り口で考えると、パフォーマンスがあがらないのは、組織の側に問題があるのではないか、ということになる。

 こうして見てくると、人とパフォーマンスという問題を考えた時に、それを個人に還元して考えるべきなのか、環境に還元して考えるべきなのか、どちらにも一定の分があるように思える。

 実際のところ、双方に一定の分があるのが現実的な見解というものである。そもそもパフォーマンスとは、個人が有する特徴と環境の相互作用の結果であり、一概にどちらのせいとは言えないものである。

 しかし、そう言ってしまうと、穏当であるが、何の教訓も引き出せない。それどころか、こうした言葉で片付けてしまうのは、重要なポイントを見逃すことに繋がってしまう。

【次ページ】パフォーマンスの問題は「中位の人」に着目せよ

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