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  • 2023/03/23 掲載

DX基盤構築で「購買金額2.7倍」顧客像を解明、JFRがデータ分析で成果を出せたワケ

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大丸松坂屋百貨店、パルコを傘下に持つJ.フロントリテイリング(JFR)では、「リアル×デジタル戦略」を掲げ、データに基づく経営判断、新規ビジネスの創出を目指している。その足掛かりとして、百貨店、ショッピングセンター(パルコ)それぞれの顧客データを集約したグループ統合データ基盤を構築した。2022年3月に、パルコからJFRへ異動し、グループデジタル統括部長に就任した林直孝氏に、取り組みの背景となる戦略と、データから見えてきた次なる打ち手について聞いた。

聞き手、構成:編集部 山田 竜司 執筆:畑邊康浩

聞き手、構成:編集部 山田 竜司 執筆:畑邊康浩

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J.フロントリテイリング
グループデジタル統括部長
林直孝氏

「リアル×デジタル戦略」の実行をデータ・デジタルで支援

 J.フロントリテイリング(以下、JFR)は、大丸、松坂屋などの百貨店事業、パルコを中心とするショッピングセンター(SC)事業のほか、決済・金融事業、不動産事業の拡大も視野に入れて事業展開しています。

 現行の3カ年(2021年~2023年度)の中期経営計画では、「リアル×デジタル戦略」「プライムライフ戦略」「デベロッパー戦略」という3つの重点戦略を掲げました。その中で、デジタルが主に関わってくるのは「リアル×デジタル戦略」です。我々のDXを語る上で欠かせないこの戦略をまずは解説したいと思います。

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3つの重点戦略
(出典:J.フロントリテイリング)

 発表(2021年4月)は、コロナの影響で百貨店事業やSC事業で多くの店舗がおよそ1か月に渡る休業を余儀なくされ、お客さまとの接点がリアルの店では作れなかった時期から1年が経過したタイミングでした。

 そのため、「この先はリアルの強みを発揮しながらデジタルのタッチポイントを組み合わせて新しい個別接点を作っていこう」という意思が「リアル×デジタル戦略」には込められています。ただ、これを実行するのは百貨店事業やSC事業の各事業会社ですので、JFR本社のグループデジタル統括部は、それらの動きをサポートする立ち位置です。

データを通じた「深い顧客理解」でよりよい体験を提供する

 一方で、JFR本社のグループデジタル戦略統括部が主体となり、「デジタル戦略コミッティ」が2021年の春に立ち上がっています。コミッティ(委員会)には百貨店事業とSC事業の各社と、JFR本社からメンバーが集まり、3つの分科会が運営されていました。議論が進み、2022年3月に次のフェーズに移るタイミングで、私が引き継いだ形です。

 着任直後の2022年4月には、コミッティの3つの分科会で話し合われたことをまとめる形で、3つの戦略骨子を策定しました。(1)カスタマーデータドリブン経営の実践、(2)デジタルテクノロジーを活用した新たなビジネスモデルの構築、(3)それらのアクションを支えるデジタル人材の育成、の3つです。

 1つ目の「カスタマーデータドリブン経営の実践」としてまず推進したのは、顧客データの連携です。当社グループの特徴として、全国の主要都市に、大丸あるいは松坂屋という百貨店とパルコが隣接して出店しているエリアが複数あります。両方の施設を使って買い物をしていただいている共通のお客さまも多くいらっしゃるわけです。

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カスタマーデータドリブン経営の実践
(出典:J.フロントリテイリング)

 私が着任する前からJFR本社では、顧客データ活用のためのグループ統合データ基盤の構築を進めていました。この基盤を「JCDP」と呼んでいますが、そこに百貨店やSCがそれぞれ持っているお客さまの購買にまつわる情報を統合しています。今後は、さらにJFRカードの情報を統合して、承諾いただいた方のデータを分析する予定です。

 目的は、事業会社ごとの顧客データでは分からなかった、百貨店とパルコの両方を利用されているお客さまを「JFR共通顧客」と定義し、その理解を深めることです。

百貨店とパルコの両方を利用する顧客はLTVが高い

 百貨店とパルコの両方を利用する「JFR共通顧客」が特定でき、百貨店のみ、パルコのみの利用顧客と比較できるようになったことで、その購買データからいろいろなことが分かってきました。

 1つは、JFR共通顧客は、百貨店とパルコの片方のみ利用する顧客と比べてLTV(顧客生涯価値)が高い傾向があるということです。ほかにも、年間購買額が片方のみご利用の顧客の単純合計よりもJFR共通顧客のほうが高く、特に外商顧客の購買額が顕著に高くなっています。また、JFR共通顧客のほうが来店頻度が高く、翌年度もご利用を継続頂ける維持率が高いということも読み取れました。

 この事実から、価値を創出するためには3つのアプローチが考えられます。

 1つは、JFR共通顧客のLTVをさらに高めて行くアプローチ。2つ目は、今は百貨店もしくはパルコの片方のみご利用のお客さまに、共通顧客になっていただくこと。3つ目は、新規顧客の獲得どちらの施設もご利用いただけていない方、あるいは使ってくださっているけれども顧客IDを持たず、データとして把握できていないお客さまに新規でご登録いただくというアプローチです。

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JFR共通顧客の位置付けとアプローチの考え方
(出典:J.フロントリテイリング)

 現在は、各事業会社のメンバーとプロジェクトを組んで、価値の創出に向けて進み始めたところです。プロジェクトチームの体制としては、現在約15名いるグループデジタル統括部から6名が参画し、さらに愛知の名古屋エリアと大阪の心斎橋エリアの各店舗の担当者も入っています。

 百貨店とパルコが隣接しているエリアが全国にいくつもある中で、この名古屋と心斎橋の2つのエリアを商圏と店舗の規模が大きい重点エリアと捉えているためです。週次でミーティングを行い、データを見ながら施策を考え、できるものから実行に移しています。 【次ページ】JFRがデータ分析ですぐに成果を出せたワケ

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