SaaS事業の支援やソフトウェア試用版の提供、膨大なアプリを抱える大学・企業での活用

　クラウドページングは、多くのWindowsアプリケーションを抱えている企業だけでなく、ソフトウェアベンダーにも新しい可能性を提供する。特に既存アプリケーションのSaaS化を検討しているソフトウェアベンダーには非常に魅力的だ。ラガッタ氏は次のように説明する。

「ソフトウェアベンダーのメリットは、開発したWindowsのネイティブアプリケーションのソースコードを書き換えることなく、すぐに SaaS事業を開始できることです。ライセンス管理とトラッキング機能も用意されているので、課金システムと連携してアプリケーションの利用時間に応じた従量課金も可能です。また、金融や医療などの厳しい規制にも対応できます。たとえば、企業向けに地理情報を提供する米国のHexagon社（http://www.hexagongeospatial.com/）は、クラウドページングを使ってWindowsアプリケーションのSaaS事業を開始しています」（ラガッタ氏）

　ソフトウェアベンダーにとっては、サイズの大きいアプリケーションの試用版を提供する際にも効果的だ。

「ある企業は、技術系アプリケーションの体験キャンペーンを定期的に実施していましたが、ファイルサイズが3GBと大きいため、アクセスしたユーザーの40％しか実際に試していませんでした。しかし、クラウドページングを導入したら、その数値が86％にまで上昇しました」（ラガッタ氏）

　多くのアプリケーションを抱える大学でもクラウドページングは実績をあげている。たとえば、ロンドンのある大学では、クラウドページングを導入することで、コンピュータルームを廃止することに成功した。

「その大学は、利用するアプリケーションの300GB～500GBのディスクイメージを、コンピュータルームにある複数のワークステーションで管理し、すべてのマシンにインストールしていました。これをクラウドページングでサーバからの配信に切り替え、アプリケーションポータルを構築。学生が自分のパソコンから必要なアプリケーションにアクセスできるようにしました。その結果、コンピュータルームを別の目的で利用できるようになり、ワークステーションのコスト、運用管理のコストも含めて、約20億円を削減できました」（ラガッタ氏）

VDIのアプリ実行環境の構築はもちろん、膨大なWindowsアプリの管理にも最適

　国内でクラウドページングを提供するのは、VDI専業ベンダーとして知られるアセンテックだ。そのねらいについて、同社 代表取締役社長 佐藤直浩氏は、次のように語る。

「長年、VDIのソリューションを提供してきましたが、お客さまのエンドポイントのバリエーションが増え、オフラインで業務をしたいというニーズが増えています。クラウドページングは、VDI上でアプリケーションの実行環境を構築できるだけでなく、オフラインの物理PCユーザーにとっても非常に有用な技術だと考えています」（佐藤氏）

　すでに欧米では、大学を中心に導入がすすんでいるクラウドページングだが、膨大なWindowsアプリケーションの管理に頭を悩ませているのは企業も同じだ。

「多くのエンタープライズのお客さまが、独自のアプリケーションを数千単位で抱え、その管理に頭を悩ませています。クラウドページングでアプリストアを構築すれば、アプリケーションの一元管理とサーバ上での一括更新、そして高速な起動が可能です。我々としては、ぜひ、クラウドページングを使った新しいアプリケーション管理の方法をご提案したいと考えています」（佐藤氏）

　もちろん、クラウドビジネスへの転換を図りたいソフトウェアベンダーにとっても、クラウドページングは注目の技術だ。佐藤氏は、「ISVと協業し、将来的にはアプリケーションのマーケットプレイスのようなものを構築できると思います。そのためには、ISVとのコラボレーション、アライアンスが重要になります」と語る。

　なお、クラウドページングはまだ進化途上の技術だ。Numecentでは、今後、アプリケーションポータルと他システムとの連携、タブレットやスマートフォンへのアプリケーション配信なども検討されている。

　いずれにしても、クラウドページングが、既存資産であるWindowsアプリケーションの管理やクラウド化において、注目の技術であることは間違いない。今後、クラウドページングを活用し、システムのクラウド化を一気にすすめる企業・組織も出てくるだろう。ぜひ、この画期的な技術に注目していただきたい。