- 2026/09/09 07:10 掲載
GAFAMも勝てない?AI最大の壁を40年前に見抜いた日本人、答えは“意外すぎる習慣”
AI・脳科学研究者。博士(工学)。株式会社オンギガンツ代表取締役。大和大学情報学部特任教授/AIメタバースラボ所長。
脳が環境をどのように認識し、判断するかを専門とし、特に、現場でデータが揃わず、想定外が起こるなかで判断を迫られる状況──「無限定環境」における認識技術を研究。
海洋領域ではソーナー画像を用いた水中脅威検知で国際学会 MAST、IEEE Oceansに登壇。宇宙分野でも軌道間輸送網の最適化検討プロジェクトに参画するなど、国家レベルの技術課題に取り組む。
一方で、日本を代表する多数企業の経営幹部向け研修を担当。AI を単なるツール導入ではなく、国家・産業構造の変化を踏まえた経営戦略として再設計する支援を行っている。
著書に『AI覇権戦争』『人工知能の哲学』(東海大学出版部)ほか多数。
前編はこちら(この記事は後編です)
生成AIに感じる「あの違和感」
前編では、AIが越えられない「たった1つの壁」を見ました。なぜ越えられないのか。想定外の事態に応じて手順を修正することはできても、何を目的とし、何を正解とするかという前提そのものを、自律的に問い直して設計し直すことは、まだできないからです。だから私たちは、最後の判断を手放せません。これこそが、筆者のいう「自己言及」の欠如です。人間なら難なく解けるパズルを主要AIが1%未満しか解けないのも、AIエージェントに仕事を任せきれず人間の確認や修正が要るのも、根本原因はここでした。
さらに厄介なのは、こうしたやりとりを続けるうちに、私たちの側にも変化が起きることです。以前は提案書の筋の良し悪しを肌で感じ取れていたのに、「まずAIにたたき台を」が当たり前になり、自分の考えを持つことすら手放してしまう──そんな人も少なくないはずです。
一方、優れた使い手が実践するのは、答えを鵜呑みにせず、浮かんだ違和感から自ら一次資料にあたり、新たな仮説を立ててAIに示し、さらによい答えを引き出すことです。いま、AIの能力を引き出すうえで、また、AIによって自分を失わないために、何より重要です。そして野中は、この所作を軽視することによる「盲点」についても指摘しました。
その盲点『失敗の本質』とは
野中氏らは、日本の第二次世界大戦を徹底分析し、『失敗の本質──日本軍の組織論的研究』にまとめました。敗因は、兵力でも装備でもなく、日露戦争での成功体験への固執だといいます(注2)。殺傷能力の高い兵器が主流になっても、白兵突撃の勝ちパターンを捨てられない──これは、AIの答えを「自己言及」なく鵜呑みにするのと同じ構造です。
本来「自己言及」できる人間の組織も、過去の成功体験で思考停止すれば、その力を失います。
皮肉にも、日本軍が失ったその力こそが、1980年代に世界を席巻した日本企業の強さの源泉でした。
野中氏は、現場が「暗黙知」をぶつけ磨き合うなかから新しい知が生まれるとする「知識創造理論」をまとめ、知が生まれる「場」という日本特有の概念を、その土台に据えました(注3)。
[表1]『失敗の本質』が暴いた敗因は、AIに頼り切る組織の弱点だった
| 『失敗の本質』が突き止めた 日本軍の敗因 |
AI任せの組織が 引き起こす失敗 |
「知識創造理論」による 解決手段 |
| 過去の成功体験への過剰適応 | AIは過去の最適解を返し、組織は疑わずくり返す | 場で、前提そのものを問い直す |
| 戦い方を内側から作り変えられない | AI最大の弱点「自己言及の欠如」と同じ構造 | 暗黙知と形式知を循環させ、自らを更新する |
| 空気の支配・異論の排除 | 「AIがそう言うから」で決まり誰も問いを立てない | 異質をぶつけ合う知的コンバット(ワイガヤ) |
| 現場の当事者性の欠如・傍観 | AIに任せ、人が自分の足で動かなくなる | 身体で感じ、試し、体得する |
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