- 会員限定
- 2017/04/27 掲載
パナソニックの米国スマートシティ計画「シティナウ」は何がスゴいのか?現地で見てきた
パナソニックは世界中で「スマートシティ」を展開
パナソニックが米コロラド州デンバーで、市と提携したスマートシティ計画「シティナウ」を進めている。日本で最初に開発し、評判となった藤沢市をモデルに、規模や展開するソリューションを拡大させたものを長期計画で実現させるのが目的だ。パナソニックによるスマートシティは藤沢だけではなく日本の綱島、兵庫県芦屋のパナホームスマートシティ、中国の大連ベストシティ、ロシアモスクワのスコルコボスマートシティ、マレーシアのイスカンダル、と世界中で展開されている。
しかしデンバーのものは州、市が全面的に協力、初期計画段階でも空港からRTD電車(RTD Light Rail)で一駅のところにあるペニャステーション付近の400エーカー(東京ドームおよそ35個分)という広大な土地での計画であり、同様の計画に興味を示す全米の都市からの注目を集めている。
パナソニックが参画する「ペニャステーション・ネクスト」に、デンバー市、コロラド州交通局、デンバー国際空港、電力会社エクセルエナジー、RTD(公共交通)が協力し、未来型都市の可能性を探る。
計画そのものは2016年の米大手家電見本市のCESで発表され、今年のCESでも進捗状況などの記者発表があった。今回、現地でパナソニック・エンタープライズ・ソリューションズ・カンパニー(PESCO)の上級副社長、ジャレット・ウェンツ氏に話を聞くことができた。
なぜデンバーだったのか
さらにコロラド大学など優秀な大学もいくつかあり、研究機関も招致しやすい。そしてウェンツ氏が強調したのはコロラド州、デンバー市が「米国に藤沢のようなスマートシティを」という計画に対し非常に協力的であり、いかなる法的な障壁も取り払う用意がある、と伝えたことにある。
デンバーは元々鉱山業などで栄えた町だが、現在ではそうした古いビジネスは衰退している。空港から市の中心部に向かうと、レンガ作りの鉄鋼をはじめとする製造業の跡地が見える。
しかしこうした古い産業の衰退とともに寂れる都市も多い中で、デンバーは貿易・交通・ユーティリティ、あるいはビジネスサービス、教育、レジャー観光産業などを着実に育て、都市としての若返りに成功した。まさにスマートシティ計画にはうってつけの場所と言える。
スマートシティ計画の5本の柱
デンバーのスマートシティ計画は現時点で基本的に5本の柱からなる。スマート・リビング、スマート・モビリティ、スマート・ビルディング、スマート・エネルギー、スマート・ストリートである。中心にデンバーのマイケル・ハンコック市長やウェンツ氏が参画する委員会があり、その下に5本の柱それぞれを担当する部門がある、というバーチャルの組織で、公民が協力しあって計画を進めて行く。
まず現時点での成果だが、2016年9月にパナソニックのPESCOオフィスが完成、場所はペニャステーションから徒歩5分の位置にある。
駅とオフィスの間にはペニャステーションを利用する人のための駐車場があるが、この駐車場を覆っているのがソーラーパネルだ。ここで発電された電力はPESCOオフィス裏手にあるパワーストレージユニットに蓄えられるが、これがデンバー初のマイクログリッド(複数の発電・蓄電設備をネットワーク化し、電力需要にあわせて最適制御するシステムのこと)となる。
ソーラーとバッテリーユニットを組み合わせたマイクログリッドは今後のスマート・ビルディングでも展開される。現在PESCOオフィスの屋上にもソーラーパネルの設置が進んでいる。
【次ページ】街灯や道路もスマート化、今夏からスマート・ハイウェイ計画も
関連コンテンツ
PR
PR
PR