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  • 2018/02/22 掲載

経産省が考える、人生100年時代の「キャリア」とカイシャの役割

連載:「東京五輪後」をどう生きるか

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デジタル化の進展や超少子高齢化などを背景に、日本の産業界は構造的な「人手不足」に直面している。今後、企業が持続的な成長をしていくに際して、付加価値創出の担い手となる「人材」を確保し、「経営戦略」=「人材戦略」として再認識することが喫緊の課題だ。経産省は人材力強化に向けての研究会を開催し、このほど報告書骨子案を示した。この内容をひも解き、「人生100年時代」に個人に求められるキャリアの考え方や、企業側の働く環境整備などの役割について考える。

執筆:国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

執筆:国際大学GLOCOM 客員研究員 林雅之

国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。現在、クラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。総務省 AIネットワーク社会推進会議(影響評価分科会)構成員 一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。

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人生100年時代にはキャリアをアップデートしていくことが重要だ
(© tumsasedgars – Fotolia)



経産省が定める「新・社会人基礎力(仮称)」とは

 経済産業省はこの1月、「我が国産業における人材力強化に向けた研究会(第2回)を開催」し、本研究会の報告書骨子案を示した。

 デジタル化の流れや超少子高齢化などを背景に、日本の産業界は構造的な「人手不足」に直面しており、今後、さらなる悪化が懸念されている。

 中小企業では、働き手が足りずに事業継続の断念を余儀なくされるという、いわゆる「人材不足倒産」が全国各地で相次いでいる状況だ。

 今後、企業が持続的な成長をしていくにあたって、付加価値創出の担い手となる「人材」を確保し、「経営戦略」=「人材戦略」として再認識し、喫緊の課題として取り組んでいくことが重要だ。

 デジタルテクノロジーの飛躍的・非連続的な進歩により、スキルの「賞味期限」は短期化している。そのため、時代に応じて随時アップデートできる人材が求められている。

 これに加え報告書では、あらゆる環境下においても自らの能力を最大限発揮し、人材としての基礎能力を兼ねそろえた「新・社会人基礎力(仮称)」を示している。キャリアやマインドセットなどを常に意識し、見直していくことの必要性について言及している。

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社会人としての基礎能力は随時アップデートすることが重要だ
(出典:経済産業省 我が国産業における人材力強化に向けた研究会 第2回)


「フルコミット型」から「プロジェクト型」の採用へ

 こういった状況を踏まえ、政府は人材力を強化し、社会全体として人材の最適活用の実現を目指す。本研究会の報告書骨子では、中小企業が“求める人材像”を分析し、「受け入れ主体(中小企業など)」「働き手(母集団形成)」「労働市場(仲介支援機能)」のそれぞれに関する課題と役割を整理していく。

 企業が求める中核人材カテゴリーは、「前に踏み出す力(アクション)」や「考え抜く力(シンキング)」「チームで働く力(チームワーク)」 といった項目が並ぶ。スキルや経験以上に、マインドセットが極めて重要であるとしている。

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中核人材に求められる3つのマインドセット
(出典:経済産業省 我が国産業における人材力強化に向けた研究会 第2回)


 また、仕事への取り組み姿勢や人間関係への関心の度合いなどを感情という視点から測定する指数EQ(Emotional Intelligence Quotient)への注目も高まっているという。

 EQとは具体的には、「問題処理能力」や「事務処理能力」に加え、「環境に適応する能力」「仕事に対するモチベーションをコントロールする力」「相手との壁を越えて多様性を活かす対話力」「民主的で参画的なコミュニティをつくる力」などである。知能を多面的に捉えた、より実質的な判断基準で、企業の採用や人材育成などの判断材料となっている。

 EQを身につけるには、座学のみでなく、日々の経験の中から学ぶことが重要であり、そのためには定期的に自らを見つめ直す「リフレクション」が重要だ。

 企業においては、こういった中核人材の継続的な確保が大きな経営課題だ。企業が中核人材を確保するには、フルコミットメント型の採用のみならず、プロジェクトベース(兼業・副業・出向など)での確保や、社内人材の育成といったさまざまな手法が必要となる。

 多くの企業が望む「フルコミット型」の採用は、一般的にリスクとコストが高い傾向にある。その一方で、「プロジェクト型」で人材を確保する場合、「人(個体)」単位ではなく「量(時間)」単位での人材の確保が可能となり、企業規模・成長性等の経営状況や経営課題などに応じて柔軟に採用できる点がメリットだ。

 プロジェクト型を、本業型(フル短期)、複業型(自営型複業)、副業型(雇用型複業)の3つに分類している。複業型(自営型複業)は、プロジェクトや専門分野をベースに、複数の企業などで同時に活用する形態だ。副業型(雇用型複業)は、本業を抱える人材が、平日夜や休日などを活用し、他企業などでプロジェクトを推進する形態となる。

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プロジェクト型の採用は、企業の経営課題に応じた柔軟な採用が可能となるメリットがある
(出典:経済産業省 我が国産業における人材力強化に向けた研究会 第2回)


【次ページ】人生100年時代に求められる「キャリア・オーナーシップ」

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