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  • 2026/03/16 掲載

なぜ邦画は“深み”を失った?手塚眞が語る…業界停滞を招いた“人材・収入”の大問題

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日本映画はなぜ停滞しているのか。1970年代の低迷にはじまり、テレビ局の参入、さらにインターネット時代による収益構造の変化──かつて黒澤明を目標に掲げた世代を経て、いま日本の実写映画は再び立ち上がることができるのか。庵野秀明や岩井俊二らに並ぶ、数少ない“実写とアニメを横断する”越境型クリエイターの1人であり、ヴェネツィア国際映画祭受賞監督でもある手塚眞氏は、日本映画の構造的課題と再生への道筋をどう見ているのか。巨匠たちの現場を知り、国際舞台も経験してきた手塚眞氏に、日本映画の現在地と未来について話を聞いた。
聞き手・執筆:エンタメ社会学者 中山 淳雄

エンタメ社会学者 中山 淳雄

東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでカナダ、マレーシアにてゲーム開発会社・アート会社を新規設立。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本コンテンツ(カードゲーム、アニメ、ゲーム、プロレス、音楽、イベント)の海外展開を担当する。早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、シンガポール南洋工科大学非常勤講師も歴任。2021年7月にエンタメの経済圏創出と再現性を追求する株式会社Re entertainmentを設立し、大学での研究と経営コンサルティングを行っている。『推しエコノミー「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(日経BP)、『オタク経済圏創世記』(日経BP)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書)など著書多数。

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ヴィジュアリスト手塚眞 氏に映画業界の状況について聞いた
※手塚治虫/手塚プロダクションの「塚」は、正しい表記は旧字体となります。

何が同じか? 庵野秀明・岩井俊二・手塚眞の共通点

──眞さんは 2000年代に入ると手塚治虫作品のアニメ監督も務めるようになりますね。

手塚眞(以下、手塚)氏:もともとは『ブラック・ジャック』を実写映画化しようと、長い間企画を進めていました。ただ、なかなか実現には至らなかった。そうした中で、読売テレビさんからアニメ化の話が持ち上がったんです。

 正直に言えば、「アニメは本望ではないのですが……」という気持ちもありました。それでもお引き受けして、結果的に『ブラック・ジャック』(2004~2006年放送、全63話)の監督を務めることになりました。

──アニメも実写も両方やっている映画監督というのは、どの程度いるものなのでしょうか?

手塚氏:これは結構珍しいと思いますよ。アニメと実写映画の両方やっている監督というのは数えるほどしかいませんね。

 たとえば、庵野秀明さん(1960年~、『新世紀エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』)、小中和哉さん(1963年~、『ウルトラシリーズ』と『アストロボーイ・鉄腕アトム』)、岩井俊二さん(1963年~、『Love Letter』と『花とアリス殺人事件』)、大友克洋さん(1954年~『AKIRA』と『蟲師』)など、思いつく範囲だと4~5人しかいないんじゃないでしょうか。父もあれだけなんでもやってきたけど、ついぞ実写映画は手掛けてこなかったですから。

 僕からすると「やれなくはない仕事」なんです。アニメがぜひやりたい、というよりは「家の仕事だからやっている」という感覚かもしれません。本当にやりたい仕事はもちろん実写映画の方ですね。

 映画だけは自分の中で大切に守りたい領域ですね。逆に言えば、軸がはっきりしているからこそ、それ以外の仕事には比較的フラットな気持ちで挑戦できているのだと思います。

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ヴィジュアリスト
手塚眞 氏
高校時代から映画制作を始める。長編映画や短編、実験映像、テレビ番組、アニメ、MV、CGなど幅広い映像作品を手がける“ヴィジュアリスト”。1985年に『星くず兄弟の伝説』で商業映画監督デビュー。1999年発表の『白痴』はヴェネチア国際映画祭などで高く評価される。主な作品に『ブラックキス』(2004年)、『ばるぼら』(2019年)ほか多数。

手塚治虫・手塚眞のクリエイターとしての“意外な共通点”

──父親である治虫さんとは、同じクリエイターとして、どのような会話されていたのでしょうか?

手塚氏:外から見たら「天才的で偉大な人」かもしれないけど、父としての治虫はその場にいるときには業界の先輩として、まるで仲間のような気持ちで接してくれていました。

 たとえば、高校時代に8mmの映画を作って賞をいただいたときは、ものすごく喜んでくれましたしね。もう眞はプロの映画監督になるんだな、と思ってくれていたのではないでしょうか。

──治虫さんとは同じ国際賞も受賞されていますよね。

手塚氏:映画『白痴』で、僕は1999年にヴェネツィア国際映画祭の賞をいただきました。そのとき、僕は38歳でした。

 実は父も、1966年に『ジャングル大帝』でヴェネツィア国際映画祭の賞を受賞しているのですが、そのときの年齢が同じ38歳だったんです。そこで何か数奇な運命を感じましたね。

大島渚・黒澤明ら“巨匠”に愛された…手塚眞のある才能

──マンガ・アニメの巨匠・手塚治虫さんの下で生まれ、映画の巨匠の大島監督・黒澤監督と仕事をしてきた眞さんは、「クリエイティブ活動の申し子」のようですね。

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