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  • 2018/04/09 掲載

”働き方改革疲れ”の企業へ、遠山正道氏らが「制度よりも事例を作れ」と提言

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「人生100年」と言われる昨今、働くことと生きることをどう捉え直していくべきか。一般社団法人at Will Work主催の「働き方を考えるカンファレンス2018」において、三菱商事の社内ベンチャーから独立し、数々のブランドをプロデュースする遠山 正道氏、「気づけば20年もリクルートで働いている」というリクルートスタッフィング社長の柏村 美生氏、ニューズピックス 副編集長の佐藤 留美氏の三人が熱く語った。

Miho Iizuka

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「"働く"の未来」と題したカンファレンスには、遠山 正道氏(写真中:スマイルズ 代表取締役社長)と柏村 美生氏(写真右:リクルートスタッフィング 代表取締役社長)が登壇。佐藤 留美氏(写真左:ニューズピックス 副編集長)がモデレーターを務めた

100年生きる時代、みんなが“人生”を考え始めた

 2000年に三菱商事初の社内ベンチャー企業、スマイルズを起ち上げ、食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo 」(スープストックトーキョー)やリサイクルの新しいかたちを提案する「PASS THE BATON」(パスザバトン)、 ネクタイ専門店「giraffe」(ジラフ)などを展開する遠山 正道氏。「人生100年」を意識したのは、実は最近のことだったという。

「2年くらい前、寺田倉庫の中野 善壽社長が“100歳まで生きなさい”っておっしゃってたのを聞いて、変わった人だなぁと思って(笑)。今、まさにそのライフシフトが起きているわけです。僕は社会人になって30年くらいですから、あと50年。100歳までには英検2級が取れるかなとか。これから生きがいとか見つけなきゃいけない。それを楽しみ!って思えるかどうか」(遠山氏)

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ポジティブな人もいれば、どうすればいいかシビアに考える人もいる。楽しみにできるか、途方に暮れるかで、この先の目論見はまったく違ってくる

「古巣(三菱商事)に呼ばれて講演会をしたときに、今の働き方と商事で働いていたころの違いを聞かれて、まぁ違うところだらけと言ってしまえばそうなんですが、たとえば僕は“人生”っていう言葉を使うようになった。サラリーマンをしていた当時は、個人の家族とか人生とかそんなの持ち込む隙間はなかったんですけれど、今はそれこそが個人にとってのモチベーションになっているし、会社にとっても強み。そこを生かさないでどこに生かすのっていう雰囲気はある」(遠山氏)

制度を変えるより、タイミングよく事例を作る

 事業内容と同じく、ユニークな働き方をする社員のトピックもよく取り上げられているスマイルズ。「社員がそのように個人の人生を考えることも、社内制度として推進しているのか」と、ニューズピックス 副編集長の佐藤 留美氏が尋ねた。

「制度っていうと、あるのかないのか……僕はどっちでもいいと思っているんです。たとえば、日本って本当に社内ベンチャーがない。知ってるのはリクルートとか博報堂くらいです。なぜできないのかというと、やる人は制度があろうがなかろうがやっていて、制度を作ってお膳立てしたからといって出てくるものじゃないんです。社内ベンチャー制度ができて募集されるタイミングと、ある種“人生の気づき”がピタッと重なるかっていうと、そういうわけにもいかないじゃないですか。”今だ”っていうタイミングで出てきてもらえればいいわけで、制度の流れに沿って出てくるとは限らないと思う」(遠山氏)

 制度にして導入すると10年でなくなってしまう、とリクルートスタッフィング 代表取締役社長の柏村 美生氏も違った側面から自身の経験や事業を通じて感じていることを述べた。

「まさに今、これまでの制度を変えなくてはいけないという“働き方改革”自体に疲れてらっしゃる方が多いなと感じてます。企業として人事制度を変えようというのは、5年、10年のタームでやらなくてはいけません。だから私は“制度より事例”だなって思います。試し打ちと言うと言葉としては悪いですが、こういうのいいな、こういうのやりたいな、ってパッと思い浮かんだときに実行して、事例にしていけたらいい」(柏村氏)

変わりゆく社会通念の過渡期に想うこと

 あくまでも民間企業に限った話にはなるが、正社員・契約社員・派遣社員・パート・アルバイトといった雇用形態も、定時や定休があって毎日決まったオフィスに通勤するスタイルも、変えようとしても事例がないから変われない。企業側が多くのリソースをマネジメントする上で、仕組みとして致し方ないこともある。

 雇用される側も、誰もがセルフマネジメントができて、専門性の高いスキルを持ち得るわけではない。普通の人が普通の暮らしをするために、企業が作った仕組みに乗っかることで恩恵を受けてきた面は多々ある。

 条件に合わせて通勤できるところに住み、子供を預け、趣味ややりたいことを諦め、希望ではない配属にも我慢し、どこかで折り合いをつけながら人生設計を行ってきた。個人のアイデンティティや生活の何かを犠牲にして成り立つワークスタイルが窮屈なのであれば、自分からも変わっていかなくてはいけない。選ばないと、選べなくなる。そんな雰囲気もある。

 柏村氏は、ワーキングマザーの働き方への課題に対し、専門性やスキルを活かして週2日から就業できる派遣サービスを新たに展開したところ、想定していなかった使われ方をして驚いたという。

「子育てする女性が得意なことを活かして、パフォーマンス高く働けるのではないか、個人のライフスタイルに合っているんじゃないかと思って始めたサービスなんですが、実際にはマイペースに働きたい10代の男性とか、大企業で働いてきたベテランの方が地域のボランティアと仕事を両立したいとか、いろいろな志望動機があることに驚かされました。たとえば、ゲーム事業を展開するベンチャー企業で週2日派遣で働きながら、個人ではシナリオライターをやっているという女性もいます。彼女の場合は、派遣での安定収入もそうですが、社会とコネクトする情報をアップデートしたいという希望もあったようです」(柏村氏)

 企業としては、出たり入ったりするリソースをマネジメントした前例がない、できる人がいない、コンプライアンス面でも不安がある。ただ、採用してみて職業人として生産性をきっちり出す働きぶりを見ると、社内での印象は変わっていくという。遠山氏は自社で起こったことを語る。

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時短勤務の使い方も、社員が気づいて事例になっていく。なぜそうするのか、理由がその人の人生に紐づいているか。条件として見るポイントはそこだけなのだという

「うちも制度ではないけれど、事例になったことはある。実家のクリーニング屋を継ぎたいと言っていた社員が、はじめは働くお母さんのために時短勤務を使って、空いた時間で学校へ通い始めたんです。そうしたら、今度は修行がしたいと。5年経ったら戻ってくるから、そのときはうちで事業を一緒にやりたいと。彼の場合は、人生の中でやりたいことの入り口とゴールが見えているんです。設計図を元にどう球を回していくかだけなので、そういう人は自力で進んでいけますよね」(遠山氏)

 こんな風に自分の未来設計図を描き、都度そのときの想いを胸に進む道が選択できることを、ただうらやましく思っていても仕方がない。それなりに培ってきた実績もあると自負するミドルキャリア勢に、今から「自立型」になってもらうには、どういう施策が望ましいのか?

【次ページ】“47人集団脱サラ”してもよい 失敗した物語を価値にする

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