• 2025/12/21 掲載

30分筋トレより「1回だけ腕立て伏せ」…心理学が示す“笑えるほど小さな一歩”の威力

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「毎日30分筋トレする」と決めても続かないのは、意志の弱さではなく、行動設計の問題である。行動科学の原則に基づけば、“笑えるほど小さな一歩”から始めることが習慣化への最短ルートだ。そこで、脳科学と行動心理学が裏付ける「動けない自分」を確実に変える3つの技術を『賢者病 考えすぎて動けないがなくなる本』を上梓した、読書インフルエンサーの土肥優扶馬氏が紹介する。これを使えば、インプットばかりで動けない状態から確実に抜け出せる。
執筆:読書インフルエンサー 土肥 優扶馬

読書インフルエンサー 土肥 優扶馬

大阪府出身。読書によって人生が変わった経験をもとに、SNSでの本の要約や学びの発信を開始。現在SNS総フォロワー数は20万人を超え、Instagram、TikTok、YouTube、Voicyなど複数のプラットフォームで発信を続けている。大阪教育大学大学院 教育実践力コース修了。現場での教育課題に対して、理論と実践を往復する探究的なアプローチを徹底的に実践。仮説を立て、授業を設計・実施し、結果を省察するというプロセスを繰り返し経験することで、目の前の子どもに合わせて変化し続ける教育者の在り方を学んだ。複数の大手書店とのコラボイベント登壇、「悩みが吹き飛ぶ激推し本フェア」を全国353店舗の書店で開催するなど、本と読者を直接つなげる機会を大切にしている。現在はSNS発信に加え、習慣化やマインド改善をテーマにした1on1コーチングも提供している。

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脳科学と行動心理学が裏付ける「動けない自分」を確実に変える3つの技術を紹介する
(Photo/Shutterstock.com)

「毎日30分筋トレ」は続かないが「とりあえず1回だけ腕立て伏せ」なら…

 ここでは、僕が実践してきた3つの小さな技術を紹介します。

 これらは精神論ではなく、心理学や行動科学の原則に基づいています。

 1つ目は「行動を最小単位にする」です。

 これは、心理学の「スモールステップの原則」に基づいた方法です。

 大きな目標を達成するには、いきなり高いハードルに挑むのではなく、達成しやすい小さな成功体験を積み重ねることが不可欠です。

 この考え方は、アメリカの行動心理学者バラス・スキナーによって提唱された「シェイピング(行動形成)」という理論に基づいています。

 スキナーは、望ましい行動を一気に実現しようとするのではなく、段階的に「できた」を積み重ねていくことで、複雑な行動も無理なく習得できることを示しました。

 これは教育や行動療法など多くの分野で応用されており、「小さな行動を成功させる→脳が達成感を得る→モチベーションが高まる→次の行動が取りやすくなる」という正のスパイラルが生まれるのです。

 また、ロンドン大学のフィリッパ・ラリーらによる習慣形成の研究でも、新しい行動を定着させるには「毎日やる」ことよりも、「無理なく続けられるほど小さく始める」ことが効果的であると報告されています。

 たとえば、「毎日30分筋トレする」よりも「とりあえず1回だけ腕立て伏せをする」から始めたほうが、継続率が高いのです。

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【画像付き記事全文はこちら】
「毎日30分筋トレ」より「とりあえず1回腕立て伏せ」から始めたほうが継続率は高い
(Photo/Shutterstock.com)

 大切なのは、「何をやるか」ではなく「続けられるかどうか」です。

 スタンフォード大学の行動デザイン研究者、BJ・フォッグが提唱する「Tiny Habits(小さな習慣)」というメソッドでも、モチベーションに頼らず、行動のハードルを極限まで下げることで、誰でも無理なく習慣を定着させることができるとされています。

 ここで言う「極限まで下げる」とは、「やるかやらないかを迷わない」ほど小さな行動にまで分解してしまうことを意味します。

 だからこそ、まずは笑えるくらい小さな行動から始めてみてください。

  • 読書なら「1ページ読む」
  • 運動なら「靴を履く」
  • 発信なら「PCの電源を入れる」「アプリのアイコンを見る」

 この小さな一歩が大きな力を持つ理由は、脳の報酬系の仕組みにあります。

 僕たちの脳内では、何か行動を起こして小さな達成感を得た瞬間、「側坐核(そくざかく)」という部位が活性化し、ドーパミンという神経伝達物質が分泌されます。

 ドーパミンは「快の予感」と「行動への動機づけ」を司つかさどる物質であり、ほんの小さな成功体験でも「もっとやりたい」「続けたい」という気持ちを生み出してくれるのです。

 つまり、たとえ1ページだけの読書や、靴を履くだけであっても、「できた」という感覚が脳にポジティブな刺激を与え、次の行動へのスイッチを押してくれる。

 そしてこの正のサイクルが繰り返されることで、行動はやがて習慣へと変わっていくのです。

 フォッグが「モチベーションに頼らず仕組みに頼れ」と語る背景には、こうした脳の反応を味方につける戦略があるのです。

 この小さな一歩が脳の報酬系を刺激し、「できた」という達成感を生み出し、次の行動への意欲をかき立てます。

 その一歩が、自分を変える流れのスイッチになります。 【次ページ】他人から「与えられた情報」より、自分で「生み出した情報」
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