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- 2018/06/20 掲載
「便利な道具も使い方次第」 AI、IoT、データサイエンスの第一人者が討論
ソラコム玉川憲氏、DataRobotシバタアキラ氏、ギリア清水亮氏
全社員がデータ分析できる環境を目指す
IoT、AI、ビッグデータといったテクノロジーによって、社会はどのように変わろうとしているのか。このほど都内で開催された「新経済サミット2018」では、「最先端スタートアップは社会にどう浸透しているのか ~IoT、BIGDATA、AIがもたらすStartUpから大企業の変革~」と題したパネルディスカッションが行われ、DataRobot Japanでチーフデータサイエンティストを務めるシバタ アキラ氏、ギリア代表取締役社長の清水 亮氏、ソラコム代表取締役社長の玉川 憲氏が登壇した。AI、IoTなどの先端テクノロジーは、ガートナーが提唱するいわゆる「ハイプ・サイクル」で示されるように、徐々に成熟度を高めながら、採用領域が増え、社会への適用が進む。モデレーターを務めたWiLの創始者であり同社CEOを務める伊佐山 元氏は、「今は先端技術が世界を飲み込む時代だ」と表現した。2013年にWiLを創業した伊佐山氏は、シリコンバレーと日本を中心に、ベンチャー企業の発掘と育成に注力している。
「知性を人工的・工学的に実現する取り組みとしての人工知能(AI)やロボット技術は、たとえば自動運転によって物流業界が大きく変わり、小売の分野では『Amazon GO』などのようにコンビニが無人化するなど、ヒトの省力化、効率化に劇的に寄与する可能性がある」(伊佐山氏)
セッション冒頭は、各登壇者がどのような技術を展開しているのか? なぜそれが社会にとって重要なのかが紹介された。
シバタ氏は、機械学習プラットフォーム「DataRobot(データロボット)」を手がけるDataRobot Japanでチーフデータサイエンティストを務める。AIを使ったデータ分析によるビジネス価値の創出が専門分野だ。
「データサイエンスの担い手は少ない。シリコンバレーではプログラミングスキルと数学・統計の知識、ビジネス課題の知識を備えたデータサイエンティストは、初任給が3000万円ともいわれるほどだ」(シバタ氏)
そこでシバタ氏が目標として掲げるのが、「LOB(事業部門)がAI活用を主導でき、AIによる課題解決を確実に実装可能な状態にすること」だ。DataRobotはマーケティングや営業、採用・人事など幅広い職種で利用でき、データサイエンスの専門知識がない“文系人材”でもボタン一つで分析モデルが構築できる平易なツールである。小売や製造、保険、金融、ヘルスケア、スポーツといった多様な業界で機械学習のビジネス導入(分析モデル構築)が進んでいるという。
ディープラーニングを電卓級のカンタンさに
清水氏は21歳より米マイクロソフトで上級エンジニアとした活動後、1999年、ドワンゴに参画。近年はディープラーニングを活用したAIの開発を専門に行い、2017年にギリアを設立した。清水氏がミッションとして掲げるのが「ディープラーニングをExcelが使えるくらいに簡単に、将来は電卓を使うくらい簡単に扱えるようにすること」だ。
「AIが人の仕事を奪うといわれるが、実際、人がやりたがらないような労働というのもあり、それはAIに代替してもらったほうがよい。AIが人の能力を拡張する方向で地道に課題解決に取り組んでいる」(清水氏)
たとえば、三次元情報解析では、ディープラーニングの画像認識技術を用い、3Dスキャンデータから、病変がガンかどうかの画像診断を行う。「これまでは、病変の一部を採って、顕微鏡で詳しく調べる病理診断を通じて診断が行われてきた。これには時間や手間がかかる。三次元情報解析により、診断が1時間程度に短縮することが可能になる」(清水氏)
玉川氏は、日本IBM基礎研究所を経て、AWS日本市場の立ち上げを技術統括として牽引。2015年にIoT通信プラットフォーム「SORACOM」を手がけるソラコムを創業した。「IoTの広がりは、インターネットの爆発的な普及と似ている」と玉川氏。容易に動画が共有できるYouTubeや、フェイスブックで20億人がつながる世界は、20年前には誰も想像できなかった。
ソラコムは2017年にKDDIグループの傘下に入り、顧客企業は9000社以上にまで拡大した。同社の「SORACOM Air」は、SIMカードをIoTデバイスに挿すだけで、従量課金で通信サービスが利用できる。「物流トラックの現在地の把握や、IoT自販機、踏切設備の遠隔監視などのユースケースがある」と玉川氏は語る。
さらに、2016年12月に米国、2017年2月には欧州でグローバルSIMを展開。ソースネクストのモバイル通訳デバイス「ポケトーク」のグローバル SIMに採用されたほか、米国の不動産テックのスタートアップ「OpenDoor」でも採用され、不動産売買時における物件の内覧を自動化した。
【次ページ】データから何を得るか「量」だけでなく「質」も大切
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