インド保険市場は2,800億ドルに成長する
世界的にインシュアテック投資は盛んだ。2019年第1四半期には、85件で総額14億2000万ドルがインシュアテックに投資されている。これで3四半期連続して10億ドル超を記録したことになる。
インドの保険市場は長い間、決まった事業モデルをすべての保険業者に適用させる考え方が主流だった。その一方で、アッコ、カバーフォックス、トフィー・インシュランス、ディジット・インシュランス、インシュア・ファーストなど、インシュアテックを掲げた新規参入業者が業界地図に変化を及ぼしてきている。
2020年にはインド保険市場は2,800億ドルに成長するといわれ、先端テクノロジーの活用が保険業界の将来の成長にとって鍵になると思われる。
しかし、大手の保険会社は、依然として紙ベースの書類に依存しており、顧客ニーズより従業員を優先する旧来型のソフトウェアを使って業務を行っている。だからこそ、意思決定が早くハイテクに長けたインシュアテックのスタートアップ企業にビジネス機会を浸食されるだろうと恐れを抱いている保険業者のトップは、世界的に見ても多い。
インシュアテック企業と既存保険企業はここが違う
インドを代表する保険会社といえば、これまではオリエンタル、ニュー・インディア・アシュアランス、ライフ・インシュランス・コーポレーション・オブ・インディア、イフコトキオ(東京海上ホールディングスの損保現地法人)、ICICIプルデンシャルといった企業だった。
中には、収益性を気にする必要のない巨大な国営企業も含まれている。こうした既存の保険会社と違い、インシュアテック企業は、顧客ニーズに敏感な上、リスクテイクに積極的で、かつイノベーティブな企業体質である。
インドのインシュアテックは未だ発展途上だが、すでにバリューチェーン破壊によってデジタル・ディストリビューションやカスタマー・エクスペリエンスの改善を実現している。
たとえば、ハイテクを活用したスタートアップの中には、オンデマンド型の小規模保険、モバイル端末での小型保険プラットフォーム、遠隔で保険金請求管理を行えるサービスを提供する企業もある。また、カスタマーサービス向上のチャットボットや農業保険の保険金請求確認のドローンを導入する業者もいる。
【次ページ】インドの保険市場が有望なワケ