国民の8割が健康保険に未加入のインド
インド政府がGDPの約1.25%を投じて対応しているにもかかわらず、健康保険はそれに見合った十分なものではない。医療上必要な出費は年間で家計の半分を占めるほどで、その結果、毎年5500万~6000万人前後の国民が貧困に陥っている。特に入院の負担が大きい。インドがイギリスから独立して70年が経とうというのに、国民の80%が正規の健康保険に加入していない状態だ。
しかし、モディ首相はこの難題に取り組み、困難な政策を実行に移して実績を上げつつある。インド政府肝いりの国家健康保護スキーム「アユシュマン・バラート」は、国民に対し質の高い健康保険を広範に保証しようとする政策だ。貧困層にも経済的負担を負わせることなく、健康保険の形でしっかりした金銭面での支援を提供するこの計画は、「モディケア」とも呼ばれている。
打開策「モディケア」とは
モディケアの加入人数は5億人に上る。これは、おおむねEUの人口に匹敵し、米国、カナダ、メキシコの人口の合計とほぼ同じだ。加入1世帯あたり毎年50万ルピー(約76万円)が中央政府と州政府によって支払われる。
対象とされる疾病は、がんや心臓疾患のような重篤なものも含め1354種を数える。民間の医療機関も政策に加わっており、現時点で1万3000を超える医療機関が加盟している。
50万ルピーの付保範囲は、入院前及び入院後にかかった費用に及ぶこととされている。既往の疾病も追加的に付保される。モディケアの詳細な情報は、14555をダイヤルするだけで得ることができる。共同サービスセンターに問い合わせてもよい。
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