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  • 2019/10/09 掲載

保険業界に異変、テスラだけではない、AI、DLTが市場を改変していくワケ

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保険業界は従来「保守的な傾向にある」といわれるが、その業態に変化が訪れている。テスラが自社製品ユーザー向けに保険を提供し始めたように、自動車関連企業の保険市場参入が、現実的になっている。一方、フィンテックに代表されるAI、IoT、DLT(分散型台帳技術)などの新たなテクノロジーが、5兆ドル規模といわれる保険業界の在り方を変えようとしている。

米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、米国の社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス在住経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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テスラの自動車保険が適用されるモデル3
(出典:テスラ)

テスラが自動車保険に参入、他社も続くか

 9月にテスラが独自の自動車保険をテスラ車の所有者に対し提供を始めた。とりあえずはカリフォルニア州内での限定サービスであり、対象車種もモデルS、X、3、ロードスターに限られているが、今後全米、そしてグローバルにサービスの提供が始まる可能性がある。

 自動車メーカーであるテスラがなぜ従来の保険会社よりも安価の保険サービスを提供できるのか。そこにはやはりデータの存在がある。

 テスラ車には自動運転を視野に入れたカメラ、センサーなどが初めから設定されている。つまりテスラにはドライバーの走行から得られる膨大なデータの蓄積がある。保険とは統計学ビジネスであり、データによって利益の得られる保険料設定が行われるが、テスラの場合、保険会社に頼ることなく独自のデータから割り出した適正価格を提供できる。

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インシュアテックのイノベーションマップ
(出典:StartUS Insights)

 これは今後ドライブレコーダ―や一部自動運転機能、GPSを含む車載エンターテイメントシステムなどを搭載した車を発売するすべての自動車メーカーにも同様のことがいえる。もちろんテスラの場合、テスラ車のボディがアルミ製のため修理代金が高く、一般の保険会社の算定が高いことに不満を持つオーナーのためのサービスという一面があり、すべての自動車メーカーが同様の保険提供サービスに乗り出すとは考えにくい。しかしデータがあり、それを適正に管理することで保険は特別な技術やノウハウがなくても参入できる分野になりつつある。

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スマホ完結型保険に流行の兆し

 米国ではスマホアプリのみを使ったさまざまな保険サービスを提供するスタートアップが急増している。アプリを使った簡単なQ&Aのみで数分で保険料を算定し、すぐに加入申請ができる。代理店を持つ必要がないため、こうした保険は通常のものより安価で提供される。自動車に限らず、住宅にもこうした保険が広がっており、健康保険でも近い将来こうしたスマホアプリ保険が登場すると考えられている。

 ゴールドマンサックスでは、DLTにより今後住宅登録保険が年間で20-40億ドル節約できるという試算を出している。住宅保有登録をリアルタイムのDLTで登録することにより、スムーズな決済が実現でき、エスクローにかかる費用、時間が大幅に節約できるためだ。

 たとえばカリフォルニア州パロアルトにあるスタートアップ Propyは不動産向けの決済プラットホームを提供している。不動産ブローカー、売り手、買い手がそれぞれウェブ上に署名を行うことで、従来エスクロー会社が行っていた取引のクロージングプロセスをウェブ上で迅速かつ安全に行うことができる。これが広がれば、売り手や買い手にとってもエスクロー費用の節約となり、不動産売買がこれまでより迅速に行える可能性がある。

 また、スマホアプリで保険の契約から支払い、申請などをすべて処理するというのはスタートアップの新興保険会社だけではなく、大手保険会社も積極的に乗り出している分野だ。同時にセールス、カスタマーサービスでもモバイルデバイスの存在が大きくなりつつある。特にセールス面では保険会社は郵便によるDMなどを多用しているが、ウェブ上で比較できるサイトを利用する顧客は増えつつある。

AI活用で保険の効率化が進む

 MITから生まれたスタートアップ Insurifyでは、1つのサイトで自動車、住宅、生命保険をまとめて比較検討できるサービスを提供。簡単な質問に答えることで、AIが1人ひとりの条件に最も合致するであろう保険を提示し、サイト上で価格やサービスの比較を行うことができる。InsurifyはVC投資ラウンドで660万ドルを集め、多くの大手保険会社とパートナー契約を勝ち取ることに成功している。

 これらは個人向けの保険だが、商業保険の分野にもテクノロジーは浸透しつつある。商業保険は個人向け保険と比べて複雑であり、まだまだ保険エージェントが調査して企業に応じた保険プランを提供する形が一般的だが、保険料算定にAI、マシンラーニングを導入することでこのプロセスを軽減する動きがある。

 ボストンに本拠地を置くCorvusは、AIがビジネスのリスク評価などを行い、従来よりも迅速に適正な保険料の算定を行う商業保険用のプラットホームを提供している。IoTによりさまざまなポイントから情報を収集し、主に物流関係のリスクを点数化して表示し、顧客にとっても透明な料金システムを提供している。

【次ページ】AIとDLTが保険金詐欺防止に役立つ

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