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  • 2019/10/21 掲載

コニカミノルタ 山名昌衛社長が語る、“146年の存続”を懸けた「本業DX」の成果

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創業146年の製造業者が今、企業の存続をかけてデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいる。その製造業者とは、かつては写真フイルムやカメラの有力ブランドの1社だったコニカミノルタだ。もともと事業領域を大きく様変わりさせてきた同社が現在取り組んでいるのは、ヘルスケア領域だ。果たしてどんなDXにチャレンジしているのか。同社の山名昌衛社長が語った。

ジャーナリスト 松岡 功

ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌の編集長を歴任後、フリーに。危機管理コンサルティング会社が行うメディアトレーニングのアドバイザーも務める。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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コニカミノルタの山名昌衛 代表執行役社長兼CEO
(出典:筆者撮影)

「本業をDXで作り替えないと存続できない」との危機感

「デジタルトランスフォーメーション(DX)というと新規事業のイメージがある。しかし当社は、本業そのものをDXによって作り替え、デジタルならではの価値を提供しないと、存続するのが難しいと考えている」──。

 コニカミノルタの山名昌衛 代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)は、シスコシステムズが先頃開催した「デジタルイノベーションカンファレンス」の基調講演で、「自らの強い危機意識」と前置きしてこう切り出した。

 山名氏はなぜDXに“振り切り”、本業そのものを作り替える必要があると考えるのか。それは、創業146年の歴史にも関係する。コニカミノルタは2003年に、1873年創業で写真フイルムを主体としたコニカと、1928年創業でカメラを主体としたミノルタが経営統合した企業である。

 しかし、2006年にはそれらの創業事業から撤退し、今では複合機などのオフィス機器やサービス、印刷システム、ヘルスケア製品などで年間売上高1兆600億円(2018年度実績)のBtoB事業を展開している。

 現状をみると事業の転換に成功したように見受けられるが、山名氏は危機感を抱いている。

 現在進めている事業もDXによって今後求められる社会的価値につながる形にする必要があるとの考えを示しているのだ。そこで、同社は4つの社会課題に対して提供できる価値を明確にし、各領域で推進する領域と事業を8つピックアップした。

 社会課題についてはSDGs(持続可能な開発目標)をベースにしている。すなわち、この8つが同社にとってはDXを進めるべき注力分野である(図1)。

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図1:社会的価値につながる事業領域を選定
(出典:シスコシステムズ「デジタル・イノベーション・カンファレンス2019」のコニカミノルタ資料)

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ケアサポートソリューションが誕生した背景

 山名氏はこの8つの事業の中から、ヘルスケア分野のケアサポートソリューションについて、具体的な取り組みを説明した。

 ケアサポート事業の推進に向け、同社はまず自らが持つ「光学」「画像」「微細加工」「材料」といったコア技術を生かせる社会課題として「高齢化への対応」に照準を合わせた。そして約70の介護施設へのヒアリングから、一番の課題を「転倒防止」と特定した。

 しかし、課題の報告を受けた山名氏は、果たしてその1点に集中した取り組みでいいのかと疑い、もっと現場を見るように促した。そこで、この事業の開発を託された技術者延べ50人が3カ月間24時間体制で介護施設に常駐し、介護士の行動を観察することになった。

 ほどなく常駐していた技術者の1人が気づいたのは、介護士が「部屋ごとのケアが終わるたびに立ち止まり、何やらメモをとっていること」だった。聞いてみると、入居者ごとの介護状況をメモし、それを後ほどPCに入力して施設内の情報共有や各種手続きなどに利用しているという。これを知った技術者たちはハタと気づいた。

「転倒防止は介護業務の一部に過ぎない。最大の課題は介護ワークフローの流れをもっとスムーズかつ確実に改革することにある」

 実際に介護業務を細かく見ると、介助が42%、移動や準備、片付けが29%、記録や情報連携が29%と、さまざまな要素があることもわかった。

 こうしたことを踏まえて誕生したのが、図2に示すように、センサーとスマートフォンを軸として介護士のワークフローを総合的に支援するケアサポートソリューションである。

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図2:ケアサポートソリューションの概要
(出典:シスコシステムズ「デジタル・イノベーション・カンファレンス2019」のコニカミノルタ資料)

 山名氏はこのソリューションについて、「これまでのような“コールから始まる介護”から、”コールと同時にスマホで状況を確認する介護”にするだけで初動が大きく変わる。スマホをメモ代わりに使えば、情報共有なども素早い対応が可能だ。こうした効率化を図ることで、入居者に直接対応する時間をもっと多くとれるようになる」とメリットを強調した。

 同社が実証実験などで得たケアサポートソリューションの導入効果としては、介護ワークフロー全体で約30%の業務効率の向上を図れるほか、ケアコール回数も1割以下に減少した。これは、介護士の業務負荷低減とともに、入居者の満足度も向上していると見て取れそうだ。

【次ページ】DXの取り組みに価値をもたらすのは“人”

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