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  • 2020/01/30 掲載

「無料公開しても本は売れる」noteやflierのトップが語るコンテンツ飽和時代の届け方

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出版不況が叫ばれる中、近年はインターネット発の書籍がベストセラーになる現象も起きている。デジタルの時代に出版や書籍はどのように変化し、生き残っていくべきなのか。これからのビジネスモデルについて、ピースオブケイク代表取締役 CEO 加藤 貞顕氏、フライヤー代表取締役 CEO 大賀 康史氏、Books&Company代表取締役 野村 衛氏がディスカッションした。メインファシリテーターは衆議院議員の鈴木 けいすけ氏が務めた。
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情報があふれる中、読者にどう届けていくのか。コンテンツの起点は「本」から「インターネット」へ移っていく
(Photo/Getty Images)


デジタル時代の出版のビジネスモデルとは

 ゲストパネリストの加藤 貞顕氏、野村 衛氏は、それぞれ出版社で編集者を経験。その後、加藤氏は「cakes」や「note」を運営するピースオブケイクを、野村氏は電子出版を手掛けるBooks&Companyを設立した。また、大賀 康史氏は経営コンサルタントを経て、書籍の要約コンテンツを提供するフライヤーを設立している。

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衆議院議員
鈴木 けいすけ氏
 ファシリテーターは衆議院議員の鈴木氏とともに、イグニション・ポイント コンサルティング事業本部 マネージャー 佐野 智之氏、タレント 黒田 有彩氏が務めた。ディスカッションのテーマは「出版と書籍の未来」だ。

 まず、鈴木氏はデジタルを活用した新たな形で出版に携わるゲストパネリストに、各社のビジネスモデルの紹介を求めた。

 ピースオブケイクが運営する「note」は、文章、写真、イラスト、音楽、映像などの作品が投稿されるメディアプラットフォームだ。プラットフォーム上でコンテンツが売買された場合に手数料が入るほか、企業のスポンサードで投稿コンテストを開催している。黒田氏はユーザー集めについて、加藤氏に次のように質問する。

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タレント
黒田 有彩氏
「落合陽一さんやよしもとばななさん、堀江貴文さんなども利用されているそうですが、コンテンツがあるから影響力のある方々が集まったのか、そうした方にアピールしたのか、どちらだったのでしょうか」(黒田氏)

 noteは2019年9月に月間アクティブユーザー数2000万人を突破し、著名人も多数利用している。黒田氏の質問に答える形で、加藤氏は自社流の“街づくり”の考えを示した。

「両方ですね。システムだけあっても誰も使わないので、創業してまずはこちらから声をかけた方に『cakes』という雑誌のようなコンテンツ配信サイトで作品を公開してもらいました。書き手と読み手の土壌ができてから『note』を始め、書きたい人、読みたい人が集まるようになりました。だんだんと街を育てているようなイメージです」(加藤氏)

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ピースオブケイク
代表取締役 CEO
加藤 貞顕氏

 フライヤーが提供する「flier」は、サブスクリプション型を採用している。大賀氏は「有料会員数は公開していないのですが、インターネットサービスは有料会員比率が数パーセント程度と言われる中、flierの有料比率はかなり高いです。人材育成に利用したいという法人に提供して料金をいただくケースも多いですね」と語った。

 Books&Companyの場合は、出版社から預かった紙の書籍のデータを電子書籍用に変換するのが主な事業であり、出版社から手数料を受け取るモデルを取っている。

「紙の書籍のデータを電子書籍のフォーマットに作り変える、やや複雑な機能を担って作業賃をいただいています。紙の書籍を単純に画像データ化する方法もありますが、文字情報を埋め込まなければキーワードが検索できません。今後、AIを活用して、早く、低予算で文字情報を埋め込む事業にも手を広げていきたいと思っています」(野村氏)

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Books&Company
代表取締役
野村 衛氏

コンテンツ飽和時代、どう届けるのか

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イグニション・ポイント コンサルティング事業本部
マネージャー
佐野 智之氏
 ここで佐野氏から、各社が出版業界でビジネスを進める上で抱える課題に関する質問が出た。加藤氏は「関心がある人へコンテンツをどう届けるか」と回答し、鈴木氏も「書店には興味がなかった本とも出会えるメリットがあります。電子出版の場合、そうした予期せぬ出会いをどう実現しているのでしょうか」と投げかける。

 加藤氏から紹介されたのは、AIやリコメンドエンジンを採用しつつ、編集の役割を担う人間が“おすすめ記事”の選定も行う方法だ。noteにはSNSや検索エンジンからの流入が多く、ユーザーの多くは目的を持って記事を閲覧する。そこからいかに興味を広げて滞在時間を増やせるかは、リコメンドの精度が左右するという。

「出会いのシステムの一番難しいところは、似たようなものばかり“おすすめ”するようになる点。それだけだとやはり面白くないので、noteではセレンディピティ(偶然の発見)を起こすために、人が見て面白いと思うものをおすすめすることも大事にしています」(加藤氏)

 大賀氏は、インターネットを通じた本との出会いを創出する目的で、出版社からフライヤーに声がかかることが多いと語る。要約サービスが試し読みのように機能し、書籍の購入に結びつくのだという。

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フライヤー
代表取締役 CEO
大賀 康史氏

「要約だけ読んで書籍を買わない方も中にはいらっしゃいますが、そうした人はもともと買わない層。むしろ要約を読むことで、もっと知りたいと感じて購入につながるという効果が大きいと考えています」(大賀氏)

 この意見に対して、加藤氏も「ベストセラー作品である『ゼロ』『嫌われる勇気』『マチネの終わりに』の全文を当社のcakesというサービスで公開していますが、本はめちゃくちゃ売れているんですよ。やっぱり面白かったら買うんですよね」と同意し、掲載面が増えることが購入につながるとの考えを示した。

【次ページ】読み手との間にある障害をイノベーションで乗り越える

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