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  • 2019/09/25 掲載

なぜ難しい経営学の本が続々と「図解」されるのか

平野敦士カール氏×土井英司氏

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「人生100年時代」と言われる今、私たち1人ひとりが自分自身の人生を設計しなければならなくなってきました。そこで求められるのが、100年を生き抜くのに必要なお金の流れを理解する、いわば1人ひとりの人生の「経営感覚」です。ビジネス書評家の土井英司氏と起業から上場までの流れを図解した『すごろく経営学』監修者の平野敦士カール氏に、今こうした感覚が求められる理由を話し合ってもらいました。

聞き手:北村 耕太郎、執筆:桑原 晃弥

聞き手:北村 耕太郎、執筆:桑原 晃弥

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「図解」をコンセプトにした本がいくつも書店に並ぶようになったのはなぜか?

なぜ最近「図解」系の本が多いのか

──経営学やマーケティング、ビジネスフレームワークはじめ、難しいと一般に思われていることを分かりやすくというコンセプトのビジネス書が増えているように思います。この背景についてどのようにお考えですか。

土井氏:従来ビジネス書というのは一部の人、つまりある程度知的で、読み解く力のある人、ビジネスの知識がある人だけが読んでいました。

 しかし、今は人生100年時代といわれ、会社員だけで一生を終えることができなくなりました。そうなると、誰にとっても経営や商売の基礎知識が求められるようになってきますが、いかんせんビジネス書は難解です。

 裾野が広くなっている分だけ、分かりやすく伝えるニーズが出てきているから、こうした本が出てきているのではないでしょうか。

 たとえば永井孝尚さんの『100円のコーラを1000円で売る方法』という本が2011年に発売され、60万部も売れましたが、バーで働く若い店長なども買っています。私が、「なぜ買ったの?」と聞いたところ、「だって、100円のコーラを1000円で売りたいじゃないですか」と、そのまんまの答えが返ってきました。

 たしかに彼らは、今は雇われの身ですが、将来は自分の店を持ちたいと思っていますし、店を持った時にどうするかを知るためにこうした本を買って読んでいるわけです。

 かつてはこうした商売をすることは一部の人のものでしたが、現代では、昔なら会社員で一生を終えたはずのごく普通の人にとっても商売が他人事ではなくなってきているのです。

 実際、YouTuberになるとか、アフィリエイトで儲けるとか、あるいはメルカリやアマゾンを使って小遣いを稼ぐといった小さな商売の方法もどんどん増えています。

 会社も一生面倒は見られないから、足りない分は副業でも何でも自分で好きにやってください、というスタンスになってきています。

 そうなると分かりやすいビジネス本でも読んで「勉強しておこう」となります。

平野氏:確かに傾向として一から会社を立ち上げる起業本よりも、副業本が売れています。ある企業が行った就活生の「就職したい企業・業種ランキング」の1位は国家公務員で、2位は地方公務員となっています。3位以下には著名な大企業が名前を連ねていますが、こうした企業以上に公務員は「安定収入を得ることのできる正規雇用」として人気を集めています。

 なぜこうした結果になるのかというと、未来に期待が持てないので、まずは安定を確保しよう、という背景があるとみています。

 同様に今、会社に勤めている人たちも今の会社を辞めてまで起業しようとは思っていません。しかし、年金2000万円問題で明らかになったように、副業的に何かやらないと、80歳、90歳までどうやって食べていくのかという問題意識があるので、経営学を学んで、自分でもちょっとした商売をやってみたいという人が多いのではと感じています。

言葉で「分けて」、絵で「つなぐ」

──ただ経営学のような難しいことをわかりやすくというコンセプトから、最近では「図解」も流行になっています。

土井氏:絵のほうが言葉よりはるかにまとめる機能が強いです。「分かる」とは「分ける」ことという言い方があるように、言葉の機能は「分ける」ことです。

 つまり、言葉は分けて理解する機能を持っていますが、それによってかえって全体像が見えにくくなることがあります。その点、平野さんの『すごろく経営学』では、商売の「流れ」が分かります。流れは現場を見ていないと分からないですが、この本を読めば現場を見ていない人でも何となく分かるようにできている点が面白いなと思いました。

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すごろくという形式をとることで経営の「流れ」が理解できる
(出典:『すごろく経営学』)

 僕はアマゾンにいたので、サプライチェーン、ものの流れが分かりますが、日本企業は人を部分最適にしてしまうところがあります。

 しかし、それではダメ。何かをやっていく場合、全体像の把握は欠かせないにもかかわらず、どうしても近視眼的になりがちです。だからこそ、こういう図解で時々全体を整理する必要があると思っています。

 経営者のなかにはビジネスモデルを考える時、模造紙など大きな紙を使う人がいますが、そこに彼らは全体像を書き出します。流れの確認やどういうプレーヤーがいるのか、これをやったらどこかで齟齬(そご)をきたさないか、などを図にしますが、会社員はやりません。

 会社では部分最適のうまい人が出世する傾向がありますが、経営者は全体を見ることができないといけません。そしてそれには絵が最適です。

【次ページ】誰もが商売できる時代に必要なのは「経営感覚」

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