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  • 2020/03/10

3Dバイオプリンティングが実用化、皮膚に直接プリントする3Dプリンターは何ができる?

やけどその他で皮膚に損傷がある人に対し、片手で持てるデバイスで人工皮膚を直接プリントして治療するという方法が注目されている。デバイスそのものが開発されたのは2018年だが、2020年に入り真皮層まで達した深い損傷に対応する治験を豚で開始し、満足できる結果が出ているという。このような人工皮膚の開発は世界でも進んでいるほか、人間の臓器や体の一部をプリントするという試みも広がっている。

米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、米国の社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス在住経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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3Dプリンターを使って人工皮膚を貼り付ける
(出典:University of Tronto)

バイオインクで描かれたシートを患部に張り付ける

 人工皮膚を3Dプリンターで直接患部に、という試みは2018年にカナダで始まった。片手持ちの人工皮膚ディスペンサーを開発したのはトロント大学とサニーブルック・ヘルス・サイエンス・センターの共同研究チームで、チームを率いたのは機械工学のアクセル・ギュンター準教授とバイオマテリアル学部の博士課程に在籍するリチャード・チェン氏。ギュンター准教授は「考え方としてはガムテープを張り付ける機器と同じで、テープの代わりに人工皮膚のシートが出てくるというもの」と説明した。

 デバイスは重量1キロ以下で、「バイオインク」と呼ばれる生物的材料でできたひも状の物質がシート状に配置されたものを患部に直接貼り付ける。

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バイオインクを患部に直接貼り付ける
(出典:University of Tronto)

 素材はコラーゲン、フィブリン(傷を癒やす効果のあるタンパク質)などが中心だが、間葉系幹細胞(MSC)が含まれる。MSCは間葉系に属する細胞への分化機能を持ち、再生医療への応用が期待されているものだ。MSCによりヒトの皮膚再生、傷の治癒という効果が期待できるという。

 チームはまず表皮部分(やけどのI度に相当)への人工皮膚貼付の治験を豚を使って始めたが、今年に入り、真皮部分に達する(やけどのII度に相当)ものに対しても豚を使っての治験を開始した。現時点では経過は良好と言われるが、人間への実際の適用にはまだ数年が必要と言われている。

人工皮膚の技術は死亡率を劇的に減少させる

 現在のやけどへの治療として最も用いられているのが、本人の他の部分、たとえば太ももなどの皮膚を移植するという方法だ。やけどについては損傷した表皮部分が細菌などに感染し、二次的な症状を起こすことが最も危険とされる。そのため、やけど部分に早急に皮膚移植などを行う必要がある。

 しかし体の表面部分の損傷が広い場合、この自分の皮膚移植という方法が取れないことがある。そのためにも人工皮膚を使った治療への期待は高く、世界中で研究が進められている。

 ただし人工皮膚が感染症を防げるかと言えばその限りでもなく、感染症を防ぎ、かつ従来の皮膚移植よりも体表に残される傷跡が少ない人工皮膚の開発が求められている。

 トロント大学の研究チームによるものはこうした部分をクリアし、かつ短時間で多くのやけどの表面を覆うことができるため、将来の臨床に役立つのでは、という期待が集まる。

 カナダのやけど外傷専門医からも「やけどなどの患者が長くその状態で放置されるほど感染への危険性が高まる。ハンドヘルドのデバイスで素早く多くの部分に人工皮膚を貼付できる技術は、患者の死亡率を劇的に減少させる可能性がある」との声が上がっている。

【次ページ】バイオプリントを実現する5段階

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