• 2020/03/23 掲載

【新型コロナ】“インフォデミック”の仕組みを解説、情報の真偽を確認し冷静な行動を(2/2)

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根拠のないうわさが真実になる

 本来は「新型コロナ対策でマスクが必要になる」という情報は全ての人に当てはまるものではありませんでした。しかし、インフォデミックによって真偽が曖昧になり、日本では咳の有無に関わらずエチケットという感覚でマスクを着用されている方も多いように筆者は感じています。

 そして、マスクが品薄になったことで、「品薄になった必需品を買えなくなる」という不安は強まります。そこで今度は「トイレットペーパーは中国で生産されているので輸出が滞る」「国内でマスクが大量生産されることでトイレットペーパーの原材料が不足する」といったうわさが広がりました。

 実際にはトイレットペーパーのほとんどは国内生産ですし、原材料もマスクとは違います。しかしデマだと分かっていても、デマにだまされた人や転売屋が買い占めれば品薄になるのは目に見えています。

 そして紙類が日常生活に必要不可欠なことは確かですし、マスクが品薄になったのは事実。そこで「品薄になる前に買っておこう」という心理が働くのは不思議なことではありません。そうして自身や家庭のために買い占める人が続出し、品薄騒動が起こります。インフォデミックの連鎖です。

 現状や将来への不安がなければこのような現象はそうそう起こりませんが、不安をあおる要素があればインフォデミックは起こります。1973年の第四次中東戦争によるオイルショックに対する不安でトイレットペーパーを含む石油関連製品が売り切れたのも同じ構図です。

 石油製品が品薄になると言ううわさが流れ、トイレットペーパーが品薄になるという不安から買い占めが起こり、実際に品薄になって全国的に広がりました。

 不安による混乱は連鎖します。同年、豊川信用金庫では取り付け騒ぎが起こりました。社会的な不安が顕在化している中、何気ない会話の中で出た「信用金庫が危ない」というワードが曲解され、うわさが広まって信用金庫預金を下ろそうとする人が殺到したのです。倒産には至らなかったものの20億円が引き出され、本当に危ない事態となりました。この時代にはSNSなどはなかったにも関わらず、伝言ゲームによって情報が急速に拡散すると共に変質したのです。

 このような「おのおのが正しい思って行動した結果、集団にとって悪い結果につながる現象」のことを「合成の誤謬」と言います。経済学の用語ですが、「地震や火事で非常口に全員が殺到するとかえって逃げるのが遅くなってしまう」というような身近な例にも当てはまります。他者に配慮する余裕のある状況下ではあまり起こらず、不安や恐怖が強く「損失するものが大きい」と感じられるような状況で起こりやすい現象です。

 インフォデミックはこうした現象を引き起こしやすく、その現象がさらなる不安を呼び、新たな混乱を生むというのも特徴の1つといえるでしょう。

善意で広がるデマが真実を伝わりにくくする

 インフォデミックにおいて、もう1つ厄介な現象があります。それはデマの種類の豊富さです。マスクやトイレットペーパーぐらいであれば、対策の施しようもあります。政府や業界を挙げて情報発信を行い、足りないなら生産を増やし、購入数を規制し、影響を最小限に抑えることが可能です。ところが、デマが多すぎると対策にも限界があります。

 不安や恐怖が強い状況下では、少しでもその状況を脱することができるかもしれない情報にすがりつくようになります。その結果、さまざまなデマが流布されるのです。コロナウイルスの予防や対策について言えば「〇〇が効く」という予防になるとされるものから「△△で感染する」といった感染源になるものまであります。

 よく考えてみると信じがたいものもあるのですが、多くの人が信じていると流される人も現れます。また「医者や研究者が言っていた」という枕ことばをつけられると無条件に信じてしまう人もいるでしょう。何よりも厄介なのは、情報の発信者も拡散者も「善意で拡散している」ということです。「皆のため」と考えるとそれを拡散することは良いことのように思えてしまうため、積極的にデマの拡散に寄与してしまいます。

 最初の情報発信者は善意ではなく不安につけ込んだ純粋な「詐欺」を目的にしている場合もありますが、その情報を知って拡散している人間はそれによって利益を得ることはないため、情報を受け取る側はそれがデマであることに気づきにくくなります。

 このようなデマは正しい情報と不確かな情報の区別がつかないからこそ広がってしまうのですが、インフォデミックはこの状況を深刻にします。

 まず、陰謀論やデマなどの不確かな情報が流布されることで新型コロナに関する情報そのものの信頼性がおとしめられます。そうした中で、正しい情報であっても情報が拡散される中で情報が変質し「一部は正しいけど一部は間違っている」といった情報に変わり、専門家に否定されると、正しい情報がデマとして扱われてしまうことさえあります。

情報の真偽を確認し、行動に移す前に冷静に

 インフォデミックによる混乱を防ぐために、WHO、政府、各業界や専門家が情報発信をしていますが、瞬時に拡散されるセンセーショナルな情報に対して、正しい情報の拡散が必ずしも追いついているわけではありません。

 インフォデミックそのものは個人間の連鎖的な情報共有で発生するため、政府や国というレベルで対応することは現時点では難しいのが現状です。

 そのため、1人ひとりが受け取った情報の真偽を確認し、発信する情報を吟味し、行動に移す前に冷静になって考えることが今後も大切になっていきます。

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