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- 2020/05/11 掲載
そのテレワークが「間違っている」理由 既存プロセスへのこだわりは捨てよ
テレワークで注目される端末監視エージェント
4月24日、NHK NEWS WEBサイトに『テレワーク 働きぶりの“見える化” 導入広がる』という記事が公開された。反響は大きく、ソーシャルネットワークを中心に問題点を指摘する声が投稿された。記事は「テレワークを導入する企業が増える中、会社にいないため、働きぶりを直接、見ることができない社員の勤務時間や勤務状況を管理するシステムの導入が広がっています」と始まり、あるSIerが導入したソフトウェアの事例を紹介するものだった。
そのソフトウェアは、SIerとは別会社の製品だが、画面の「着席」「退席」ボタンによって、作業時間を細かく監視、ログできるというもの。また、この手のソフトにありがちな無作為な端末のスクリーンショット機能も備わっている。
開発元と思われるベンダーサイトの情報では、カメラやマイクの操作(サイレントキャプチャー機能)はできない。リモートワークの勤怠管理に使う常駐型ソフトウェアだが、要はタイムカードによる勤怠管理と原理的には同じだ。
常駐型エージェントを利用した業務端末監視アプリやサービスは10年以上前から存在するが、どちらかというと、エージェントのインストールを従業員に知らせないで運用したがるような企業ニーズを満たす製品というイメージがあった。そのようなソリューションが、テレワークの勤怠管理やチームマネジメントに有効かは不明だが、テレワークにおいて着席時間が管理基準・評価指標にふさわしいかどうかは、相当議論の余地がある。
なお、記事は「ビジネスのつながり方、作り方が変わり、成果を改めて定義しないといけない日がくるのではないか。多くの企業でもう一度見直す必要があると思う(シニアコンサルタント)」とバランスよくまとめている。
守るのは「ルール」ではなく「アウトプット」
そもそもテレワークや働き方改革で求められているのは、これまでのプロセス重視の管理・評価指標からの脱却だ。テレワークで管理すべきは、PCに向かっている時間や着席している時間ではなく、アウトプットだ。日本の企業文化では、成果よりもプロセスにこだわる傾向がある。失敗しても努力していれば評価される。それ自体に問題はないが、逆に物事の基準が、結果ではなくプロセスやルールを守っているかに偏重することとなり、プロセスどおりでないことが「失敗」とされてしまう。
経営層やコンサルタントが好きそうな戦国武将の話にたとえるなら、大将の命令を無視して敵の大将首を取ってきた武将が、褒美ではなく切腹を申し付けられるような状態だ。「鉄の掟(おきて)」が有効なのは、掟(モデル)が時流、状況に一致していることが条件となる。
パンデミックのように劇的にルールが変わっている状況では、ルールやプロセスを守ることの優先度は相当低くなる。守るのはアウトプットであり、必要なのはそのための代替案、プランBやCだ。
ここを勘違いすると、冒頭の記事のようなポイントがずれた施策が氾濫することになる。たとえば、「テレワーク=オンライン会議」という状況が発生してしまうのだ。
【次ページ】オンライン会議がすなわちテレワークではない
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