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  • 2025/05/02 掲載

Skypeなぜ完全終了? Zoom圧勝の裏でマイクロソフトが仕掛ける「超本気の戦略2つ」

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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手軽なIP音声通話やビデオ会議のプラットフォームとして2004年に正式版が登場し、画期的な通信手段を世界にもたらしたSkype(スカイプ)。比較的安定した通話品質で多くの日本人ユーザーにも親しまれた。だが2011年にマイクロソフトに買収されて以降、製品の位置付けが揺らぎ、衰退。そして5月5日、サービスが停止される。だがこの一連の流れから、マイクロソフトがどのような戦略で成長を図ろうとしているのかが見えてくる。今回は、Skype撤廃までの流れを解説しつつ、そこから見えてくるマイクロソフトの2つの戦略についてひも解いていく。
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Skypeのシェアは著しく低くなっていた(後ほど詳しく解説します)

Skype爆誕・人気化から衰退まで

 P2P技術(中央サーバを介さずにスマホなどの端末同士でデータのやり取りが可能な通信技術)を用いたSkypeは、2004年に正式版のサービスを開始。登場当初、高額になりがちな国際通話や、国内遠方への電話代を節約できるツールとして、PCユーザーを中心に大いに人気を集めた。

 音声会話のほかに、オプションで固定・携帯電話に発信できる機能もあり、後にメッセージング機能やビデオチャット機能、そしてスマホアプリも追加された。

 だが、その「PCソフト」「通話アプリ」「コンシューマー向け製品」としての出自と強烈なブランド力ゆえに、2010年代のスマホアプリへの移行や、追加的なイノベーションが遅れがちとなったことは否めない。また買収元のマイクロソフトによるSkype戦略は、技術の進化に伴う方向性のブレが生じており、目標が定まらなかった。

 2017年には、同じくマイクロソフトから、Office製品に組み込まれたTeamsが登場。それと前後して、遅延がより少ないライバル製品であるZoomや、Google Meet、Facebook Messenger、Slackなども続々と登場し、それぞれシェアを伸ばしてきた。同時に、従前の「ビデオ通話と言えばSkype」という消費者の認知が薄れていった。Skypeは「チャットアプリの1つ」に過ぎなくなったのだ。

 こうした中、コロナ禍にリモートワークが全盛となる。ところが、Skypeの利用回数が2021年9月から2022年2月の半年間だけで10%超の3800万回も減少。競合のZoomやTeamsの2強がシェアを急激に伸ばした。こうした環境下で、マイクロソフトは2021年7月に法人向け「Skype for Business」のサービスを停止。Teamsが急成長する中、将来的にはSkype全体のサービスが中止されることが不可避となった。

なぜSkypeは終了するのか?その「2つの理由」

 マイクロソフトがSkypeのサービスを停止した直接的な理由は、(1)市場シェアの低下と(2)採算性に改善の見込みがなかったことだと推測される。

 独調査企業のStatistaによれば、2024年の世界ビデオ会議プラットフォームの市場シェアの1位は55.91%とZoomが圧倒的で、2位がTeamsの32.29%、3位は米GoToが開発したGoToMeetingの8.81%、4位が米シスコのWebExで7.61%、5位がGoogle Meetの5.52%など、米国勢が強い(図1)。一方でSkypeは、6位の米RingCentralの5.31%、7位の米アップルのFaceTimeの2.16%に次ぐ8位の1.41%にとどまった(図1)。

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図1:2024年におけるビデオ会議の世界市場シェアランキング。Skypeはわずか1.41%にとどまった
Statistaより編集部作成)

 ユーザー数で見ると、Zoomは月間アクティブユーザーを発表していないものの、後発のTeamsは2024年で月3億2000万人と、圧倒的な規模だ(図2)。

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図2:Teamsの月間アクティブユーザー数の推移。コロナ禍が始まった2020年を契機に飛躍的に伸びたことがわかる
demandsageより編集部作成)

 他方、Skypeは2024年に3億人の月間アクティブユーザーと、それに劣らぬ数字を誇っていたことは特筆される。だが市場シェアや売上と併せてデータを見ると、実際の使用頻度がZoomやTeamsと比較して非常に少なかったことが推測される。

 実際に、数字が公開された最も直近である2022年9月のSkypeの月間売上はiOSユーザーから200万ドル(約2.8億円)、Androidユーザーから70万ドル(約9,929万円)だった。このパソコンユーザー分を除く合計を単純に12倍した推定年間売上はわずか3,240万ドル(約46億円)だ。

 これに対して、Zoomの2025年1月期の年間売上は46億6,500万ドル(約6,620億円)、Teamsの2023年の推定売上はおよそ80億ドル(約1.1兆円)であり、Skypeが3億人の月間アクティブユーザーを抱えながらも、まったく収益化できてなかったことが想像できる。

 それでもマイクロソフトは、2025年まで完全廃止を待った。SkypeユーザーをTeamsに誘導するための時間的余裕を設けるためだ。ではマイクロソフトはなぜTeamsにユーザーを集約する判断を下したのか。そこにはプロダクト戦略の転換とAI戦略の強化が深く関わってくる。

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次のページでは、マイクロソフトの戦略を解説します
【次ページ】Skype撤廃でわかる「マイクロソフトの2つの戦略」
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