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  • 2020/06/23

「YouTube配信は危うい」ホリプロ社長に聞く、エンタメ業界「壊滅的危機」の現実

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が全面的に解除され、経済・社会活動は徐々に元に戻りつつある中、エンタメ業界はまだまだ本格稼働とは言えない状態にある。予定していたイベントの多くは、延期または中止のままだ。この状況が続けば、エンタメ業界の経済損失は計り知れない。今後、この危機的状況をどう打破していくのか。ホリプロ 代表取締役社長の堀義貴氏に、ホリプロでマネジャーを務め、現在はキャスティング会社のエイスリーで代表取締役を務める山本直樹氏が聞いた。

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ホリプロ
代表取締役社長
堀義貴氏
1989年ニッポン放送入社、1993年退社。同年6月ホリプロ入社、02年代表取締役社長就任。13年一般社団法人日本音楽事業者協会会長に就任、19年総務省情報通信審議会委員

 

エンタメ業界の影響が、地方経済・他業種へ波及

山本直樹氏(以下、山本氏):経済活動再開のめどは立ってきましたが、このままコロナの影響が長期化すると、エンタメ業界にはどのような問題が出てくるのでしょうか?

堀義貴氏(以下、堀氏):エンタメ業界そのものの話をする前に周辺のお話をしておきます。エンタメ事業の活動停止によって、実は最初に仕事が無くなってしまったのがお弁当屋さんでした。ウチの舞台では毎日150食ぐらいのお弁当を納品してくれていましたから。

 次に影響が出たのは、缶バッチやステッカーなどのイベントグッズを作ってくれているような企業でした。

山本氏:エンタメ業界の問題が、エンタメ以外の業種に波及しているということですね。地方も当然、厳しい状況ですよね。

堀氏:本来なら、今頃東京五輪の聖火リレーが行われているはずであり、行く先々でイベントが開催されていたわけです。しかし、五輪は延期となり、予定していたイベントもなくなり、地元のイベンターや制作会社が準備していた仕事がゼロになってしまいました。

 また、地方経済のドル箱的存在であった大型野外フェスも開催中止となっています。これに伴い、電車やバスなどの交通機関や宿泊施設も当然、減収になる。インバウンドを見越して予算立てていた業者は、予算を縮小しないと生き残れない状況になってしまいました。

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エイスリ―
代表取締役
山本直樹氏
パイオニアLDC(現NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)で宣伝プロモーター、ホリプロでマネージャー、デジタルガレージでのWEBメディアの広告営業などを経て、2008年エイスリーを設立

「テレビ局」「映画館」「劇場」が受けた影響とは

山本氏:映画やテレビの世界も大きな影響を受けていますよね。

堀氏:映画館は客席を半分にするなどの工夫をしながら、徐々に再開していますが、上映しているのは『ローマの休日』や『E.T.』など、旧作が中心です。

 そうした対応で劇場の経営は何とかなるとしても、映画の製作費用の回収は難しくなるかもしれません。

 一般的に、映画は5週間のロードショーで製作費を回収できれば御の字というビジネスモデルです。また、多くの映画館は、平日の稼働率は2割以下であり、土日で席を満杯に埋めて回収していかなくてはなりません。それが、土日の客席を半分にして運営していくとなると、5週間ではとうてい制作費は回収できないでしょう。

 そのほか、コロナの影響で新作の邦画も洋画も公開を延期しているため、今後、再開することになればスクリーンの「枠」の争奪戦が始まるかと思います。それも観客数を制限した形で、です。

山本氏:テレビ業界はどのような状況でしょうか。

堀氏:日本の地上波はドラマの再放送やバラエティ番組の総編集などで何とかやり繰りしてきました。視聴率が上がったとも言われますが、ネットフリックスやアマゾンプライム・ビデオなどの動画配信サービスの加入者が増えたことで、中・長期で見るとテレビ業界はますます厳しい状況に追い込まれていると言われています。

 しかし、これら動画配信サービスのセールスポイントも、テレビと同じくオリジナル番組です。新作が作れない状況が続けば、動画配信サービスも決してバラ色というわけではないでしょう。

エンタメ業界の雇用は縮小するのか

山本氏:エンタメ業界に直接関わる人々の雇用についてはいかがでしょうか?

堀氏:コロナの影響で、すでにワンクール分の新作ドラマがなくなりました。その分、年間で考えると出演者の数が激減しました。

 また、新しい番組の撮影ができない状況で、過去の番組の編集版や再放送が増えており、それが出演者のギャラに少しずつ影響を及ぼすことになるかと思います。

山本氏:編集版や再放送だと、出演者にはギャラがあまり入らないのでしょうか。

堀氏:使用料程度なので、微々たるものです。平常時に支払っていたタレントの給料を確保できるほどの金額にはならないのが実情です。

山本氏:この環境でも、なんとか新しい番組を撮影しようと、Zoomなどによるテレワーク出演も増えています。

堀氏:スタジオに出向かず自宅からオンラインでテレビ出演するということは、ヘアメイクもスタイリングも、タレント自身が自らやることになります。こうした状況が続けば、今後自分で何でもできるタレントでなければ、必要とされなくなっていく可能性もあります。

 ただし、タレントが何でも自分でやれるようになると、メイクさんやスタイリストさんの仕事が無くなってしまいます。その影響も考えないといけません。

山本氏:なるほど。業界全体の仕事の数が減少する中で、来年の新卒採用について悩んでいる会社も出てきていますよね。

堀氏:それはあると思います。そもそも会社の数が減る可能性もあります。それだけではなく、対面面接ができない状況のため、人材の見極めが難しいということで、採用枠を絞るという会社も多いと思います。また、例年より辞退者も減ることが予想されるため、そもそも採用枠を絞っておくという会社も出てくるかと思います。

山本氏:特に、採用に影響のありそうな職種などはありますか?

堀氏:照明や音響のスタッフといった専門職の方は厳しい状況になるかもしれません。一般的に、照明や音響スタッフになるためには、特殊技能を専門学校で学ぶことになります。今年そういった学校に入学したとすれば、卒業するのが2~3年後になるでしょうか。その頃までに、働き口が減っていく可能性はあるかもしれません。

 現在、こうした照明や音響技術に関わる企業の多くは、コロナの影響で日々の運転資金を確保することすら困難な状況に陥っていますから。

山本氏:専門職の方の雇用の受け皿も考えていく必要がありそうですね。

【次ページ】タレントのYouTube配信には、大きな副作用がある?

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