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  • 2020/07/31 掲載

なぜリクルートと富士フイルムは成功したのか?経営危機を脱する事業変革のポイントとは

山田英夫 早稲田大学教授インタビュー(後編)

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新型コロナウイルス感染拡大の影響により、事業の変革を迫られる企業が増えている。こうした局面だからこそ、過去、事業変革により危機を脱することができた企業の事例を振り返ることの意義は大きい。早稲田大学ビジネススクール教授の山田英夫氏に、事業変革によって成功した富士フイルムやリクルートといった企業の共通点や成功事例のポイントを聞いた。

執筆:阿部欽一、構成:ビジネス+IT編集部 中澤智弥

執筆:阿部欽一、構成:ビジネス+IT編集部 中澤智弥

画像
早稲田大学大学院
経営管理研究科(ビジネススクール)
教授
山田英夫氏
(写真は2015年6月にビジネス+IT編集部取材時のもの)


事業変革で一番大事なポイントとは

──前編では、事業の変革に失敗する企業の特徴をお聞きしました。ここからは、事業変革によって成功した企業の共通点をお聞きしたいと思います。

山田英夫氏(以下、山田氏):事業変革を進める際、「When(いつ変革するのか)」と「What(何を変革するのか)」の2つの側面を考える必要があります。このうち、特に「When(いつ変革するのか)」が、事業変革の成功・失敗を分けるポイントになると思います。

 結論から述べると、事業変革は「変革の必要がない、本業が好調な時にすべき」と考えています。なぜなら、事業の変革には、資金などの経営資源と、組織の柔軟性の両方が必要になるからです。業績が悪化してからでは、変革するための経営資源も不足し、変革させるエネルギーも時間もありません。この2つの条件を満たす余裕のあるタイミングこそ、次の成長に向けた変革を進めるべきだと思います。

リクルートの成功事例:なぜ事業変革のタイミングが重要か

──具体的な事例はありますか?

山田氏:たとえば、リクルートが紙の情報誌からWebにシフトしたのも、まさに本業が好調な時でした。同社がWebに転換したのは、紙の情報誌がまだ十分成り立っていた時期でした。

 同社が事業変革に乗り出した当時、紙の事業とWeb事業の間で売上を喰い合う「カニバリゼーション」(共喰い)が予想され、社内ではあらゆる所で「カニバリ」が叫ばれていました。

 同社は、生みの苦しみを伴うこの転換により、他社に顧客を奪われることなく、その後、大きな成長を実現しています。そして、現在のリクルートの売上に大きく貢献しているのが、好調時に買収した米国の求人情報サイトIndeedです。こうした大型買収も、資金力がある時に実施できたことが大きいと言えます。

参入する事業領域をどう選ぶべきか

──事業を変革する際にはどのようなビジネスの領域を選ぶか、つまり「What(何を変革するのか)」も重要なポイントかと思います。

山田氏:参入領域を検討する際、自社のビジネスから「近そうで遠いビジネス」なのか、「遠そうで近いビジネス」なのかを見極めることが重要になります。

 たとえば、「近そうで遠いビジネス」では、電力事業と通信事業は一見すると近そうに見えますが、電力会社の通信事業への参入に成功事例はほとんどありません。これは、50~100年の回収期間を想定した電力事業と、スピードが求められる通信事業の時間感覚が合わなかったのです。


 また、新薬メーカーがジェネリック(後発品)の領域に参入するケースがありますが、成功事例は限られています。新薬開発は膨大な費用と期間がかかり、「高い薬価がつく」ことが狙いなのに対し、ジェネリック薬品は、低コストで製造し、安く売ることが求められます。どちらも同じ医薬品ですが、売り方や作り方が大きく異なるため、ビジネスとして両立しにくいのだと思います。

 たとえば、エーザイはジェネリック事業に参入しましたが、最終的にジェネリック専業の日医工に事業を売却する結果となっています。

【次ページ】富士フイルムの成功事例:なぜ参入領域の見極めが重要か

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