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  • 2020/06/05 掲載

コロナ・ショックで見えてきた「強い運送会社」と「弱い運送会社」の違い

連載:「日本の物流現場から」

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新型コロナウイルスの影響は、物流業界にも大きな影響を与えている。トラックドライバー情報サイト『ブルル』が、トラックドライバー向けに行ったアンケートでは、42.5%が「仕事が減った」と答えている。一方で、「変わらない」という回答が36%、「増えた」という回答も12.3%ある。売上が大きく減り、事業の継続に赤信号がともる運送会社がある一方で、個々の仕事を見れば影響はあるもののビジネス全体を見れば、その影響を最低限に抑え、堅調に経営を続けている運送会社もある。その違いを探ってみよう。

執筆:物流・ITライター 坂田 良平

執筆:物流・ITライター 坂田 良平

Pavism 代表。元トラックドライバーでありながら、IBMグループでWebビジネスを手がけてきたという異色の経歴を持つ。現在は、物流業界を中心に、Webサイト制作、ライティング、コンサルティングなどを手がける。メルマガ『秋元通信』では、物流、ITから、人材教育、街歩きまで幅広い記事を執筆し、月二回数千名の読者に配信している。

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コロナ・ショックで仕事が増えた会社と減った会社、その違いは
(Photo/Getty Images)


新型コロナの影響を受けている会社の共通点

 新型コロナウイルスは、さまざまな産業に影響を及ぼしている。緊急事態宣言による外出自粛により外食産業は悲劇的な打撃を受けたが、一方でケータリングサービスなどは、売上を伸ばしているとも聞く。近しい業界・産業においても、明暗が分かれるケースが発生しているのだ。

 これは、運送業界でも同様である。たとえば、ビルやマンション建築など、ゼネコンが手掛ける大規模工事現場への配送は激減したものの、一般住宅の新築やリフォームに用いられる住宅建材の配送は、増えているともいう。

 新型コロナウイルスの影響で仕事が減り、売上を落としている運送会社には、いくつかの共通点がある。

  1. 限られた少数の荷主としか取引をしていない
  2. 特定の業界に特化している
  3. 差別化できるような特徴がない。参入障壁の低い仕事をしている
  4. 営業活動を軽視してきた

 100台弱のトラックを抱える、ある運送会社では、新型コロナウイルスの影響で仕事が激減し、トラックが数台しか稼働しない日も出てきた。同社は、あるメーカーの仕事を専属的に担ってきた。メーカーの工場が、新型コロナウイルスの影響により休業したため、配送する貨物がなくなってしまった。取引相手が一社に限定されていたため、影響も大きかったのだ。

 荷主であるメーカーと、休業補償の交渉は進めている。しかし、荷主が本来の売上すべてを補償してくれるわけではない。同社では、知り合いの運送会社などに頼み込み、スポットの運送をかき集めて、日々をなんとか過ごしているという。

 一方、別の運送会社では、工場を納品先とする、材料・部材配送の仕事が減ったそうだ。しかし、同社では医療品の配送も行っており、こちらの仕事は増えている。結果、材料・部材配送の売上減少を、医療品配送の増加が穴埋めし、会社全体の売上は、新型コロナウイルス以前の状態を維持しているという。

 もちろん、一社の荷主としか取引をしていない、もしくはひとつの業界に特化して経営している運送会社のすべてが、新型コロナウイルスの影響によって仕事を失い、売上を下げているわけではない。

 先の例で言えば、医療品だけを取り扱っている運送会社や倉庫会社であれば、売上は下がるどころか、上がっているかもしれない。

 ただし、それは新型コロナウイルスに限っての話である。今回は、取り扱っている貨物に新型コロナウイルスの影響はなかったかもしれない。しかし、ほかの自然災害などが発生した際には、影響を受けるリスクがあることを忘れてはいけない。

 「不況に強いビジネスや業界」という考え方があるが、もはや無意味になりつつあるのではないだろうか。ここ数年、あまりに予測不可能な社会的アクシデントが多発しているからだ。

 新型コロナウイルスしかり、2019年に西日本を中心に大きな被害と犠牲者を生んだ台風19号しかり。東日本大震災もそうだ。こういった人知をこえた社会的アクシデントに対し、あらかじめ影響を受ける業界や産業を予測することは極めて難しい。

 一般論ではあるが、事業の継続性を保ち、社会的アクシデントに負けない企業になるための方法のひとつは、リスク分散として、事業に多様性を持たせることだ。先の例のとおり、幅広く、複数の産業の顧客と取引を行っていることは、リスク分散になる。もしくは、競合他社に負けない、自社ならではの強みを創り、身につけることも大切であろう。

生き残っていく「強い運送会社」の条件

画像
ファイブフォース分析を模し、「強い運送会社」、「弱い運送会社」の例を洗い出した

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 新型コロナウイルスに限らず一般論として、「強い運送会社」の特徴を考えよう。

 ある運送会社では、病院や調剤薬局向けの医薬品配送を開始した。実は、最初同社では、その仕事を断ろうとした。それでなくとも、医薬品配送は、荷物の取り扱いが繊細で難しく、しかもその仕事は、棚入れ(配送先に代わって、棚に荷物を収めること)まで必要とされていたからだ。運賃は魅力だったが、ドライバーに対して、そこまでの教育はできない。そう言って断った同社に対し、その仕事を紹介した人は、このように言ったそうだ。

「ばかを言うな。だからこそ、君の会社にとって、安定した仕事となるんじゃないか!?」

 紹介者の熱意にほだされ、同社は医薬品配送を開始した。ドライバーに念入りな教育を行い、配送の病院ごとにマニュアルを作成。医薬品配送仕様の配送車両も新たに買いそろえたそうだ。仕事開始前の初期投資は大きかったが、競合他社もほとんどおらず、仕事を他社に取られる不安もほぼ皆無であり、今では苦労したかいがあったと感じているそうだ。

  1. ドライバー教育、専用車両の購入など、初期投資が大きく、参入障壁が高い
  2. 棚入れまで行うため、配送先、荷主とも、顧客満足度が極めて高い

 本事例では、こういった理由により競合他社との差別化を実現しており、他社に仕事を取られる心配も少ないだろう。「強い運送会社」の好例であろう。

 では、「強い運送会社」になるためには、どうすれば良いのだろうか。

【次ページ】営業代行を通して「弱い運送会社」が見えてきた

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