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  • 2022/08/31 掲載

大流行したスマホゲーム『アングリーバード』でいくら儲かった?ヒット作の経済効果

連載:キャラクター経済圏~永続するコンテンツはどう誕生するのか(第3回)

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2009~2010年頃、世界中で大ヒットしたパズルゲーム『Angry Birds(アングリーバード)』を覚えているだろうか。すでにブームは過ぎ去り、“消えたコンテンツ”という認識を持っている人も少ないはずだ。しかし、アングリーバードは単なる無料のモバイルアプリゲームとして終わらず、いまだにお金を稼ぎ続ける優良コンテンツとなっているのだ。今、アングリーバードは何で儲けているのか。そして、7年と言われるコンテンツの平均寿命を超え、生き残り続けることができている理由はどこにあるのか。

執筆:エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役 中山淳雄

執筆:エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役 中山淳雄

東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでカナダ、マレーシアにてゲーム開発会社・アート会社を新規設立。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本コンテンツ(カードゲーム、アニメ、ゲーム、プロレス、音楽、イベント)の海外展開を担当する。早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、シンガポール南洋工科大学非常勤講師も歴任。2021年7月にエンタメの経済圏創出と再現性を追求する株式会社Re entertainmentを設立し、大学での研究と経営コンサルティングを行っている。『推しエコノミー「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(日経BP)、『オタク経済圏創世記』(日経BP)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書)など著書多数。

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コンテンツの平均寿命7年を超え、いまだにお金を生み出し続ける『Angry Birds(アングリーバード)』の秘密に迫る
(写真:Everett Collection/アフロ)



2010年、世界中で大ヒットした『Angry Birds』

 2009~2010年頃、世界中で大ヒットしたパズルゲーム『Angry Birds(アングリーバード)』を知っているだろうか。アングリーバードは、2003年にヘルシンキ大学の学生が立ち上げた、ノキアのガラケー向けのコンテンツ会社「Rovio Mobile(現Rovio Entertainment、以下ロビオ)」から生み出された「52作目(2009年)」のゲームである。

 当時、アップルは「App Store」を2008年7月にリリースしたばかりであり、このアプリストア自体の成長がアングリーバードとともにはじまったと言えるほど、2009~2010年ごろは全世界の無料ゲームランキングを独占し続け、結果「最も早い速度で売れたアプリ」としてギネス記録にもなっている。

 だが、そのロビオが、その後どんな進化を遂げているかについてはあまり知られていないのではないだろうか。同社は2011年に4億2,000万ドルの出資を集め、何社も開発会社を買収し、20億ドルを超える買収オファーを退けながら、2012年にはスターウォーズとのコラボ作品がリリースしたほか、家庭用ゲーム業界にも進出し、世界初の10億ダウンロードに到達する。2013年にはテレビアニメ化され、2014年ついには20億ダウンロードまで到達する。

 だが、盛者必衰、事業の成長スピードがそのまま諸刃の剣として凋落の原因になることはよくある話だ。同社もまた例外ではなかった。

 ゲーム、アニメや映画など度重なる投資が回収に至らず、2014年末に社員110名のリストラを発表する。2015年にはMD(商品化)・グッズ収入が昨対比4割減となったタイミングで、さらに260名のリストラを決行。2015年の赤字決算は象徴的で、いまだロビオをこの時点のままの凋落イメージで見ている人も多いことだろう。しかし、ロビオはそのまま消えていったわけではない。

『Angry Birds』を生んだロビオ社は“優良企業”と言えるワケ

 図表1で見るように、「底」となった2015年の1.5億ユーロから売上は2年後には倍増しており、ゲームもライセンス事業も利益率は回復している。

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図表1:ロビオの事業別売上・営業利益率
(出典:Rovio Entertainment の公表資料より筆者作成)

 回復の兆しをつくったのは映画とゲームである。2016年映画第1作目の『Angry Birds Movie』は全世界で3.5億ドルの興行収入となり(制作費も7,300万ドルと、かなり高額なリスクテイクは行ったものの)米国だけでなく、全世界で好評を博した。2019年の第2作『The Angry Birds Movie 2』はその半分程度の1.47億ドルだが、それとて決して悪い数字ではない。

 急回復は本丸のモバイルゲーム事業で果敢に攻め続けた成果だとも言える。52作目のアプリの後、そこから10年強でロビオは類似ゲームアプリを31作品もリリースしている。その中でも正統な進化版として2015年に出された『Angry Birds 2』が大きく貢献し、先述の映画とあわせて2017年以降は安定的に年商3億ドル、利益3,000万ドルを稼ぐ優良企業になった。

【次ページ】わざわざ儲からない「モバイルゲーム市場」に挑戦した理由
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アングリーバードが作り上げた経済圏とは?何がどの程度売れたのか?(次のページで詳しく解説します)

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